上 下
16 / 51

攻略対象その五を懐柔

しおりを挟む
「エリアーヌ、またお友達になってもらいたい子がいるの」

「どなたでしょう?お母様」

「エマニュエル公爵家のご子息よ」

おお…!お母様ナイス!いつどうやって攻略対象その五と接触を図ろうと思っていたので渡りに舟!

「訳あって女の子として育てられている子なのだけど…エリアーヌなら、仲良くなれるんじゃないかと思うの。引っ込み思案な性格だそうで、他の子と中々仲良くなれないみたいで…どうかしら?」

「ぜひ、お会いしてみたいです」

「まあ!良かったわ。では、よろしくね」

「はい、お母様」

こうして私は、攻略対象その五を懐柔しに行くこととなった。






















ということで、早速フェリクスとの二人きりのお茶会をセッティングされた。

うちの屋敷の庭の東屋で、二人きりにされる。

「ええっと…」

引っ込み思案なフェリクスは、いきなり大人達がどこかに行ってしまい二人きりになり困り顔。私がリードしてあげないとね!

「フェリクス様。改めまして、私はエリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌと申しますの。お友達になってくださる?」

バッチリカーテシーを決め、にっこり微笑む。大丈夫、私怖い人じゃない。大丈夫。仲良くなろう。大丈夫。

「あう…あの…うう…」

ピンクのふわふわの髪を弄り、水色の瞳を潤ませる姿はまさに美少女。くっ、負けた!

…とはいえ、引っ込み思案は思いの外重症らしい。さてどうしたものか。

「あの、僕…フェリクス・ガエル・エマニュエル…です」

「まあ!声まで素敵!」

思わずびっくりした。美少女の中の美少女と言えるほど完成された見た目。けれど声も可愛い!完璧!

「え、え、あの…」

「あ!大きい声を出してごめんなさい。はしたなかったですよね」

「い、いや…」

「でも、本当にすごく素敵ですね!見た目も声も!ちょっとした仕草もとても優雅ですね!」

なぜこの子が男の子なのかと神に問いただしたいほど完璧な可愛らしさ。攻略対象として懐柔するとかどうでもよくなるくらい好み!

「そ、そう?」

「はい!」

「でも、あのね、僕…実は男の子なんだ…」

「はい、母から聞いて知ってます!」

「え?」

きょとんとするフェリクス。あー、その顔も可愛い!可愛い!可愛い!女装男子っていいよね!

「え、え、気持ち悪いとか思わないの…?」

「気持ち悪いなんてとんでもない!すっごく可愛いですよ!女装男子って素敵ですよね!」

「え、素敵なの…?」

「素敵です!すごく好きです!」

思わず語りに熱が入ってしまう。しかしフェリクスは、そんな私に引くどころか笑ってくれた。

「ふ、ふふ…あはははは!エリアーヌ様は優しいね」

「え?欲望に忠実なだけですわ」

「あはははは!」

「優しいというなら、それこそフェリクス様の方ですわ。私のこういう趣味、理解してくださる方って少ないんですの。親にも言ってませんわ。それなのに、フェリクス様は笑い飛ばしてくださいましたわ!内面まで素敵です!」

「そ、そうかな…えへへ」

えへへって!可愛い!可愛い!可愛い!

「フェリクス様!ここまで来たら恥も外聞もないですわ!直球で行かせていただきます!」

「え?な、なにかな」

「私と友達になってくださいませ!大人達がどうこうとかもうどうでもいいですわ!個人的にフェリクス様が好きですわ!眼福ですわ!ずっと見ていたいんですの!」

きょとんとするフェリクス。ああ可愛いもう可愛いすごく可愛い!

「え、えっと…あの、いつかは男の子に戻る…というか、男の子の格好に戻るんだけど…」

「ならなおさら今のフェリクス様を目に焼き付けますわ!あ、もちろんその後も仲良くしてくださいまし!」

「…ふ、ふふ。エリアーヌ様は、素敵な人だね」

今度は私がきょとんとする番。欲望ど直球の私を見てその感想はなかなか出ないと思うのだけど。

「そうかしら」

「そうだよ」

…まあ、フェリクスがそう言うならそれでいっか!

「それで、どうですの?私と仲良くお友達になってくださいます?」

「…うん、もちろん。エリアーヌ様となら、いくらでも仲良くなりたい。これからよろしくね」

「まあ!まあ!とっても嬉しい!よろしくお願い致しますわ、フェリクス様!」

「うん!」

思わずフェリクスの手を取って、ブンブンと振ってしまう。フェリクスはなすがままで、とっても可愛い笑顔を向けてくれた。可愛い。とっても可愛い。天使。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。 私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。 攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって? 私は、執事攻略に勤しみますわ!! っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。 ※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。

悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ  社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。 エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも…… 「エマ、可愛い」 いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。

悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那
恋愛
 転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。  このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?  使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います! ※小説家になろうでも掲載しています

乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました

白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。 「会いたかったーー……!」 一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。 【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】

【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!

夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。 そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。 ※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様 ※小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...