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攻略対象その三の婚約

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なんだかんだで順当にお友達にアナトールを紹介出来ている。紹介した二人はアナトールを受け入れてくれているみたいで内心ほっとする。

アナトールも、特にお友達に対して拒絶反応もないし仲良くできるだろう。

アナトールには、貴族社会において味方が必要。私のお友達がそうなってくれたら、とてもありがたい。

婚約ラッシュが続く中、次はシャルルから声がかかった。多分、婚約の報告だろう。

「ということで、アナトール。明日、私のお友達の魔法師団長の息子さんが来ますわ。多分、婚約者が決まった報告だと思うのですけれど…」

「最近多いね」

「婚約ラッシュですわねぇ…少しでも早いうちから、婚約者を決めておくのは貴族ならあるあるですわ」

「そっか。エリアーヌには俺と会うまで婚約者がいなくて、本当に良かった」

「ふふ、私も良かったですわ!愛していますわ!」

可愛いことを言うアナトールを抱きしめる。アナトールは満更でもない表情だった。













馬車から降りてきたシャルルは、相変わらずの様子。元気そうでなにより。

「やあ、エリアーヌ。運命の番、見つかったんだってね。おめでとう」

「ありがとうございます、シャルル様」

「君がエリアーヌの運命の番?」

「はい。お初にお目にかかります、アナトールと申します」

「ふーん」

シャルルはアナトールを見つめる。

「君、エリアーヌを幸せにできるの?」

シャルルは、アナトールをよく思わないのだろうか。不安がよぎる。が、アナトールはシャルルの雰囲気にも怯まず言った。

「絶対幸せにします。そうじゃなくちゃ意味がない。色々なことを学んで、力をつけて、そしてエリアーヌを守れる男になります」

アナトールの力強い言葉に、シャルルは満足そうに笑った。

「そ、なら良いけど。エリアーヌは私の大事なお友達なんだ。守ってやってよ?」

「はい、もちろんです」

「そうそう。エリアーヌとの婚約おめでとう。君みたいな気概ある男が相手なら、祝福してあげるよ」

相変わらず偉そう。でも、私のことを心配してくれていたみたい。祝福されて、素直に嬉しい。

アナトールも、シャルルの偉そうな祝福を聞いて微笑んだ。

「ありがとうございます。絶対、幸せにします」

「そ。…あー、そうそう。私にも婚約者ができたよ」

「あら、おめでとうございます!」

「おめでとうございます」

「相手が中々気の強い跳ねっ返りでね。けどまあ、悪い子じゃないからその内会わせてあげるよ」

そう言うシャルルは、口が悪い割に相手の子を気に入っている雰囲気。

なんだか微笑ましくて、その後のお茶会の席でもその子のお話を中心に聞いた。

聞く限り、シャルルは相手の子をはやくも好きになったらしい。ニマニマとしてしまったが、その子の話に夢中なシャルルには気づかれなかった。
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