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女公爵になるための教育が始まる
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アナトールとの婚約を届け出て、私達が正式に婚約者となって数日。また、お父様とお母様に呼び出された私達。要件は、既に分かっていた。
「では、エリアーヌ。事前に通告していた通り、お前のために今日から家庭教師を変えることにする。今までは貴族の娘として恥ずかしくない程度の勉強に留めていたが、これからはかなり厳しいものとなる。覚悟はいいね?」
「はい、お父様」
前の家庭教師の先生にも、大変にお世話になった。事前に話は聞いていたので、お別れの挨拶も済ませてある。先生はこれから女公爵となる未来を選んだ私を励まして、応援してくれた。もちろん、アナトールとの婚約も祝福してくれて…本当に良い先生だった。
だからこそ、その先生に習ったことをこれからどんどん活かしていって、新しい先生の教えもしっかり吸収していこうと思う。
「アナトールにも、新たに家庭教師を雇った。簡単なことから教えてもらうことにはなるが、それでも君には難しいだろう。…それでもいいんだね?」
「はい!」
「なら良い。二人とも、頑張りなさい」
「はい、お父様」
「頑張ります」
お父様は私達の様子を見て、優しく頷いてくれた。
「そうそう、アナトールくん。いつ言おうか迷っていたのだけど、せっかくだから言っておくわ。これからは貴方をアナトールと呼んでいいかしら?」
「はい」
「私と夫のことはこれから、義父上、義母上と呼ぶのよ」
「義父上、義母上…」
「そう、上手」
お父様もお母様も、アナトールにそう呼ばれてどこか嬉しそうな様子だ。
「では、そろそろそれぞれの家庭教師が着く頃だ。お互い、部屋へ戻りなさい。先生方に、失礼のないように」
「はい、お父様。では失礼します」
「失礼します。義父上、義母上」
私達はそれぞれの部屋に戻って、家庭教師の先生を待つ。
しばらくして、部屋のドアがノックされる。返事をすれば、新しい先生が入ってきた。
「お初にお目にかかります。エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌと申します。これからよろしくお願いします」
しっかりと挨拶をすれば、穏やかな笑みを浮かべて先生は言った。
「ジェローム・ラザール・マケールと申します。これから家庭教師を務めさせていただきますので、どうかよろしくお願い致しますね」
そして、先生に促されて席に着く。
「では、まずは学力がどれほど身に付いているか確認から始めましょう。ちょっとしたテストだと思って、緊張はなさらず解いてみてください。後半に行くに従って解けない問題があって当たり前のテストとなります。どうぞ軽い気持ちで受けてくださいね」
そう言われて問題を見る。最初は簡単な問題から、後半に行くに従って高校生レベルの問題まで出題されていた。
私には前世の記憶がある。なので、当然忘れてしまっている部分もあるがそれ相応の教養はあるつもり。
とはいえこの年齢で解いてしまっていいものか、とは思う。
思うけど。
…女公爵になるために、本気で頑張ると誓ったのだから本気を出すべきなのだろう。
「ジェローム先生、もし難しい問題を解けたとして…気味が悪いと思いますか?」
「…え?いえ、勤勉だなと思いますよ」
「じゃあ、張り切ってしまっていいですか?」
私がそう問えば、優しい笑み。
「もちろんですとも」
私は、テストに向き合う。…嫌な顔をされないといいな。
「いや、実に素晴らしい」
結局のところ、私は全ての分野のテストにおいて高得点を叩き出した。全問正解は、どの分野においても…残念ながら、まだ無理だったけど。
前世の知識のおかげでそれなりの教養はあるし、貴族における必要な知識…礼儀作法、マナー、各貴族の家紋などは以前の先生から習っていた。
むしろこのチート状態で全問正解出来ないあたり、私はまだまだ足りていない。領地経営などについては、出題されてもサッパリだし…ジェローム先生にたくさんのことを教えて頂かないと。
「前の家庭教師、そしてエリアーヌ様自身の素質もあるのでしょう。大変素晴らしい。その年齢ならば神童と呼ばれるほどの教養がありますね」
「ありがとうございます。でも、足りないんです」
「…ほう?」
「私は、女公爵になります。家族や領民達、その全てを守るんです。だから、まだまだ知識が足りません。どうか、足りない分を全て教えてください。ジェローム先生が頼りなんです」
ジェローム先生は私の言葉にやや驚いて、そして笑った。
「ふふ…ああいえ、笑ってしまって申し訳ない。大丈夫です、エリアーヌ様。貴女はまだまだ若い。いや、幼いとすら言える。これから十分な時間もあります。私がお教えできることは、全てお伝えいたしますよ。貴女はきっと、良い統治者となられるでしょう」
そのジェローム先生の言葉に、安心して息をつく。
「ありがとうございます、ジェローム先生」
「張り切ることは良いことです。焦る気持ちも、理解できます。しかし、一歩一歩着実に身に付けてこそ教養は力を発揮するのです。まずは、ここから。一緒に頑張っていきましょう」
「はい!先生!」
