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嫉妬した結果、とんでもないものを受け取ってしまった

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俺は今日、嫉妬した結果、とんでもないものを受け取ってしまった。

いや、嫌なものじゃない。むしろ嬉しいものだ。

婚約者からの、口付け。あるいはキスと言われるもの。

…頬に、だけど。

頬に当たった唇は、とても柔らかくて。そしてそのために近寄ったエリアーヌの香りは、シャンプーのすごく清潔な匂いで。

「…ああ、だめだ」

俺はベッドから起き上がる。時刻は現在三時過ぎ。明日もラファエル先生との授業があるから、早く寝ないといけないのに。

「わすれ、られない…」

何時間も経った今でも、鮮明に思い出せる。

「口付けって…愛情表現、で、合ってるよな」

そう。ラファエル先生が国語の勉強だと言って好きな時に読めと貸してくれた恋愛小説。そのいくつかに、口付けについての描写があった。

ラファエル先生に聞いたところ、好きな人にすること。そのくらいの認識で合ってるらしい。

が、唇同士の口付けはちょっと子供にはまだ早いのでやるなら頬とか額にしておけと念押しされていた。

あと、どこでもやることじゃない。人目は気にする方がいい。

そして軽々しくするものでもない。本当に、好きが溢れた時にするんだとラファエル先生は言っていた。

「好きが、溢れた時に…」

つまり、エリアーヌは。俺が、嫉妬したことに対して好きが溢れた…ということ。

「嫉妬は、基本的にはあんまり良いことじゃない。けど、場合によってはヤキモチはスパイスになる。…本当なんだな」

人の才能や境遇に嫉妬するのはみっともない。

しかし、ラファエル先生曰く恋愛についてはちょっと違うらしい。

ほんの少しの、可愛いヤキモチであればそれは愛や恋のスパイスとなる。

あまり過度にヤキモチを妬くのなら、それは面倒くさいらしいけど。

…教えてもらっても、よくわからなかった。でも、今日少しだけわかった気がする。エリアーヌから口付けしてもらえる、最高のスパイスになった。

「…でも、過度なヤキモチは面倒くさいらしい。エリアーヌに面倒くさいと思われないように、なるべく隠すようにしよう」

今日は、ヤキモチなんて初めての感情なのでうまく隠せなかったけど。次からは、上手くやる。

とはいえ。

「ヤキモチって、こんな感じなんだな」

ザラザラとした、不快な感情。できれば、もう味わいたくはないけれど。

「エリアーヌは、将来女公爵になる。人と接する機会も多いし、多分いつかまたヤキモチ妬きになりそうだ…」

明日授業のついでに、ラファエル先生にヤキモチの制御の仕方を教えてもらおう。

そのためにも、まずは今ちゃんと寝なきゃ。

俺は今度こそベッドに入って寝ようとしたが、結局はエリアーヌからの頬への口付けを忘れられず眠れなかった。

眠そうな顔をしていたのか、ラファエル先生に事情を聞かれたので素直に話したらいいからとっとと寝ろとベッドに戻された。今日の授業時間は半分も減ってしまって申し訳無かったが、物覚えの良い生徒を持ったからこの程度なら平気だと言われてしまった。

…ラファエル先生からの期待に添えるように、もっと頑張ろう。そして睡眠はしっかりと取ろう。
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