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プロローグ
エピローグ:地球 前編
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とある一人の少年がいる。
隆々としているわけでも、怠けているわけでもなく、健康的で整った体型。背丈はおおよそ170。
髪はオールバック、あるいはアップのスタイルで、染めたわけではないが真っ白だ。
涙ボクロがありつつ、鋭くも落ち着いた目をしている。
いつも通り学校に向かう途中、前方に一人の女性がいた。知っている顔だ。
「アイツ……」
赤信号の横断歩道で、空虚な表情で立ち尽くしている。
すると、右側からトラックが走ってくる。
彼女は彼の方をチラッと見て、もう一度前を見る。
トラックは自らの方は青信号なので、止まる気配はない。
「クッソが……!!」
彼は察して走った。
察しは的中し、彼女は一歩進もうとした。
彼は駆け出し、彼女のもとへ向かった。
「やめろオイ!!」
「あっ……」
そして、彼はそのまま―――
「何してんだよ……」
彼女のことを後ろから抱き締め、引き留めた。
トラックは何事もなく、左方へ走り去っていった。
「ん……」
彼女は抱き締める彼の腕を優しく握りつつ、自身の頬をそっと添える。
「ねぇねぇ、一緒に学校行こ。」
「それよりも、今なにしようとしたか言いなさい。」
「うん?何も~?」
「………あぁ、そうか。」
彼は特に何かを言うわけでもなく、彼女の隣に立った。信号が青に変わると、互いの腕を絡ませ歩き始めた。
ポケットに入れているスマホは、絶えず揺れている。
☆
彼らが学校に着く……より少し前の段階。校門には数名の女性が待っていた。
彼が来たことに気づくと表情を大層明るくし、腕を組んでいる女性がいることに気づくと表情を滅法暗くした。
「おはよう。」
「おはようございます、先生。」
「先生じゃなくてるるね。それより不純異性交遊はやめよっか。」
先生と呼ばれたるるという彼女は、彼と腕を組む女生徒を半ば強引に引き剥がした。
その二人がそれを切欠に口論を始めた。
一方で、彼はそれを止めるため声をかけようとする――が、他の女性たちが先に動いた。
「先行こぉ。」
「二人を止めた方が」
「へーきへーき。」
「ん……」
その3人は彼を囲むように立ち、校舎へ向かうように促した。
現在も彼のスマホは、絶えず着信している。
☆
教室に着いた。数名の生徒がいる。
一人の男子生徒は、彼の方を見ると眉を上げた。しかし、3人の女性に囲まれているのを見ると、眉を落とした。
彼は手をそっと上げ、喋りはせずとも仕草と表情で「おはよう」と示した。男子生徒はそれを見ると、また一度眉を上げた。
「よいしょ。」
彼が自身の席に着くと、一人は隣の席に、もう一人は後ろの席に、そしてもう一人は彼の膝の上に座った。
彼は決して文句はいわず、膝に座った女子を優しくそっと抱き寄せた。
彼女は彼の左手を取り、自身の脚に挟んだ。さらに体重をかけて彼に寄りかかった。
そして当然、スマホは受信を続けていた。
☆
しばらく経ち、人が増え始めた。皆同じく彼に挨拶する。
ある者は笑顔でぱっと、ある者は自然にさらっと、ある者は周りにいる他者に苛立ちを感じつつもすっと、そしてまたある者はノータイムでハグを。
またしばらく経ち、HRが始まった。
「さて、朝方私との会話をそっちのけで教室来た生徒がいた。あとで職員室に来るように。」
「開口それかよ。」
絶えず揺れるスマホに意識を向けつつ、彼はついつい本音を声に出してしまった。
☆
数分ほどでHRが終わった。
彼は通知の止まないスマホを手に取り、画面をフリックし出した。
漸く、溜まり続けた受信を消化し始めた。
【帰り一緒!言質!】
【やっと既読着いた。】
【おーい。あれ?学校かな?】
【今晩は会えるの?】
【これ誰?】
【嘘つき。】
【週末どうかな?うんと弾むよ?】
【なぁ見ろこれw】
【2!いや3!どう?】
【今日の夕飯何がいい?】
【明日の放課後時間ありますか?】
【おはよー】
友人、知人、家族に……その他諸々沢山の身内からの連絡が来ている。
彼はそれらに一通り目を遠し、瞬時に優先順を決め返していく。
その表情は、微笑むことはありつつも、険しい顔や真顔が基本だ。
しかし、さらに新たに通知が来た。
うち1つはこのようなものだった。
【悪ぃ、今日の夜会えたりする?無理ならいいんだけど、大学の連中がめんどーでよ】
それを見た彼は、先ほどまでとは違い少し微笑んだ。
「没収でいいかな?」
「良くない。仕事しなさい先生。」
多くの人に好かれる彼。
大変華やか状況――
―――――否。
隆々としているわけでも、怠けているわけでもなく、健康的で整った体型。背丈はおおよそ170。
髪はオールバック、あるいはアップのスタイルで、染めたわけではないが真っ白だ。
涙ボクロがありつつ、鋭くも落ち着いた目をしている。
いつも通り学校に向かう途中、前方に一人の女性がいた。知っている顔だ。
「アイツ……」
赤信号の横断歩道で、空虚な表情で立ち尽くしている。
すると、右側からトラックが走ってくる。
彼女は彼の方をチラッと見て、もう一度前を見る。
トラックは自らの方は青信号なので、止まる気配はない。
「クッソが……!!」
彼は察して走った。
察しは的中し、彼女は一歩進もうとした。
彼は駆け出し、彼女のもとへ向かった。
「やめろオイ!!」
「あっ……」
そして、彼はそのまま―――
「何してんだよ……」
彼女のことを後ろから抱き締め、引き留めた。
トラックは何事もなく、左方へ走り去っていった。
「ん……」
彼女は抱き締める彼の腕を優しく握りつつ、自身の頬をそっと添える。
「ねぇねぇ、一緒に学校行こ。」
「それよりも、今なにしようとしたか言いなさい。」
「うん?何も~?」
「………あぁ、そうか。」
彼は特に何かを言うわけでもなく、彼女の隣に立った。信号が青に変わると、互いの腕を絡ませ歩き始めた。
ポケットに入れているスマホは、絶えず揺れている。
☆
彼らが学校に着く……より少し前の段階。校門には数名の女性が待っていた。
彼が来たことに気づくと表情を大層明るくし、腕を組んでいる女性がいることに気づくと表情を滅法暗くした。
「おはよう。」
「おはようございます、先生。」
「先生じゃなくてるるね。それより不純異性交遊はやめよっか。」
先生と呼ばれたるるという彼女は、彼と腕を組む女生徒を半ば強引に引き剥がした。
その二人がそれを切欠に口論を始めた。
一方で、彼はそれを止めるため声をかけようとする――が、他の女性たちが先に動いた。
「先行こぉ。」
「二人を止めた方が」
「へーきへーき。」
「ん……」
その3人は彼を囲むように立ち、校舎へ向かうように促した。
現在も彼のスマホは、絶えず着信している。
☆
教室に着いた。数名の生徒がいる。
一人の男子生徒は、彼の方を見ると眉を上げた。しかし、3人の女性に囲まれているのを見ると、眉を落とした。
彼は手をそっと上げ、喋りはせずとも仕草と表情で「おはよう」と示した。男子生徒はそれを見ると、また一度眉を上げた。
「よいしょ。」
彼が自身の席に着くと、一人は隣の席に、もう一人は後ろの席に、そしてもう一人は彼の膝の上に座った。
彼は決して文句はいわず、膝に座った女子を優しくそっと抱き寄せた。
彼女は彼の左手を取り、自身の脚に挟んだ。さらに体重をかけて彼に寄りかかった。
そして当然、スマホは受信を続けていた。
☆
しばらく経ち、人が増え始めた。皆同じく彼に挨拶する。
ある者は笑顔でぱっと、ある者は自然にさらっと、ある者は周りにいる他者に苛立ちを感じつつもすっと、そしてまたある者はノータイムでハグを。
またしばらく経ち、HRが始まった。
「さて、朝方私との会話をそっちのけで教室来た生徒がいた。あとで職員室に来るように。」
「開口それかよ。」
絶えず揺れるスマホに意識を向けつつ、彼はついつい本音を声に出してしまった。
☆
数分ほどでHRが終わった。
彼は通知の止まないスマホを手に取り、画面をフリックし出した。
漸く、溜まり続けた受信を消化し始めた。
【帰り一緒!言質!】
【やっと既読着いた。】
【おーい。あれ?学校かな?】
【今晩は会えるの?】
【これ誰?】
【嘘つき。】
【週末どうかな?うんと弾むよ?】
【なぁ見ろこれw】
【2!いや3!どう?】
【今日の夕飯何がいい?】
【明日の放課後時間ありますか?】
【おはよー】
友人、知人、家族に……その他諸々沢山の身内からの連絡が来ている。
彼はそれらに一通り目を遠し、瞬時に優先順を決め返していく。
その表情は、微笑むことはありつつも、険しい顔や真顔が基本だ。
しかし、さらに新たに通知が来た。
うち1つはこのようなものだった。
【悪ぃ、今日の夜会えたりする?無理ならいいんだけど、大学の連中がめんどーでよ】
それを見た彼は、先ほどまでとは違い少し微笑んだ。
「没収でいいかな?」
「良くない。仕事しなさい先生。」
多くの人に好かれる彼。
大変華やか状況――
―――――否。
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