デス・アイランド

汐川ヒロマサ

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 音の方を六人は見上げた。
 すると、
 「こんばんは。まだゲームは始めないのですか?」
 ビニールの上から話しているようなびりびりとした声が響いてきた。
 天井をよく見ると、スピーカーのようなものとカメラが角にあるのを蓮が発見し、叫んだ。
 「だれだ!」
 「私はアインス。殺された高山京吾の復讐をするために、あなたたちを呼び出しました」
 「は?京吾は自殺でしょ?私は何もしていない」
 アインスの言うことに歯向かうようにして由紀が言う。それに卓也も続く。
 「そーだよ。あいつはドーピングがばれてみんなから白い目で見られて自殺したんだろ。自業自得じゃねえか」
 するとXは驚くべきことを口にする。
 「この島は私の所有地です。君たちをここまで送り届けた船長は私。睡眠薬も私。君たちが寝ている間にスマホは海に捨てておきました」
 その事実に六人は声が出なかった。
 「じゃあ、誰も助けに来ないって言うのかよ?」  
 明が恐る恐る聞いてみた。
 「そうですね。あなたたちが親に行き先を教えてなければね」
 そう言い終わるとXは高らかに笑った。 
 「朝早かったから何も言わずに出てきた……」
 卓也がそういうと全員がうなずいた。
 「どうしたらここから出してくれる」
 蓮が天井を睨みつけた。
 「紙に書いてあったじゃないですか。殺し合えと。残った一人だけが脱出できます」
 続けてXは条件を出してきた。
 「条件があります。それは殺されることです。ちなみ天井には監視カメラがあります。残った一人はこのカメラの下で、死んだ五人の首を切ってください。殺したという証拠として」
 史帆の心臓は今にもはじけんばかりの速さで叩かれる。
 さっき考えていたことが現実になる。私が最初に殺される。史帆は気を失いそうだった。
 卓也が叫んだ。
 「ふざけんなよ!出来るわけねえだろ!」
 アインスは卓也の叫びに応えるように言った。
 「なら、餓死して共倒れするしかないですね。まあ、カップラーメンは私が慈悲をかけて置いておきましたが、十二個しかないので六人で食べたら二日でなくなりますね。節約したとしてもどうせ死にます」
 京子は冷静な口調で言った。
 「どうせカップ麺にも毒か何か入ってるんでしょ」
 「さあ、私は入っていないと答えますが、信じるかどうかはあなたたち次第です」
「睡眠薬が入っていたのは君たちが飲んだ六本だけです。下の方にある水は何も入っていないただの水です」
 アインスは続けて補足をしてきた。
 「信じられるわけないでしょ!」
 由紀は怒りをあらわにして、天井に向かって叫んだ。
明はふと、カップ麺の入った段ボールに目をやった。
 体格のいい明は、他の五人よりも食べる量が多いし、お腹が空くのも早い。
 明は立ち上がった。それに続いて蓮も立ち上がりカップ麺の段ボールの方へと歩いていき、段ボールを開けた。
 卓也が二人に向かって問いかけた。
 「もし、そのカップ麺が食べれるとして、どうやって食べるんだ?お湯がないと食べれないだろ」
 蓮がキッチンを見渡すと、鍋があった。
 「確か、外に薪があったよな?それに火をつけてこの鍋でお湯を沸かそう」 
 そして一同は立ち上がり、外に出た。
 玄関を開けると、見渡す限りに漆黒が広がっていた。
 史帆は、この闇の中を二時間かけて下るのは厳しいだろうと蓮が言っていたことを思い出し、改めてそう思った。
 階段を降りて山小屋の右側に行くと、薪が詰まれていた。
 「火は?」
 京子が鍋を持った蓮に問う。
 「ライターがある。俺が持ってきた」
 蓮は高校生なのに煙草を吸っている。このことを知っているのは史帆以外の五人だけ。
 なのでこの時史帆は、運がよかったとしか思っていなかった。
 卓也と明と史帆は玄関を出るとすぐに広場の方へ行き、枝を拾った。その間に蓮と由紀、京子は大きめの石で風よけを作っていた。風よけは鍋が置けるくらいの幅になるようにして組み上げられていた。薪をその内側に数本置き、枝と落ち葉をまとめて置いた。蓮がライターで火を着けると、落ち葉、枝の順に燃え上がりしばらくして薪にも火が移った。ぱちぱちと音を立てて、炎はゆっくりと大きくなっていった。
 卓也が炎を見つめながら言った。
 「山の上って夜になると寒いのな」
 史帆は空を見上げた。こんな状況でも、星は輝いて見える。綺麗と思える心のゆとりが怖い。
 鍋にペットボトルの水を入れ、無造作に積まれた石の上にバランスよく乗せた。
 「本当に食べるの?」
 由紀が心配そうな顔で言う。
 蓮が「大丈夫だ」と言うと明も大きく首を縦に振った。
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