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迷子の婚約者。

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ご機嫌よう。私はブーゼ・ターフェルルンデです。

どうしましょう。ハイトが屋敷内で迷子になっているかも知れません。いつもなら必ず私のそばを離れないハイトが、屋敷に来たのに私のそばを離れています。

「ハイトー?ハイトー。ハイトー!ハーイートー!」

いません。一体どこに…?

「ハーイートー!ハイトー?ハイト!ハーイートー!」

使用人がハイトを探す私を見て、口々に陰口を叩きます。

「まあ、見て。浅ましくもベゼッセンハイト様に縋るつもりよ」

「まあ。さすがはブーゼ様ね。最低だわ」

「ベゼッセンハイト様も、グーテ様ではなくブーゼ様の婚約者だなんて可哀想だわ」

「ベゼッセンハイト様は次男で、爵位を継げないから仕方なくブーゼ様の入り婿になるというのに、ブーゼ様はなにを勘違いされているのかしら」

「ターフェルルンデ家の使用人として、恥ずかしいわ」

…。まあ、言いたい奴には言わせておけばいいのです。下手に刺激して状況を悪化させる必要がありません。

「ねえ、それ、どういう意味かな」

いつのまにか、私の悪口を言っていた使用人のうちの一人の胸ぐらを掴むハイト。え、本当にいつのまに?なんで?どうやったの?

「ごめん、ブーゼ。ブーゼに透明化の魔法を見せて驚かせてあげたくて、ずっとブーゼのそばで透明化してた」

なんと傍迷惑な…。

「ハイト、とりあえずその手を離して」

「ブーゼ、でも!」

「この程度の悪口、ハイトがいない間は日常茶飯事だったわ」

「…!この!」

ハイトが使用人達の頬を平手打ちし、折檻します。

「ハイト!」

「ブーゼ、こんな奴ら庇う必要ない!」

「庇ってないわ。貴方の手が汚れるのが嫌なだけ」

「…ブーゼ。ごめん。僕が留学になんて行ったから…」

「いいのよ、ハイト。私のために怒ってくれてありがとう」

私が柔らかく微笑むと、ハイトもようやく落ち着いたようです。

「…。お前たち」

「!」

平手打ちされた使用人達は怯えています。

「たかが使用人の分際で、よくも思い上がったことを言ったな。それ相応の処分を覚悟しておけ」

「そ、そんな…」

「生かしておいてやるだけマシだと思え」

そうしてハイトはお父様に直談判して件の使用人達を今日付けで解雇させました。ハイトすごい。でも恐らくこの件でお父様とお母様にはちくちく言われるんだろうなぁ。憂鬱。でも、ハイトが私のために怒ってくれたのは素直に嬉しい。

「ハイト」

「なあに、ブーゼ」

「愛してるわ」

「…!僕も愛してる!ブーゼ!」

ハイトに抱きしめられます。ふふ、ハイトの髪の毛が頬を掠めてくすぐったい。
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