悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
3 / 3

魔術が得意な彼の初恋

しおりを挟む
彼の日記を開く。

別に仲がいいわけじゃ無い。

お互いただ親が決めただけの婚約者。

でも、聖女候補の魅了魔法でおかしくなった彼を見るのはなんとなく面白くない。

やっぱり彼は軽薄でお調子者で、誰にでも愛を振りまくくらいでちょうどいい。

一人の子に一途な彼なんて、調子が狂ってしまうから。

「アンタに本当に愛した人なんていると思えないけど、なんか魅了を解くヒントがあるかもしれないんだから文句は聞かないわよ」

その日記は幼い頃から、あのお調子者からは考えられないほど毎日きっちり書かれていた。

ただし毎日一行二行、多くて三行程度の短い日記だけど。

通りで分厚いわけね。

でも、私が驚いたのはその几帳面さではなくて。

書かれていた内容の方だった。

『婚約者だと紹介された子は、この間他所のパーティーで迷子になった僕を助けてくれた女の子だった』

『何度か遊んだけれど、やっぱり優しい。ツンツンして感じの悪い子だなんて噂、嘘だった』

『あの子がいじめられるのを見た。守ってあげたいけど、原因は僕らしい。僕の婚約者になったあの子が嫌いだって』

『あの子を他の女の子から守るため、僕は他の女の子に優しくすることにした。あの子だけに優しくしたいのが本音だけど仕方がない』

『軽薄な男は嫌いだとあの子に言われた。泣きたい。でも、好きだよ。僕は君だけが好き。こんなこと、今更言えないけど』

…どうしてだろう。

涙が溢れて日記を濡らした。

今更言えないじゃなくて、言いなさいよバカ。

そうすれば、もしかしたら私だってその時素直に好きって言えたかもしれないのに。

大好きで、独占欲を抱くほどに執着していたから…そんな意地悪を言ってしまったのよ?

「…いいでしょう。なら無理矢理にでも目を覚まして、今度こそ素直な言葉を引き出してやろうじゃない」

私はとびっきりの作戦を胸に彼の元へ急いだ。















「なあ、本当にこの迷宮を脱出できたらセイラと会わせてくれる?」

「ええ、ただし魔術は使っちゃダメよ。頑張りなさい」

「わかった」

我が家系に伝わる秘術。

迷宮を生み出す魔術を使い彼を惑わす。

我が迷宮から逃れることは不可能。

我が迷宮から脱出できるのは、私が許可したもののみ。

その昔、とある神を信仰していたご先祖様が御神体を守るために駆使したと聞いている。

「遠慮なく、迷っていらっしゃい」

一時間もしたら、迎えに行くわ。
















「…出口が全然わからない」

「お困りのようね」

「君も出られないの?」

「いいえ、私は出口がわかるわ」

「そっか、僕はまだ迷ってる」

私は彼の手をそっと引く。

「一緒に行きましょう?」

「いいの?」

「ええ」

しばらく彼の手を引いて歩いていたら、彼は止まった。

「グレイ?どうしたの?」

「…リリア?」

「!!!」

「君だよね?あの時僕を助けてくれたのは…僕が好きになった女の子は!」

ガシッと肩を掴まれる。

「ちょっと、グレイ」

「リリア、ごめん…僕…君をいっぱい傷つけた…」

まあ、セイラとかいう女の子の魅了魔法にかかっていた間は酷かったが。

「…元々じゃない?他の女の子にうつつを抜かすのなんて」

「!!!」

「冗談よ」

傷ついた表情の彼に、虐めるのはやめておこうと思い直す。

代わりにからかってやろう。

「貴方、素直じゃないんだもの」

そう言って私が笑うと彼は戸惑う。

「え?」

「私を愛しているなら、素直にそう言えばいいのに」

そう言って手に持った日記帳をフリフリすれば彼は真っ赤になる。

「見たの!?」

「見たわ」

「酷い!!!」

真っ赤な顔の彼に勝ち誇った笑顔を向けて言う。

「素直な言葉を聞かせてみなさい?」

「…好き」

「もう一度大きな声で」

「好き!!!」

「はい、合格」

彼を抱きしめる。

彼は目を白黒させる。

「え」

「だからいい加減、私も素直になるわ」

「なにを…」

「私も好きよ」

彼がさらに驚くのをみて笑う。

「お互い回り道をしたと思わない?」

「…そうだね」

「その分これからはイチャイチャしましょ?」

「うん、する!!!!!」

こうして気に入らない彼は、私だけの可愛い人になりました。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

dragon.9
2024.05.02 dragon.9

⸜( ◜࿁◝)⸝︎︎ わぁい

そうだよねー!
男の子って、、、うん、、、
あるあるだよねぇー(笑)
(*/ω\*)キャー!!甘酸っぱい(ノ)゚∀゚(ヾ)
カカア天下確定!
おめでとう(((o(*゚▽゚*)o)))
でも、
日記あってよかったね、(*^_^*)

2024.05.02 下菊みこと

感想ありがとうございます。日記あって本当に幸運でしたよね!

解除
dragon.9
2024.04.27 dragon.9

まわりの魅了被害者のトリガーが、、、気になる(笑)

どれくらい
小っ恥ずかしいのか、、(笑)

気になる(っ ॑꒳ ॑c)←悪い顔してます

2024.04.27 下菊みこと

感想ありがとうございます。そのあたり少し書けるか試してみます!

解除
2024.04.27 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2024.04.27 下菊みこと

感想ありがとうございます。初恋がトリガーになって魔法が解けるのも面白いですよね!

解除

あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)

白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」 ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。 少女の名前は篠原 真莉愛(16) 【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。 そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。 何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。 「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」 そうよ! だったら逆ハーをすればいいじゃない! 逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。 その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。 これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。 思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。 いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。

お前を愛することはないと言われたので、愛人を作りましょうか

碧桜 汐香
恋愛
結婚初夜に“お前を愛することはない”と言われたシャーリー。 いや、おたくの子爵家の負債事業を買い取る契約に基づく結婚なのですが、と言うこともなく、結婚生活についての契約条項を詰めていく。 どんな契約よりも強いという誓約魔法を使って、全てを取り決めた5年後……。

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。 不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった! けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。 前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。 ……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?! ♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。