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子爵家の跡取りは身分違いの姫君を想う

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ルチア・ナタリー・ディアス。公爵令嬢である彼女は、今幼馴染の子爵令息アルフィー・チャーリー・デイビスと花畑に遊びに来ている。

「ルチア、君の妹は今でも相変わらずなの?」

「ええ…」

「君の婚約者も?」

「そうなんですの…」

ルチアは家族から虐げられている。というのも、ルチアが母を虐待していたという母方の祖母に顔がよく似ていたためだ。いくらルチアが良い子にしていようと、ルチアの両親は母に似た妹ばかりを可愛がり、ルチアは要らない子扱い。おまけに性悪な妹はルチアから虐待を受けていると嘘をつく。

ルチアの婚約者のアルバートも妹にすっかり夢中。妹の婚約者のギルベルトに至っては、事実確認もしないままルチアに「妹を虐めるな、この悪女!」なんて言ってきた。ルチアはそんなことをしていないのに。妹はみんなから愛され守られ、ルチア一人が孤独になっていく。唯一の味方は幼い頃から一緒にいて、ルチアのことをずっと信じてくれるアルフィーだけである。

「ルチア、僕だけは君の味方だから」

「アルフィー…大好き」

「僕もルチアが大好きだよ」

ルチアはアルフィーという味方がいて良かったと思う一方で逃げてしまいたいとも思う。…はたと気付く。逃げてもいいじゃないか。

ーもう魔力の枯渇を理由に引きこもってしまいましょう!

そこからはルチアの行動は早かった。

早速、魔力を領地の畑で食物達の成長促進の為に使いまくり、魔力の枯渇を起こした。領民達はこの時、食物の不作に苦しんでいたためそれはもう喜んでくれた。

「今までお嬢様を誤解していました!すみませんでした!」

「畑を見て涙を流すだけの妹君より、こうして助けてくださった貴方の方がよほど貴族の鑑だ!」

「お嬢様、本当に申し訳ありませんでした!」

最後に誤解が解けて良かったと思うルチア。ルチアはこれから、魔力の枯渇を理由としてルチアを嫌っていないここよりも田舎の方に移り住んだ父方の祖父母の元に逃げる算段である。

「じゃあ姉から虐げられていると言っていた妹君の話は嘘なの?心優しいお嬢様がそんなことをするはずがなかったんだわ!最低!」

誰かがそう言うと、口々に妹への不満が溢れた。ルチアは少しスカッとした。

そしてルチアは魔力の枯渇を理由に父方の祖父母の元で療養させてもらいに行った。そしてそこで、これまでの両親や妹、婚約者達の所業を訴えた。

父方の祖父母はすごく憤った。そのままルチアを引き取ることを決める。もちろん婚約者とはルチアの祖父母の名の下に婚約破棄。

ルチアを邪険にしたことが理由なので慰謝料も貰う。
そして、その慰謝料で借金まみれの男爵家から爵位と領地を買い、ルチアは女男爵となった。ただし、魔力の枯渇のため療養中なので深窓の女男爵などと呼ばれているが。

なおルチアの婚約者アルバートは、婿入りするはずだった公爵家を継げなくなっただけではなく家から勘当されたらしい。

「ルチア、お前に紹介したい子がいるんじゃ」

「ええ、お爺様のご紹介なら喜んで」

「おお、よかった。入っておいで」

入ってきたのはアルフィー。

「アルフィー!?」

「ルチア、遅くなってごめん。迎えに来たよ」

「アルフィー…!」

「僕と結婚していただけますか?マイレディ」

「もちろんよ!」

そしてルチアとアルフィーは結婚した。子爵家を継いだアルフィーと、女男爵となったルチアはお互いに支え合っている。時が経つと一男一女の元気で可愛らしい子供に恵まれて、貴族としては慎ましやかながらも幸せな生活を送っている。















一方で妹。美しい容姿の彼女は逆ハーレムを形成し、他の貴族女性達から蛇蝎の如く嫌われていた。ルチアがいれば全部ルチアのせいにして、悪い噂はルチアが流したもの、可哀想な妹として振る舞えたかもしれない。でも、ルチアは社交界からは出来る限り遠ざかっていた。それどころか、今では正統な公爵家の跡継ぎのルチアを追い出した悪女として有名になっている。

妹の婚約者ギルベルトは今の妹が信じられないようで、必死にルチアのせいにしようとしている。何かしらの魔法で妹を操っているのだと。公爵家を継げることになったのは良いが、視野の狭さをどうにかしないと大変かもしれない。

ルチアの両親は、自分達のしてきたことが母方の祖母…二人の忌み嫌う母の母と同じ所業だとようやく理解したようで、今更ルチアに必死に擦り寄っている。しかしルチアには今更二人と仲良くする気は全く無い。ただただ迷惑である。

こうしてルチアの周りにはそれなりの罰は下った。逃げの一手。それも一つの選択肢だろう。
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