白百合は白百合でも、温室ではなく山で逞しく咲き誇るタイプです

下菊みこと

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救世主現る

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「白百合様!実は、父が私に贈ってくれた壺が粉々になっていて…これはどういうことなの?」

「赤藤様の使用人がぶつかってきて、その拍子に落としてしまいました…申し訳ございません、我が主人」

「まあ!…赤藤様、説明をお願いしても?」

うわぁ、獲物を捕らえた肉食獣の目だ…赤藤様可哀想。

「わ、私達が部屋から出た際に、急にそちらの使用人の方々がぶつかってきて…」

「まあ!私の使用人達が嘘を吐いていると?」

「…いえ。申し訳ございません。私の責任です」

「どう落とし前をつけてくださるのかしら?」

うーん、可哀想だけど白薔薇様に目を付けられたら終わりだしなぁ。都合良く赤薔薇様でも通りかからないかなぁ。

「あら、なんの騒ぎかしら?」

「赤薔薇様…!」

「赤薔薇様…」

おお!運が赤藤様に味方したかな?赤薔薇様が使用人達を連れてちょうど通りかかりました。

「実は、赤藤様の使用人が私の使用人にぶつかって、父から贈られた壺を割ってしまったのです」

「あらまあ。それは大変。お前達、すぐに錬金術師に連絡を」

「はい!」

「白薔薇様、今回の件は私に免じて許して差し上げてくださいな。壺は必ず元に戻して返しますわ」

「…はい、もちろんですわ。赤藤様、私ったら、父からの贈り物だからと頭に血が上ってしまいましたわ。申し訳ございません。今回のことはお気になさらないでね?」

「いえ、こちらこそ申し訳ございませんでした」

「さあ、壺の破片は錬金術師に渡すためにこちらで集めておきますわ。皆様解散ということで」

「ええ」

「はい」

「ありがとうございます、赤薔薇様」

その後は解散。…と思いきや、白薔薇様が自室にそそくさと退散されるや否や、赤薔薇様が私と赤藤様にちょいちょいと手招き。そのまま赤薔薇様のお部屋に招かれました。

「うふふ。急にお呼びたてしてすみません。あそこで話すと、白薔薇様の目が痛いので」

「いえ、そんな…助けてくださって本当にありがとうございました、赤薔薇様」

「赤藤様…すみません、庇うことが出来ず申し訳ないです」

「いえ、白百合様は何も悪くありません。私が同じ立場でも無理でしたから…」

「お二人とも、厄介な方に目を付けられてしまいましたわね。何かあったらすぐに私を呼んでください。多少はお役に立てるかと」

「ありがとうございます、赤薔薇様」

「ありがとうございます、赤薔薇様。赤薔薇様がいなければ今頃どうなっていたか…」

「ふふ、いいえ。そのかわり、お二人も私がピンチの時には手を貸してくださいましね?」

「もちろんですわ」

「お約束します」

あー、こういうの後宮モノっぽい!最高!

「ついでにお茶でもいかが?美味しいお茶菓子もありますの」

「ぜひ!」

「お言葉に甘えさせていただきます!」

こうして今日も、後宮を楽しんだのでした。
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