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ヒロインも懐柔
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さて、いよいよこの日がやってきた。
ヒロイン懐柔計画、始動だ。
というのも、ヒロイン…エミリーが聖女に覚醒するのは両親が強盗に襲われそうになった時。そこに介入する必要があるわけで。
私はヒントの少ない中で、ファンブックに書いてあった『紅葉の美しい季節の出来事だった』という一文から大まかな季節を割り出し、さらにファンブックにあった『ジーク村』という一文からヒロインの出身地を割り出した。
そしてその辺りで活動する悪辣な集団を我が家の『隠密』達に命じて割り出し、次に動く計画の日を調べ上げたのだ!歴史も古く裕福な公爵家の生まれでよかったと両親に感謝する。貴族とはいえ、隠密を囲っている家は多くはないから。ただ…隠密達になんでそんなことを調べるのか問われたけれど、わがままお嬢様の気まぐれですわと答えてしらを切った。なお、もちろん両親には秘密にするよう厳命した。
「事件が起きるのは、今日で間違いないはず」
しかも都合のいいことに、白昼堂々と犯行に及ぶ計画だと調べも出ている。
もちろん、このことを治安部隊に報告するのでもいいのだけどどうせならもっと大々的に恩を売りつけたい。
というわけで、私は気まぐれ日帰り旅行と称して侍女と護衛騎士数人を引き連れてジーク村に向かった。
「ふふ、犯行予定時刻より数分前に着けましたわね」
私は馬車から降りると時間を確認。そして、村の地図を確認。ファンブックに載っていたエミリーの家は確かこの辺だったという記憶を元に、侍女と護衛騎士を連れて徒歩で向かう。
「あ、そうですわ。カジミール様のくれたネックレスを一応つけておきましょう」
一度だけ、主人の不幸を肩代わりしてくれる魔法のかかった石。お守りとしてつけておく。
「そうですわ!護衛騎士は大丈夫ですけれど…侍女にはオードリック様のくれたブレスレットをつけさせないと。というわけで貴女、こちらに寄りなさい」
「お嬢様?どうしました?」
私は寄ってきた侍女に問答無用でブレスレットを装着する。侍女は遠慮しようとしたが、私とお揃いがそんなに嫌かと問えば渋々だがつけてくれた。
「さあ、そろそろですわね」
エミリーの家を見つけた。そこにはちょうど強盗犯が押し入る姿。
「護衛騎士達!助太刀に行きますわよ!」
「え、あ、お嬢様、危険です!」
止める侍女を振り切ってエミリーの家に押し入る。いきなりの邪魔者に呆気にとられる強盗犯達。
「私の前で、悪さは許しませんわ!」
かっこよく登場した私に、ぽかんとするエミリーとその両親。
強盗犯達もぽかんとしていたが、私に向かって激昂した。
「邪魔する気なら容赦しねぇ!」
刃物を私に向けた男が一人。けれどその瞬間、カジミールのくれたネックレスが壊れた代わりに刃物がぐにゃりと曲がった。
「お嬢様!」
遅れて入ってきた侍女が、私を守ろうと間に割って入ってくれた。その侍女のブレスレットは壊れたが、侍女に危害を加えようとした男の腕が有り得ない方向に曲がった。
「大人しくしろ!」
そこに護衛騎士達が入ってきて、あとはあっという間に制圧。縄で縛られた強盗犯達は治安部隊を呼ばれて引き渡された。
侍女や護衛騎士達が治安部隊とやり取りしている間に、私は両親に抱きつき怖かったと泣くエミリーに声をかける。
「貴女、大丈夫ですの?泣いていますけれど、怪我は?」
「あ…」
エミリーは私を見て、思いっきり頭を下げた。
「助かりました!ありがとうございます!お父さんとお母さんが死んじゃうと思って、私怖くて…本当にありがとうございます!怪我はないです!」
「どこの誰かも存じ上げませんが、ありがとうございます」
「なんとお礼を申し上げれば良いか…」
エミリーに続きエミリーの両親も頭を下げた。よし、恩はバッチリ売れた!
「いいんですのよ。怖かったですわね、よしよし」
エミリーの頭を優しく撫でてやれば、エミリーは私をキラキラした目で見つめる。
「助けに来てくれた時、とってもかっこよかったです!」
「これからもご両親を大切にするんですわよ」
「はい!」
「それと、時々遊びに来てもいいかしら?お友達になってくれませんこと?」
「…喜んで!」
ヒロインからの好感度抜群!!!
「では、改めまして。私はエリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌ。アルヴィア王国筆頭公爵家の娘ですわ」
「エリアーヌ様…あの、私はエミリーです!見ての通り平民なんですけど…」
「それでも、せっかくの出会いですわ!お友達になれて嬉しいですわ」
「ふふ、はい!」
ヒロインの懐柔成功!これで安全確保ですわ!