色々な分野の色々な問題のテストを受けたので、初日はテストで終了。けれどジェローム先生には認めてもらえたようだし、これから女公爵となる未来に向けて一歩一歩着実に頑張ろうと思う。
「では、エリアーヌ。事前に通告していた通り、お前のために今日から家庭教師を変えることにする。今までは貴族の娘として恥ずかしくない程度の勉強に留めていたが、これからはかなり厳しいものとなる。覚悟はいいね?」
「はい、お父様」
前の家庭教師の先生にも、大変にお世話になった。事前に話は聞いていたので、お別れの挨拶も済ませてある。先生はこれから女公爵となる未来を選んだ私を励まして、応援してくれた。もちろん、アナトールとの婚約も祝福してくれて…本当に良い先生だった。
だからこそ、その先生に習ったことをこれからどんどん活かしていって、新しい先生の教えもしっかり吸収していこうと思う。
「アナトールにも、新たに家庭教師を雇った。簡単なことから教えてもらうことにはなるが、それでも君には難しいだろう。…それでもいいんだね?」
「はい!」
「なら良い。二人とも、頑張りなさい」
「はい、お父様」
「頑張ります」
お父様は私達の様子を見て、優しく頷いてくれた。
「そうそう、アナトールくん。いつ言おうか迷っていたのだけど、せっかくだから言っておくわ。これからは貴方をアナトールと呼んでいいかしら?」
「はい」
「私と夫のことはこれから、義父上、義母上と呼ぶのよ」
「義父上、義母上…」
「そう、上手」
お父様もお母様も、アナトールにそう呼ばれてどこか嬉しそうな様子だ。
「では、そろそろそれぞれの家庭教師が着く頃だ。お互い、部屋へ戻りなさい。先生方に、失礼のないように」
「はい、お父様。では失礼します」
「失礼します。義父上、義母上」
私達はそれぞれの部屋に戻って、家庭教師の先生を待つ。
しばらくして、部屋のドアがノックされる。返事をすれば、新しい先生が入ってきた。
「お初にお目にかかります。エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌと申します。これからよろしくお願いします」
しっかりと挨拶をすれば、穏やかな笑みを浮かべて先生は言った。
「ジェローム・ラザール・マケールと申します。これから家庭教師を務めさせていただきますので、どうかよろしくお願い致しますね」
そして、先生に促されて席に着く。
「では、まずは学力がどれほど身に付いているか確認から始めましょう。ちょっとしたテストだと思って、緊張はなさらず解いてみてください。後半に行くに従って解けない問題があって当たり前のテストとなります。どうぞ軽い気持ちで受けてくださいね」
そう言われて問題を見る。最初は簡単な問題から、後半に行くに従って高校生レベルの問題まで出題されていた。
私には前世の記憶がある。なので、当然忘れてしまっている部分もあるがそれ相応の教養はあるつもり。
とはいえこの年齢で解いてしまっていいものか、とは思う。
思うけど。
…女公爵になるために、本気で頑張ると誓ったのだから本気を出すべきなのだろう。
「ジェローム先生、もし難しい問題を解けたとして…気味が悪いと思いますか?」
「…え?いえ、勤勉だなと思いますよ」
「じゃあ、張り切ってしまっていいですか?」
私がそう問えば、優しい笑み。
「もちろんですとも」
私は、テストに向き合う。…嫌な顔をされないといいな。
「いや、実に素晴らしい」
結局のところ、私は全ての分野のテストにおいて高得点を叩き出した。全問正解は、どの分野においても…残念ながら、まだ無理だったけど。
前世の知識のおかげでそれなりの教養はあるし、貴族における必要な知識…礼儀作法、マナー、各貴族の家紋などは以前の先生から習っていた。
むしろこのチート状態で全問正解出来ないあたり、私はまだまだ足りていない。領地経営などについては、出題されてもサッパリだし…ジェローム先生にたくさんのことを教えて頂かないと。
「前の家庭教師、そしてエリアーヌ様自身の素質もあるのでしょう。大変素晴らしい。その年齢ならば神童と呼ばれるほどの教養がありますね」
「ありがとうございます。でも、足りないんです」
「…ほう?」
「私は、女公爵になります。家族や領民達、その全てを守るんです。だから、まだまだ知識が足りません。どうか、足りない分を全て教えてください。ジェローム先生が頼りなんです」
ジェローム先生は私の言葉にやや驚いて、そして笑った。
「ふふ…ああいえ、笑ってしまって申し訳ない。大丈夫です、エリアーヌ様。貴女はまだまだ若い。いや、幼いとすら言える。これから十分な時間もあります。私がお教えできることは、全てお伝えいたしますよ。貴女はきっと、良い統治者となられるでしょう」
そのジェローム先生の言葉に、安心して息をつく。
「ありがとうございます、ジェローム先生」
「張り切ることは良いことです。焦る気持ちも、理解できます。しかし、一歩一歩着実に身に付けてこそ教養は力を発揮するのです。まずは、ここから。一緒に頑張っていきましょう」
「はい!先生!」
色々な分野の色々な問題のテストを受けたので、初日はテストで終了。けれどジェローム先生には認めてもらえたようだし、これから女公爵となる未来に向けて一歩一歩着実に頑張ろうと思う。
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