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一生怪我は治らないと言われていたのに、わざわざ万能薬を手に入れてまで僕を助けてくれた女の子

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アルヴィア王国王立騎士団の団長。それが僕の父。そんな偉大な父の元、日々剣術の稽古に打ち込む僕はカジミール・ブノワ・バスチアンと言う。

「はあっ…はあっ…」

「どうした!まだまだ打ち込んでこい!」

「はい!」

父は日々、出勤前の早朝に僕を鍛えてくれている。お陰で、同世代の誰よりも強くなれていると思う。年上の、体格の良い相手にも勝ったこともある。

そんな僕は、自分の強さこそ強みだ。

そして弱みは…この顔の傷。

僕はある日友達と森で遊んでいたところ、この辺りでは滅多に見かけない魔物に友人が襲われた。

その友人を守るため僕は勇気を振り絞って魔物に立ち向かった。結果友人は守れたが、僕は顔に傷を負った。

「うおおおおおお!」

「よし、こい!」

顔の傷が出来てから、僕は友人達から避けられるようになった。助けた子も、僕を避ける。

それ以降、僕はますます剣術の稽古に打ち込んでいる。強ければ、怪我を負うこともなかったのだから。

…なんて、色々思い返している間にまた父に吹っ飛ばされた。やっぱり僕はまだまだだ。だが、諦めない。もう一度立ち上がり、父に挑む。

















「カジミール」

「はい、父上」

父が出勤前の稽古の後、朝食を食べている時口を開いた。

「デルフィーヌ家のご令嬢が、お前と会いたいらしい」

「あのわがまま令嬢で有名な?」

「滅多なことを言うな。…まあ、そうだ」

「なぜ?」

「面白い話を聞きたいそうだ」

思わずきょとんとしてしまう僕に、父は笑った。

「ようは遊び相手が欲しいんだろう。付き合って差し上げなさい」

「そういうことでしたら、ぜひ」

別に悪い話でもない。ただ、顔の傷をそのお嬢様は知っているのだろうか。露骨に嫌な顔をされたらどうしよう。…まあ、なるようになるか。
















そして今日、デルフィーヌ邸に馬車で向かう。

目的地に到着すると、僕は馬車から降りる。出迎えてくれたわがまま令嬢で有名なエリアーヌ嬢は、しかし見た目はすごく可愛らしい女の子だった。

そして、僕の顔の傷に嫌な顔一つしない。

…わがまま令嬢、と噂だがもしかしたらそれ以上にすごく素敵な女の子なのかもしれない。

「お初にお目にかかります。カジミール・ブノワ・バスチアンと申します」

「お初にお目にかかります。エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌですわ」

挨拶をして、その後屋敷の中庭に案内された。お茶とお茶菓子を用意され、おもてなしされる。

「この紅茶は、うちの領地でとれる茶葉ですの。よろしければ」

「これはご丁寧に…さて、面白い話を聞きたいとのことですが…何からお話しましょうか」

「その前に、こちらを受け取ってくださいませんか?」

「これは?」

「魔女の万能薬ですわ」

それを聞いた瞬間、僕は言葉を失った。

「なっ…!?」

「カジミール様が、魔物に襲われたお友達を守るため果敢に魔物に立ち向かい結果顔に傷を負ったと聞きましたの。そんな勇敢なカジミール様に、何か出来ることはないかと考えて…私からのささやかな気持ちですわ。どうかしら?」

僕はエリアーヌ嬢のその言葉に、涙を流した。

「え、え、どうしたんですの!?」

「顔に傷を負ってから、両親以外からは避けられることが多くて…勇敢、だなんて過分なお言葉までいただいて、感動してしまって…」

嬉しい。正直、迷っていた。あの時、友人を助けず逃げていれば良かったのかと。助けた友人にすらそっぽを向かれ、そんな荒んだ思考になっていた。けれど、彼女はそんな僕を勇敢と言ってくれた。魔女の万能薬までくれた。

僕の行動は、間違っていなかった。

そしてエリアーヌ嬢は、僕に魔女の万能薬と、涙を拭くためハンカチを渡す。

僕は遠慮なく彼女のハンカチで涙を拭ったあと、魔女の万能薬を飲んだ。

「…どうでしょうか?」

「あ、すごい」

「え?」

ぽかんとした表情のエリアーヌ嬢。そんな顔も可愛いと思ってしまう。

「…あ、治りましたわ。手鏡をどうぞ」

「あ、ありがとう…本当に治ってる!?」

本当に完璧に顔の傷が治った。

「ほ、本当にありがとうございます、エリアーヌ嬢!なんとお礼を言っていいか…」

「そんな、お礼なんて。でも、喜んでいただけて嬉しいですわ」

「本当にありがとうございます!僕に何か出来ることがあるでしょうか…」

「では、なにか面白いお話を聞かせてくださる?」

「ああ、そうでしたね!では、父から聞いた話なのですが…」

その後は騎士団の話を聞かせて差し上げて、和気藹々と楽しく過ごした。エリアーヌ嬢は僕の恩人だ。感謝してもし足りない。
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