ヒロイン懐柔計画、始動だ。
というのも、ヒロイン…エミリーが聖女に覚醒するのは両親が強盗に襲われそうになった時。そこに介入する必要があるわけで。
私はヒントの少ない中で、ファンブックに書いてあった『紅葉の美しい季節の出来事だった』という一文から大まかな季節を割り出し、さらにファンブックにあった『ジーク村』という一文からヒロインの出身地を割り出した。
そしてその辺りで活動する悪辣な集団を我が家の『隠密』達に命じて割り出し、次に動く計画の日を調べ上げたのだ!歴史も古く裕福な公爵家の生まれでよかったと両親に感謝する。貴族とはいえ、隠密を囲っている家は多くはないから。ただ…隠密達になんでそんなことを調べるのか問われたけれど、わがままお嬢様の気まぐれですわと答えてしらを切った。なお、もちろん両親には秘密にするよう厳命した。
「事件が起きるのは、今日で間違いないはず」
しかも都合のいいことに、白昼堂々と犯行に及ぶ計画だと調べも出ている。
もちろん、このことを治安部隊に報告するのでもいいのだけどどうせならもっと大々的に恩を売りつけたい。
というわけで、私は気まぐれ日帰り旅行と称して侍女と護衛騎士数人を引き連れてジーク村に向かった。
「ふふ、犯行予定時刻より数分前に着けましたわね」
私は馬車から降りると時間を確認。そして、村の地図を確認。ファンブックに載っていたエミリーの家は確かこの辺だったという記憶を元に、侍女と護衛騎士を連れて徒歩で向かう。
「あ、そうですわ。カジミール様のくれたネックレスを一応つけておきましょう」
一度だけ、主人の不幸を肩代わりしてくれる魔法のかかった石。お守りとしてつけておく。
「そうですわ!護衛騎士は大丈夫ですけれど…侍女にはオードリック様のくれたブレスレットをつけさせないと。というわけで貴女、こちらに寄りなさい」
「お嬢様?どうしました?」
私は寄ってきた侍女に問答無用でブレスレットを装着する。侍女は遠慮しようとしたが、私とお揃いがそんなに嫌かと問えば渋々だがつけてくれた。
「さあ、そろそろですわね」
エミリーの家を見つけた。そこにはちょうど強盗犯が押し入る姿。
「護衛騎士達!助太刀に行きますわよ!」
「え、あ、お嬢様、危険です!」
止める侍女を振り切ってエミリーの家に押し入る。いきなりの邪魔者に呆気にとられる強盗犯達。
「私の前で、悪さは許しませんわ!」
かっこよく登場した私に、ぽかんとするエミリーとその両親。
強盗犯達もぽかんとしていたが、私に向かって激昂した。
「邪魔する気なら容赦しねぇ!」
刃物を私に向けた男が一人。けれどその瞬間、カジミールのくれたネックレスが壊れた代わりに刃物がぐにゃりと曲がった。
「お嬢様!」
遅れて入ってきた侍女が、私を守ろうと間に割って入ってくれた。その侍女のブレスレットは壊れたが、侍女に危害を加えようとした男の腕が有り得ない方向に曲がった。
「大人しくしろ!」
そこに護衛騎士達が入ってきて、あとはあっという間に制圧。縄で縛られた強盗犯達は治安部隊を呼ばれて引き渡された。
侍女や護衛騎士達が治安部隊とやり取りしている間に、私は両親に抱きつき怖かったと泣くエミリーに声をかける。
「貴女、大丈夫ですの?泣いていますけれど、怪我は?」
「あ…」
エミリーは私を見て、思いっきり頭を下げた。
「助かりました!ありがとうございます!お父さんとお母さんが死んじゃうと思って、私怖くて…本当にありがとうございます!怪我はないです!」
「どこの誰かも存じ上げませんが、ありがとうございます」
「なんとお礼を申し上げれば良いか…」
エミリーに続きエミリーの両親も頭を下げた。よし、恩はバッチリ売れた!
「いいんですのよ。怖かったですわね、よしよし」
エミリーの頭を優しく撫でてやれば、エミリーは私をキラキラした目で見つめる。
「助けに来てくれた時、とってもかっこよかったです!」
「これからもご両親を大切にするんですわよ」
「はい!」
「それと、時々遊びに来てもいいかしら?お友達になってくれませんこと?」
「…喜んで!」
ヒロインからの好感度抜群!!!
「では、改めまして。私はエリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌ。アルヴィア王国筆頭公爵家の娘ですわ」
「エリアーヌ様…あの、私はエミリーです!見ての通り平民なんですけど…」
「それでも、せっかくの出会いですわ!お友達になれて嬉しいですわ」
「ふふ、はい!」
ヒロインの懐柔成功!これで安全確保ですわ!
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