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美しき妖獣
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この村には、美しき妖獣がいる。
それはヒトの姿をしている。
美しき紫水晶の瞳、虹色の髪、真珠色の肌。
顔もそれはもう美しく、恐ろしいほどに人を魅了するという。
それはいるだけで村に実りをもたらす加護を持つ。
「けれどけれども、とても可哀想な性質を持つ」
食い物はヒトしか受け付けないのだ。
神は何を思いその妖獣を創りたもうたのか。
ヒトの姿を持ち、素晴らしい加護を持つのに。
ヒトのようには決して生きられないそれ。
村は定期的に死罪に値する罪人を国から買って、妖獣に餌として与えている。
「この村の収入は国にとってもかけがえのないものだから」
妖獣のもたらす実りは、農業漁業に留まらず。
この村の金鉱も、決して枯れることがない。
ものすごく豊かな村、国にとっても妖獣に餌を与えるのは必要なこと。
ここが「村」という体を取り必要以上の発展を許さないのは、妖獣の存在を隠し守るためでしかない。
幸か不幸か、豊かなこの国は他国から狙われることも多くスパイを捕まえては死罪に処するので餌には事欠かない。
「他国からは罪が重すぎると苦情が来るけれど、なら最初からスパイなど寄越すなというお話だから」
妖獣のおかげで豊かなこの村、この国はおかげで食べ物にも物にもお金にも困らない。
だからこそ国防にも力を入れられるので守りは堅い。
だから他国からどんなに狙われても今のところ大丈夫だったりする。
このまま村は、国は。
妖獣を糧に豊かであり続けるのだろう。
「あまりにも可哀想な…」
妖獣には同情する。
長い孤独は彼をどう思わせているだろうか。
案外何も感じていないかもしれないけれど。
それならそれでいい。
苦しんでいないならば。
「…なんて、こんなことを考えているから花嫁などに選ばれるのか」
妖獣のことを知るのは村の人と国のトップ層のみ。
その中でも妖獣に同情的なのは多分おそらく私くらいのもの。
それを神に見抜かれたのかもしれない。
神が最近お告げをした。
妖獣に花嫁を与えると。
「…それが私だった」
笑えることに。
実の親である父はそれを嘲笑い。
母が亡くなってから転がり込んできた父の元愛人であった継母は何も言わないがにっこにこで。
父の元隠し子、今は正式に娘として家に上り込む義妹はおめでとうと無邪気なフリをして喜び。
婚約者であった男は悲しむフリをしながら、良い理由となったとほくそ笑み隠れて浮気していた義妹との結婚を決め。
「だからこそ、私は喜んで妖獣の花嫁となれる」
あんな家族や婚約者、こちらから願い下げというもの。
婚約者がいる女を平気で妖獣に与える神に感謝すらした。
たとえ妖獣に受け入れられず食われるとしても、それでいい。
男爵家の娘…村を治める家の者としての役割だと思えば、食べられるくらいはなんともない。
…怖いけど。
それはヒトの姿をしている。
美しき紫水晶の瞳、虹色の髪、真珠色の肌。
顔もそれはもう美しく、恐ろしいほどに人を魅了するという。
それはいるだけで村に実りをもたらす加護を持つ。
「けれどけれども、とても可哀想な性質を持つ」
食い物はヒトしか受け付けないのだ。
神は何を思いその妖獣を創りたもうたのか。
ヒトの姿を持ち、素晴らしい加護を持つのに。
ヒトのようには決して生きられないそれ。
村は定期的に死罪に値する罪人を国から買って、妖獣に餌として与えている。
「この村の収入は国にとってもかけがえのないものだから」
妖獣のもたらす実りは、農業漁業に留まらず。
この村の金鉱も、決して枯れることがない。
ものすごく豊かな村、国にとっても妖獣に餌を与えるのは必要なこと。
ここが「村」という体を取り必要以上の発展を許さないのは、妖獣の存在を隠し守るためでしかない。
幸か不幸か、豊かなこの国は他国から狙われることも多くスパイを捕まえては死罪に処するので餌には事欠かない。
「他国からは罪が重すぎると苦情が来るけれど、なら最初からスパイなど寄越すなというお話だから」
妖獣のおかげで豊かなこの村、この国はおかげで食べ物にも物にもお金にも困らない。
だからこそ国防にも力を入れられるので守りは堅い。
だから他国からどんなに狙われても今のところ大丈夫だったりする。
このまま村は、国は。
妖獣を糧に豊かであり続けるのだろう。
「あまりにも可哀想な…」
妖獣には同情する。
長い孤独は彼をどう思わせているだろうか。
案外何も感じていないかもしれないけれど。
それならそれでいい。
苦しんでいないならば。
「…なんて、こんなことを考えているから花嫁などに選ばれるのか」
妖獣のことを知るのは村の人と国のトップ層のみ。
その中でも妖獣に同情的なのは多分おそらく私くらいのもの。
それを神に見抜かれたのかもしれない。
神が最近お告げをした。
妖獣に花嫁を与えると。
「…それが私だった」
笑えることに。
実の親である父はそれを嘲笑い。
母が亡くなってから転がり込んできた父の元愛人であった継母は何も言わないがにっこにこで。
父の元隠し子、今は正式に娘として家に上り込む義妹はおめでとうと無邪気なフリをして喜び。
婚約者であった男は悲しむフリをしながら、良い理由となったとほくそ笑み隠れて浮気していた義妹との結婚を決め。
「だからこそ、私は喜んで妖獣の花嫁となれる」
あんな家族や婚約者、こちらから願い下げというもの。
婚約者がいる女を平気で妖獣に与える神に感謝すらした。
たとえ妖獣に受け入れられず食われるとしても、それでいい。
男爵家の娘…村を治める家の者としての役割だと思えば、食べられるくらいはなんともない。
…怖いけど。
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