2 / 2
本当に可哀想なのは誰だろうか
しおりを挟む
僕の婚約者は完璧すぎるお姫様だ。
誰にでも慈愛を与えて、智力は神童と讃えられるほど。おまけに王妃殿下そっくりのかなりの美人だ。
誰もが彼女を愛して、誰もを彼女は愛した。
そんな博愛主義の彼女だが、僕に対してはもっと甘い。
そんなお姫様と僕は、穏やかで優しい関係を築いていた。
僕の劣等感はひた隠しにして。
ある日、恒例となった婚約者とのお茶会のためガゼボで彼女を待っていた時のこと。
彼女の腹違いの妹姫が近寄ってきた。
彼女とは将来の義兄妹として程々に仲良くしていたので、彼女が隣に座って話を聞いて欲しいというのを断る理由は特になかった。
「実は、継母である王妃殿下からすごく嫌われていて…」
「それは…辛かったろうね」
「お姉様がそばにいてくれればその間は嫌味は言われないんですけど…」
「マリーが居ないと酷いの?」
「なんというか、イジメられてるというか…」
語っていて感情が昂ぶったのか、彼女は言った。
「どうか助けてください、ローラン様っ―…!」
そして僕に抱きつく彼女。
正直、多少の下心に近いものはあった。
彼女には微塵も女性としての興味はない。
愛しているのは婚約者だけ。
けれど完璧な婚約者に劣等感を抱えていた僕は、頼られたという事実になんというべきかわからない感情を覚えて…しばらく彼女を押しのける事が出来ないでいた。
それでもなんとか冷静さを取り戻すと、彼女の肩をそっと押して彼女を引き離した。
「わかったよ。それならば僕の方からできる事がないか頑張ってみる。王妃殿下が相手だから…慎重に動く必要があるけれど」
「ありがとうございます…!」
「あと、簡単に婚約者のいる異性に抱きついてはダメだよ」
「はい…ごめんなさい!」
この話はそれで終わり。
そのはずだった。
まさか婚約者に見られていただなんて、思わなかった。
王子殿下から詰問されたが、僕は浮気はしていない。
婚約者の妹姫と関係を持った事はない。
それは婚約者の妹姫が監獄塔に入れられると真実だとはっきりした。
けれど、妹姫をはっきり拒絶しなかったのは罪だと認定された。
親から告げられたのは、愛したはずの彼女との婚約の白紙化。
そこで己の愚かさを直視して、自分が嫌になった。
変な下心を出したから。
僕は王家の姫君が嫁いでくれるはずだったチャンスを無駄にした責任を取らされて、家を出た。
そのせいで跡を継ぐことになってしまった僕の弟は、幸いとても優秀なのでそこまで問題にはならないだろう。
僕は魔法だけは得意なので、身の振り方さえ間違えなければ市井でもやっていけるだろう。
だが妹姫の方は…色仕掛けというのは完全な誤解だろうに、可哀想なことになってしまった。
僕の責任だ。
どうか妹姫が、元婚約者ではなく僕を恨んでくれますように。
誰にでも慈愛を与えて、智力は神童と讃えられるほど。おまけに王妃殿下そっくりのかなりの美人だ。
誰もが彼女を愛して、誰もを彼女は愛した。
そんな博愛主義の彼女だが、僕に対してはもっと甘い。
そんなお姫様と僕は、穏やかで優しい関係を築いていた。
僕の劣等感はひた隠しにして。
ある日、恒例となった婚約者とのお茶会のためガゼボで彼女を待っていた時のこと。
彼女の腹違いの妹姫が近寄ってきた。
彼女とは将来の義兄妹として程々に仲良くしていたので、彼女が隣に座って話を聞いて欲しいというのを断る理由は特になかった。
「実は、継母である王妃殿下からすごく嫌われていて…」
「それは…辛かったろうね」
「お姉様がそばにいてくれればその間は嫌味は言われないんですけど…」
「マリーが居ないと酷いの?」
「なんというか、イジメられてるというか…」
語っていて感情が昂ぶったのか、彼女は言った。
「どうか助けてください、ローラン様っ―…!」
そして僕に抱きつく彼女。
正直、多少の下心に近いものはあった。
彼女には微塵も女性としての興味はない。
愛しているのは婚約者だけ。
けれど完璧な婚約者に劣等感を抱えていた僕は、頼られたという事実になんというべきかわからない感情を覚えて…しばらく彼女を押しのける事が出来ないでいた。
それでもなんとか冷静さを取り戻すと、彼女の肩をそっと押して彼女を引き離した。
「わかったよ。それならば僕の方からできる事がないか頑張ってみる。王妃殿下が相手だから…慎重に動く必要があるけれど」
「ありがとうございます…!」
「あと、簡単に婚約者のいる異性に抱きついてはダメだよ」
「はい…ごめんなさい!」
この話はそれで終わり。
そのはずだった。
まさか婚約者に見られていただなんて、思わなかった。
王子殿下から詰問されたが、僕は浮気はしていない。
婚約者の妹姫と関係を持った事はない。
それは婚約者の妹姫が監獄塔に入れられると真実だとはっきりした。
けれど、妹姫をはっきり拒絶しなかったのは罪だと認定された。
親から告げられたのは、愛したはずの彼女との婚約の白紙化。
そこで己の愚かさを直視して、自分が嫌になった。
変な下心を出したから。
僕は王家の姫君が嫁いでくれるはずだったチャンスを無駄にした責任を取らされて、家を出た。
そのせいで跡を継ぐことになってしまった僕の弟は、幸いとても優秀なのでそこまで問題にはならないだろう。
僕は魔法だけは得意なので、身の振り方さえ間違えなければ市井でもやっていけるだろう。
だが妹姫の方は…色仕掛けというのは完全な誤解だろうに、可哀想なことになってしまった。
僕の責任だ。
