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攻略対象その四の婚約

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ある日突然、エミールが私を訪ねてきた。珍しいなと思ったが、迎え入れる。

「お嬢様!すみません、助けてください!」

「ど、どうしましたの?エミール。さあ、とりあえずこちらに来てくださいな。お部屋でお茶を飲みながら話をしましょう?」

私の部屋に案内して、侍女に紅茶を淹れさせる。さりげなくアナトールも私の横に座らせておく。

エミールは一口紅茶を飲んで落ち着いたようで、逆に慌て出す。

「あ、す、すみませんお嬢様、こんないきなり来ちゃって…」

「いいんですのよ。ね、アナトール」

「エリアーヌが良いならいい。…ただ、この方はどなただ?エリアーヌのお友達?」

エミールはやっと隣にいるアナトールに気づいた。よほど慌てていたらしい。

「あ、あ、すみません!お嬢様の運命の番さんですよね!?おれ、商人の息子でお嬢様と仲良くして頂いてるエミールです!」

「…もしかして、俺の服とか用意してくれた方の息子さんか?」

「は、はい!」

「あの時はお世話になった。ありがとう」

エミールとアナトールは、相性は悪くなさそう。

「俺はアナトール。よろしく」

「よろしくお願いします!あ、あと、お二人ともご婚約おめでとうございます!」

エミールの祝福に、笑顔になる。

「ありがとう」

「ありがとう、エミール。それで貴方、今日はどうしましたの?」

「あっ…」

意気消沈するエミール。どうした。

「貴方そんな落ち込んで…本当にどうしましたの?」

「いや、あの…うちの両親って、お嬢様にお世話になってますから、段々と評判も上がってて…」

「ええ」

「商人でもそれなりに裕福な方、らしくて。そしたら、男爵家の…貴族のお嬢様との婚約の話が持ち上がって。というか決まっちゃいました…婚約届け、出しちゃって」

「まあ」

そんなに珍しい話でも、悪い話でもないと思うが。

「結納金たんまり支払って、その分そのお嬢様に嫁に来てもらうってお話で。その方のお家は借金まみれらしくて、でも結納金を婚約段階で納めたから借金はなくなったんですけど。これからは借金もないから貯金とかもしてくれるだろうし、うちに不利益とかは多分ないんですけど…」

「…何が問題なんですの?」

「気持ちの問題、というか」

「ふむ」

気持ちの問題とは。

「男爵家の、貴族のお嬢様と結婚なんて…俺には荷が重いというか…」

「ああ…」

なるほど。貴族のお嬢様、として見ちゃうと荷が重くなるか。

「…うーん。貴族のお嬢様、とか先入観は捨てて、とりあえずちゃんと向き合ってみなさいな」

「え?」

「話してみたら、とっても素敵な人かもしれないですわよ?先入観が邪魔をして、相手の良いところも知らないまま拒絶反応を示すなんて…お相手の方がちょっと可哀想ですわ」

「うっ」

「一度、ちゃんとお話してみなさいな。こんな風に、お茶でも一緒に飲んで相手のことを知る努力をなさい。その上で、やばい相手なら私に泣きついてくればいいですわ。出来る限り助けますわ」

私がそう言えば、エミールは頷いた。

「…が、頑張ってみます」

「エミールなら大丈夫。頑張れ」

アナトールもエミールを励ます。

そして、元気を取り戻したエミールを見送った。













後日、エミールからお礼の品…お菓子の詰め合わせが届いた。なんでも、お相手の子と話してみたらお互い色々と誤解していたらしい。会って話して、お互いに誤解も解けて。すごく良い方で、仲良くなれそうだとのこと。

上手くいったようでなにより。私とアナトールの祝福の言葉に、照れ臭そうにするエミールを見て私としては一安心。
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