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成金お嬢様、訓練試合の特別席へ座る
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「さて、せっかくコロシアムまで来たんですもの!まずはビールとポテトとポップコーンですわ!貴方達の分ももちろん買うんですのよ」
「はい、お嬢様」
「あと、リムルにはビールの代わりにジュースを買いなさい。ついでに綿あめも買ってあげなさい。ああ、わたくしのポップコーンはキャラメル味でお願いしますわ」
「買ってくるー!」
「おいガキンチョ、勝手に行くな俺も行くから!お嬢様、お嬢様は先に特別席に行っててください!」
コロシアムで何か見世物がある場合には、ルーヴルナの国では大概ビールやポテト、ポップコーンが付き物である。なお、お酒は十五歳で解禁なのでルーヴルナとジル、モーントは飲める。
「ではお嬢様。こちらに」
「ええ」
特別席まで行くルーヴルナ。その周辺の席は大概貴族が抑えていた。
聖王ランスロットのお気に入りともっぱらの噂のルーヴルナを、みんなまじまじと見ている。しかしルーヴルナはそんな貴族たちの視線など気にしない。そもそも興味がない。
中には特別なドレスに身を包んだルーヴルナのどれだけ言葉を尽くしても語り尽くせぬほどの美しさに見惚れる男性もいたが、そんな不躾な視線もスルーするルーヴルナ。
「お嬢様ー!買ってきたよー!」
「バカ、走るなって」
そこに遅れてきたモーントとリムルに、貴族たちは顔をしかめる。
ルーヴルナにとっては大切な従者でも、貴族たちから見れば獣人と敬語も使えない子供。従者として適任とは思えない者を連れ歩くルーヴルナに対し、冷たい目を送る貴族ばかりだ。もっとも、何故あのような娘が聖王猊下のお気に入りなのか…というちょっとの嫉妬も混ざっているが。
「お嬢様、お待たせしました」
「ええ、いいんですのよ。ほら、貴方達も座りなさい」
「はい」
ルーヴルナはモーントとリムルも席に座らせる。獣人に対してそんな扱いをするルーヴルナに、貴族たちの視線はますます冷たくなるがルーヴルナは気にも留めない。…まあ、もちろん気付いてはいるがそんなもの本気でどうでもよかった。
「ふふ、リムル。そろそろ始まりますわ。綿あめでも食べながら楽しみなさいな」
「はーい!」
甘い綿あめを食べながら試合を待つリムル。ルーヴルナも、ポテトを食べながら試合を待つ。ジルはルーヴルナへの冷たい視線を気にしつつも、出来ることもないと分かっているのでポップコーンを食べる。モーントは自分のせいで変な目を向けられているルーヴルナを気にしつつもビールを飲む。
つまりは全員、花より団子である。
「はい、お嬢様」
「あと、リムルにはビールの代わりにジュースを買いなさい。ついでに綿あめも買ってあげなさい。ああ、わたくしのポップコーンはキャラメル味でお願いしますわ」
「買ってくるー!」
「おいガキンチョ、勝手に行くな俺も行くから!お嬢様、お嬢様は先に特別席に行っててください!」
コロシアムで何か見世物がある場合には、ルーヴルナの国では大概ビールやポテト、ポップコーンが付き物である。なお、お酒は十五歳で解禁なのでルーヴルナとジル、モーントは飲める。
「ではお嬢様。こちらに」
「ええ」
特別席まで行くルーヴルナ。その周辺の席は大概貴族が抑えていた。
聖王ランスロットのお気に入りともっぱらの噂のルーヴルナを、みんなまじまじと見ている。しかしルーヴルナはそんな貴族たちの視線など気にしない。そもそも興味がない。
中には特別なドレスに身を包んだルーヴルナのどれだけ言葉を尽くしても語り尽くせぬほどの美しさに見惚れる男性もいたが、そんな不躾な視線もスルーするルーヴルナ。
「お嬢様ー!買ってきたよー!」
「バカ、走るなって」
そこに遅れてきたモーントとリムルに、貴族たちは顔をしかめる。
ルーヴルナにとっては大切な従者でも、貴族たちから見れば獣人と敬語も使えない子供。従者として適任とは思えない者を連れ歩くルーヴルナに対し、冷たい目を送る貴族ばかりだ。もっとも、何故あのような娘が聖王猊下のお気に入りなのか…というちょっとの嫉妬も混ざっているが。
「お嬢様、お待たせしました」
「ええ、いいんですのよ。ほら、貴方達も座りなさい」
「はい」
ルーヴルナはモーントとリムルも席に座らせる。獣人に対してそんな扱いをするルーヴルナに、貴族たちの視線はますます冷たくなるがルーヴルナは気にも留めない。…まあ、もちろん気付いてはいるがそんなもの本気でどうでもよかった。
「ふふ、リムル。そろそろ始まりますわ。綿あめでも食べながら楽しみなさいな」
「はーい!」
甘い綿あめを食べながら試合を待つリムル。ルーヴルナも、ポテトを食べながら試合を待つ。ジルはルーヴルナへの冷たい視線を気にしつつも、出来ることもないと分かっているのでポップコーンを食べる。モーントは自分のせいで変な目を向けられているルーヴルナを気にしつつもビールを飲む。
つまりは全員、花より団子である。
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