どうか妹姫が、元婚約者ではなく僕を恨んでくれますように。
469
お気に入りに追加
197
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
予言の子、捨てられてからが本番だった。
下菊みこと
恋愛
何度だって繰り返すお話。
予言の子であるカタリナは、しかし役に立たないと放置された聖域に捨てられた。しかし聖域はカタリナが足を踏み入れると息を吹き返した。精霊王が、カタリナを迎え入れる。精霊王とカタリナの関係とは。
小説家になろう様でも投稿しています。
イケメンな幼馴染と婚約したのですが、美人な妹に略奪されてしまいました。
ほったげな
恋愛
私はイケメン幼馴染のヴィルと婚約した。しかし、妹のライラがヴィルとの子を妊娠。私とヴィルの婚約は破棄となった。その後、私は伯爵のエウリコと出会い…。
私、悪役令嬢ですが聖女に婚約者を取られそうなので自らを殺すことにしました
蓮恭
恋愛
私カトリーヌは、周囲が言うには所謂悪役令嬢というものらしいです。
私の実家は新興貴族で、元はただの商家でした。
私が発案し開発した独創的な商品が当たりに当たった結果、国王陛下から子爵の位を賜ったと同時に王子殿下との婚約を打診されました。
この国の第二王子であり、名誉ある王国騎士団を率いる騎士団長ダミアン様が私の婚約者です。
それなのに、先般異世界から召喚してきた聖女麻里《まり》はその立場を利用して、ダミアン様を籠絡しようとしています。
ダミアン様は私の最も愛する方。
麻里を討ち果たし、婚約者の心を自分のものにすることにします。
*初めての読み切り短編です❀.(*´◡`*)❀.
『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載中です。
婚約破棄された公爵令嬢は監禁されました
oro
恋愛
「リリー・アークライト。すまないが私には他に愛する人が出来た。だから婚約破棄してくれ。」
本日、学園の会場で行われていたパーティを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子シーザー・コリンの言葉に、私は意識が遠のくのを感じたー。
婚約破棄された公爵令嬢が幼馴染に監禁されて溺愛されるお話です。
悪夢がやっと覚めた
下菊みこと
恋愛
毎晩見る悪夢に、精神を本気で病んでしまって逃げることを選んだお嬢様のお話。
最後はハッピーエンド、ご都合主義のSS。
主人公がいわゆるドアマット系ヒロイン。とても可哀想。
主人公の周りは婚約者以外総じてゴミクズ。
小説家になろう様でも投稿しています。
従姉の子を義母から守るために婚約しました。
しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。
しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。
再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。
シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。
ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。
当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって…
歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。
初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~
ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。
それが十年続いた。
だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。
そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。
好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。
ツッコミどころ満載の5話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
義妹よ、例え継母に虐められてるのが事実だとしても、姉の婚約者に相談するのも抱きつくのもお門違いだよ😒
相談するなら父親にしておけば、幽閉される事も無かっただろうに😮💨
感想ありがとうございます。まさにそれですね。
おはようございます。
作者様、ローラン視点ありがとうございます。
ローランあっさりマリーとの婚約諦めたけど、切り替え早い前向きなのですね。
ローラン言い訳しないではいいのかな、マリーとローランお似合いな気がするけどお別れなんですね。
感想ありがとうございます。ローランは家では責任を取らされたとはいえ、そもそも自力で生きていける力はあるので後腐れにはならないですね。ただマリーを愛していたのは嘘ではないので未練はあるのですが、誤解させた自分が悪いと完全に割り切ってもいますね。
婚約者のローラン視点が読みたいです。
感想ありがとうございます。書けるかわからないのですが書いてみますね。ダメだったらすみません。