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第一章 特別推薦入試編
第二十五話
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シャーロットの提案で、俺達は一度扉から離れる事になった。
シャーロットはまだ拠点を立てていないそうなので、一旦は俺の拠点へと向かっている。
しかし、シャーロットの異能の性質は戦闘系のものでは無いらしい為、時間短縮のために俺が抱えて走る事になった。
異能について聞かれたらどうはぐらかそうと身構えていたが、そんな俺の心を見透かすかのように『聞かれたくなさそうなことを聞く気はないわ』と言われてしまった。
シャーロット曰く、彼女の異能には人の心を若干読む能力もあるらしい。
俺としてはいち早くダンジョンに挑みたかったため、一度扉から離れる理由を聞くと、シャーロットから衝撃の情報がもたらされた。
「どうやらあのダンジョン、四人揃わないと挑戦できないらしいのよ」
「……マジ?」
「マジよ」
「おい、人工知能さーん。もしもーし。」
人工知能に説明を求めようと思ったのだが、役目を終えたとみなしたのか、応答は無い。
「あのAIならエイタの悪口を散々言った後に、案内を終了しますとか何とか言ってうんともすんとも言わなくなったわよ」
代わりにシャーロットが答えてくれた。
「そうか……って、ん?お前今俺の事名前で呼んだ?」
「な、何よ、何か文句でもあるわけ?」
「いや、別に文句は無い、びっくりしただけだ」
「そ、そう……エイタにも私の事をシャロと呼ぶことを許すわ!」
「分かったよ、シャロ」
俺が指定されたあだ名で呼ぶと、シャロはゆでだこのように赤くなった。
「お前自分で言ったくせに何恥ずかしがってんだよ」
「あだ名で呼ばれるのが恥ずかしいかどうかなんて実際に呼ばれてみるまで分からないでしょ!」
シャロが叫ぶ。
この子は自分が一体どれだけ可愛い事を言っているのかわかっているんだろうか。
たぶん自覚は無いんだろうなあ。
まあでも、話を進めるために取り敢えず謝っておく。
「すまんすまん、話が逸れたが、四人揃わないとこのダンジョンには挑戦できないというのは確かなのか?」
「ええ、扉を開けて中に入ったら良く分からない白い空間に飛ばされて、頭の中に学園長の声が聞こえてきたの。『四人以じゃないとこのダンジョンには挑戦できませーん!頑張って仲間を集めよう♪』ってさ。そう言う大事な事は普通事前に知らせてくれるものじゃないのかしら」
「それも含めて試験って事なのか、あるいは……」
この試験、運営も監修も、そのほか諸々すべて含めて学園長が一人で行っている節がある。
だとすれば、単純に忘れてたって可能性も無きにしも非ず……。
いや、流石にないか。
「まあいずれにせよ、私とエイタの他にあと二人、一緒にダンジョンに挑戦してくれる受験生を探さないといけない訳だけど……エイタ、あてはある?」
「ある、俺の拠点に今共闘しているキースって奴がいる。これで三人だ」
「ああ、プライド家の、って事はあと一人……って、そう言えばあなたの弟子も参加しているのよね?」
「あ」
やっべ。
シャロの方を見ると、俺に向けてじとーっとした目、所謂ジト目を向けていた。
「……エイタ、あなたまさか「いや!忘れてたとか!そんな事はない、ぞ?」私に嘘ついても意味ないわよ。土台バレバレだけど。はあ、あんなに慕ってくれている子を忘れるなんて、エイタって意外と薄情なのね」
「……一つ弁解させてもらうと、俺とアイツが初めて会ったのは一昨日だから俺が有栖の事を忘れていたとしても別に不思議な事ではない。忘れてないけどな」
「一昨日……それであの懐きようって……」
「有栖が何で俺をあんなに慕ってくれるのかは俺にもいまいち分からん」
そんな話をしている内に俺とキースの拠点に到着した。
ここではキースが寝ている筈だが……。
「あ!師匠!見てください!怪しげな奴を捕らえました!」
「おい!エイタ!この女は一体何なのだ!何が一体どうなっている!」
拠点に戻ると、そこには何か半透明なもので俵巻きにされたキースに向かって異能で作ったらしき剣を突き付ける弟子の姿。
