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エリアーヌという少女

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獣人族と人族が覇権を巡るこの世界で、珍しく獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。

「今日もこの国は平和ですわね」

「そうですね、お嬢様」

「少しつまらないですわ」

「そのようなことをおっしゃってはいけません」

「…今日も貴女はお堅いですわね」

その筆頭公爵家、デルフィーヌ家。権力、地位、財力全てを持ち合わせており、広大な土地を治める。領内も優れた統治で年々豊かになり、領民からの信頼も厚い。また有り余る財力を使い国に尽くす姿勢から、領内外問わず貴族と平民両方から支持されている。教会にも多額の寄付をしていることから、その信仰の篤さを尊ぶ教会関係者も多い。もちろん王室も、忠義を尽くし国を豊かにするデルフィーヌ家に信頼を置いて優遇していた。

「まあ、この平和をもたらしているのは他でもない我が公爵家。その自覚も持たなければいけませんわね」

「ご立派です、お嬢様」

そのデルフィーヌ公爵家に生まれたのがこの私、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌ。

「そうでしょう?立派でしょう?なのに、他人にわがままお嬢様などと呼ばれるのは心外ですわ」

「あ、言われているご自覚はあったのですね」

「何か言いまして?」

「いえ何も」

他家の人間からはわがままだと言われる私。けれど、そこまでではないと思うのだれど…。たしかに、欲しいものは全部手に入れないと気が済まないし、思い通りに物事が進まないとイライラしてしまう。

けれど、孤児院や養老院に寄付と慰問は欠かさないし勉強は頑張っている。やるべきことは常にやっている。

「一体私のどこがわがままなのかしら…」

「…そうですねぇ」

「まあいいですわ、とにかく朝食を済ませに…うっ!?」

「え、お嬢様!?頭を抑えてどうしたんです!?また発作ですか!?」

「え、ええ。あ、頭が、痛いんですの…!」

侍女が急いで私をベッドに寝かせて、医者を呼びに行く。

私は、自分の顔を見ると時々頭痛の発作が起きる。今も、鏡で自分の顔を見てしまって頭が痛くなった。

いつも起きるこの発作。しかし、今日に限ってはいつもと違った。

「…思い出しましたわ」

やっと、原因がわかった。もう、発作が起きることはないだろう。

…私は、前世の記憶を思い出したのである。

毎度の頭痛は、この記憶を取り戻すためのものだったのだ。

その記憶が正しければ、私は異世界の、日本という国に住むOLだった。そして、私の今いるこの世界は前世でやり込んでいた乙女ゲームの世界。

今世の私は人族の平民出身である聖女、つまりヒロインを虐めて投獄される悪役令嬢だ。

「ど、どうしましょう…」

とりあえず、作戦会議だ。
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