ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます

帰ってきてしまいました。

はじめまして、ご機嫌よう。私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢です。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。具体的にいうと…。

「ブーゼ！怪我したの！？誰にやられたの！？僕が刀の錆にしてやる！」

「いや…転んだだけだから…」

「転んだの！？僕が！僕がブーゼのそばを離れたから！ごめん、本当にごめんね！」

「いや、あんまりずっとべったりされてても…」

「これからはもうそばを離れないから！」

「いや貴方、もうすぐ留学でしょ」

「やっぱり断ってくる！」

「いやだめだから！行って来なさい！」

「ブーゼェ…」

とまあこんな感じです。

ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。

「ただいま！ブーゼ！」

「お、おかえり、ハイト」

「久しぶりだね、会えて嬉しい…」

私の頬にキスをするハイト。私の妹が同じ部屋にいるんだけどなぁ。ついでに言っておくと、ハイトは誰からも愛される純白の天使である私の妹、グーテを嫌っています。私の興味を掻っ攫う嫌な奴って認識のようです。

「おかえりなさい、ハイトお義兄様」

誰からも愛される天使の微笑みも、ハイトはモノともしません。

「…ただいま。あんまりブーゼに近寄らないで」

「ハイトお義兄様…」

「…あー、ハイト、留学に行っててこっちでの生活は色々と大変でしょ？私がしばらく一緒にいるよ」

「ブーゼ！本当！？ありがとう！」

「うん、だからあんまりグーテを虐めないでね」

私がグーテを慕う使用人達から睨まれるんだから！

「うん、わかった！」

本当にわかってるのかなぁ。

「嬉しいなぁ。やっとブーゼと一緒にいられる…」

「…。私も嬉しいよ」

私はグーテ以外の家族と仲良くないし、使用人達からは嫌われているし。しかもその理由が目つきが悪いから。睨まれているように見えるから。ふざけてんのかって話で。いや、たしかに誤解を解こうとしなかった幼少期の私も悪いけど、それにしたって酷くない？

そんな私の味方はグーテとハイト、グーテの婚約者で同じく幼馴染の公爵令息、イデアール・パラディースだけ。味方が増えたのは純粋に嬉しい。

とはいえなぁ。あんまり溺愛され過ぎるのもなぁ。ほどほどにしてもらえると嬉しいなぁ。

「ブーゼ。ブーゼのお部屋で二人きりになりたいな」

「うん、わかった」

ということで私の私室に向かいます。