それを視認した俺は、すっと現実から目を背けた。
シャーロットはまだ拠点を立てていないそうなので、一旦は俺の拠点へと向かっている。
しかし、シャーロットの異能の性質は戦闘系のものでは無いらしい為、時間短縮のために俺が抱えて走る事になった。
異能について聞かれたらどうはぐらかそうと身構えていたが、そんな俺の心を見透かすかのように『聞かれたくなさそうなことを聞く気はないわ』と言われてしまった。
シャーロット曰く、彼女の異能には人の心を若干読む能力もあるらしい。
俺としてはいち早くダンジョンに挑みたかったため、一度扉から離れる理由を聞くと、シャーロットから衝撃の情報がもたらされた。
「どうやらあのダンジョン、四人揃わないと挑戦できないらしいのよ」
「……マジ?」
「マジよ」
「おい、人工知能さーん。もしもーし。」
人工知能に説明を求めようと思ったのだが、役目を終えたとみなしたのか、応答は無い。
「あのAIならエイタの悪口を散々言った後に、案内を終了しますとか何とか言ってうんともすんとも言わなくなったわよ」
代わりにシャーロットが答えてくれた。
「そうか……って、ん?お前今俺の事名前で呼んだ?」
「な、何よ、何か文句でもあるわけ?」
「いや、別に文句は無い、びっくりしただけだ」
「そ、そう……エイタにも私の事をシャロと呼ぶことを許すわ!」
「分かったよ、シャロ」
俺が指定されたあだ名で呼ぶと、シャロはゆでだこのように赤くなった。
「お前自分で言ったくせに何恥ずかしがってんだよ」
「あだ名で呼ばれるのが恥ずかしいかどうかなんて実際に呼ばれてみるまで分からないでしょ!」
シャロが叫ぶ。
この子は自分が一体どれだけ可愛い事を言っているのかわかっているんだろうか。
たぶん自覚は無いんだろうなあ。
まあでも、話を進めるために取り敢えず謝っておく。
「すまんすまん、話が逸れたが、四人揃わないとこのダンジョンには挑戦できないというのは確かなのか?」
「ええ、扉を開けて中に入ったら良く分からない白い空間に飛ばされて、頭の中に学園長の声が聞こえてきたの。『四人以じゃないとこのダンジョンには挑戦できませーん!頑張って仲間を集めよう♪』ってさ。そう言う大事な事は普通事前に知らせてくれるものじゃないのかしら」
「それも含めて試験って事なのか、あるいは……」
この試験、運営も監修も、そのほか諸々すべて含めて学園長が一人で行っている節がある。
だとすれば、単純に忘れてたって可能性も無きにしも非ず……。
いや、流石にないか。
「まあいずれにせよ、私とエイタの他にあと二人、一緒にダンジョンに挑戦してくれる受験生を探さないといけない訳だけど……エイタ、あてはある?」
「ある、俺の拠点に今共闘しているキースって奴がいる。これで三人だ」
「ああ、プライド家の、って事はあと一人……って、そう言えばあなたの弟子も参加しているのよね?」
「あ」
やっべ。
シャロの方を見ると、俺に向けてじとーっとした目、所謂ジト目を向けていた。
「……エイタ、あなたまさか「いや!忘れてたとか!そんな事はない、ぞ?」私に嘘ついても意味ないわよ。土台バレバレだけど。はあ、あんなに慕ってくれている子を忘れるなんて、エイタって意外と薄情なのね」
「……一つ弁解させてもらうと、俺とアイツが初めて会ったのは一昨日だから俺が有栖の事を忘れていたとしても別に不思議な事ではない。忘れてないけどな」
「一昨日……それであの懐きようって……」
「有栖が何で俺をあんなに慕ってくれるのかは俺にもいまいち分からん」
そんな話をしている内に俺とキースの拠点に到着した。
ここではキースが寝ている筈だが……。
「あ!師匠!見てください!怪しげな奴を捕らえました!」
「おい!エイタ!この女は一体何なのだ!何が一体どうなっている!」
拠点に戻ると、そこには何か半透明なもので俵巻きにされたキースに向かって異能で作ったらしき剣を突き付ける弟子の姿。
それを視認した俺は、すっと現実から目を背けた。
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