21 / 59
成金お嬢様、感動される
しおりを挟む
「まあ、貴女は心も綺麗なのね!失言だったわ。失礼しました。どうか、許してくださる?」
フルールの言葉に、一瞬ルーヴルナは驚いた。貴族、それも公爵家の姫君がここまで心が広いとは。
「…あ、え、ええ。こちらこそ偉そうなことを言って申し訳ありませんでしたわ。ありがとうございます」
「偉そうだなんて!使用人のために声を上げることが出来るのは素敵なことだわ!」
なんだこの姫君は。天使か。ルーヴルナがそう思っていたら、突然その天使に手を握られた。
「さあ、こちらにいらして!お茶会を始めましょう?」
「え、ええ。わかりましたわ、ですからそんなに引っ張らないでくださいまし!」
「いいからいいから!」
ルーヴルナの手を引いて、庭の東屋に向かって駆け出すフルール。
ルーヴルナも、困った様子だが嫌がる気配はない。
ジルとモーントは、なんとかなりそうだとほっと息をついてルーヴルナの背中を追った。
「今日の紅茶はとても香り高いものを選んでみたの!紅茶はお好きかしら?」
「ええ、それなりに嗜んでおりますわ」
「では、早速飲んでみてくださいな。あ、お菓子も秘蔵のコレクションから選びましたのよ!ぜひ召し上がって!」
「では、お言葉に甘えて。…まあ!芳しいですわ!…うん、美味しい。まるで、咲いたばかりの花のような香りですわね」
「ええ!すごく美味しいでしょう?我が寮内で取れた茶葉ですのよ!」
紅茶のおかげもあり、フルールの押しの強さもあってルーヴルナはすっかりとフルールと打ち解けていた。
そんなルーヴルナを見て、ジルとモーントはこっそりと顔を見合わせる。
「よかった、お嬢様楽しそうだな」
「そうですね。心配でしたが、なんとかなりそうでよかった」
そこに、フルールの執事が近寄ってきた。
「この度はうちのお嬢様が、ご無理を言ってすみませんでした」
「え?いえいえ、俺たちはなにも…」
「お嬢様は、公爵家の姫君であらせられる。故にこそ色々と縛られることも多く、ルーヴルナ様の自由なお姿に心を惹かれたようでして。急に会いたいなどと、ルーヴルナ様にもお二人にもご迷惑をおかけして申し訳なく思っております」
執事の丁寧な対応に、ジルとモーントはこちらこそと頭を下げる。
「ですが、最近塞ぎがちだったお嬢様がこんなにも楽しそうになさっているのを見て安心致しました。ルーヴルナ様にもお二人にも、私ども公爵家の使用人一同心から感謝しております」
「…塞ぎがちだった、ですか」
「そうだったんですね」
「ええ。お嬢様の飼っていたペットのバギーが屋敷を抜け出してしまいまして…ふらっと帰ってきてくれるといいのですが」
「それは…見つかるといいですね」
ジルの言葉に、ありがとうございますと頭を下げる執事。
ジルとモーントが再びルーヴルナたちの方に目をやると、ルーヴルナが椅子から立ち上がったところだった。
フルールの言葉に、一瞬ルーヴルナは驚いた。貴族、それも公爵家の姫君がここまで心が広いとは。
「…あ、え、ええ。こちらこそ偉そうなことを言って申し訳ありませんでしたわ。ありがとうございます」
「偉そうだなんて!使用人のために声を上げることが出来るのは素敵なことだわ!」
なんだこの姫君は。天使か。ルーヴルナがそう思っていたら、突然その天使に手を握られた。
「さあ、こちらにいらして!お茶会を始めましょう?」
「え、ええ。わかりましたわ、ですからそんなに引っ張らないでくださいまし!」
「いいからいいから!」
ルーヴルナの手を引いて、庭の東屋に向かって駆け出すフルール。
ルーヴルナも、困った様子だが嫌がる気配はない。
ジルとモーントは、なんとかなりそうだとほっと息をついてルーヴルナの背中を追った。
「今日の紅茶はとても香り高いものを選んでみたの!紅茶はお好きかしら?」
「ええ、それなりに嗜んでおりますわ」
「では、早速飲んでみてくださいな。あ、お菓子も秘蔵のコレクションから選びましたのよ!ぜひ召し上がって!」
「では、お言葉に甘えて。…まあ!芳しいですわ!…うん、美味しい。まるで、咲いたばかりの花のような香りですわね」
「ええ!すごく美味しいでしょう?我が寮内で取れた茶葉ですのよ!」
紅茶のおかげもあり、フルールの押しの強さもあってルーヴルナはすっかりとフルールと打ち解けていた。
そんなルーヴルナを見て、ジルとモーントはこっそりと顔を見合わせる。
「よかった、お嬢様楽しそうだな」
「そうですね。心配でしたが、なんとかなりそうでよかった」
そこに、フルールの執事が近寄ってきた。
「この度はうちのお嬢様が、ご無理を言ってすみませんでした」
「え?いえいえ、俺たちはなにも…」
「お嬢様は、公爵家の姫君であらせられる。故にこそ色々と縛られることも多く、ルーヴルナ様の自由なお姿に心を惹かれたようでして。急に会いたいなどと、ルーヴルナ様にもお二人にもご迷惑をおかけして申し訳なく思っております」
執事の丁寧な対応に、ジルとモーントはこちらこそと頭を下げる。
「ですが、最近塞ぎがちだったお嬢様がこんなにも楽しそうになさっているのを見て安心致しました。ルーヴルナ様にもお二人にも、私ども公爵家の使用人一同心から感謝しております」
「…塞ぎがちだった、ですか」
「そうだったんですね」
「ええ。お嬢様の飼っていたペットのバギーが屋敷を抜け出してしまいまして…ふらっと帰ってきてくれるといいのですが」
「それは…見つかるといいですね」
ジルの言葉に、ありがとうございますと頭を下げる執事。
ジルとモーントが再びルーヴルナたちの方に目をやると、ルーヴルナが椅子から立ち上がったところだった。
1
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました
チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。
そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。
そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。
彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。
ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。
それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる