上 下
41 / 57

きのことベーコンの炒め物

しおりを挟む
今日は財布が潤っているので冒険者業は休暇ということにする。宿の方でリオルと一緒に朝ごはんを用意してもらって、乗り合い馬車で進めるだけ進んで、孤児院を目指す。まだまだ道は遠いけれど。

ということでリオルを起こして歯磨き、洗顔、着替えを済ませて朝ご飯の到着を待つ。

宿屋の看板娘ちゃんがライスと生卵、お吸い物とお新香ときのことベーコンの炒め物、ほうれん草のお浸しを持ってきてくれた。美味しそう。看板娘ちゃんが下がると、私とリオルは手を合わせていただきますをする。

「いただきます」

「いただきますなのじゃー!」

まずは卵を溶いてライスにかける。ライスを齎した国では『卵かけごはん』として有名らしい。なんでも、聖女様とやらがこれによってライスの美味しさを広めたとか。異国の聖女様は随分と余裕があるらしい。でも、彼女の齎した食文化は確実に食の喜びを人に与えたのだからまさに聖女様なのだろう。

「うーん、生卵と醤油をかけるだけでこんなにライスが美味しくなるなんて、異国の聖女様は凄いわねー。卵かけごはん様様だわ。我が国の聖女様はお祈りにポーション作りに浄化にって忙しいからそれどころじゃないみたいだけど、時間に余裕があれば同じようなことをやるのかしら」

「…聖女様のー」

リオルが珍しく低いテンションで、地を這うような低い声で呟いた。でも、それには触れて欲しくないらしくすぐに話題をそらす。

「でも、この卵かけごはん?本当に美味しいのじゃー!」

「…そうね!すごく美味しいわ。お吸い物とも合うわねー」

「お新香もぽりぽり美味しいのじゃー」

「ほうれん草のお浸しもイケるわ。最高」

「じゃが一番はメインのきのことベーコンの炒め物じゃのー。この赤いののおかげでピリ辛なのがたまらないのー」

「鷹の爪よ。ピリ辛で美味しいわよねー」

「鷹の爪?すごい名前なのじゃー」

それも聖女様の齎したものだけど、わざわざ言う必要はないわね。

「でもこれ、バターと醤油とニンニクで炒めてあるのね。美味しいわ」

「ニンニクと鷹の爪でパンチが効いてるのじゃー」

「あー、美味しかった。ご馳走さまでした」

「ご馳走でしたなのじゃー」

まだテンションが低いリオルに戸惑いつつも、看板娘ちゃんに食器を下げてもらって、忘れ物がないかチェックして宿を出る。宿代はそこそこだったが食事が美味しかったので大満足。

リオルと一緒に乗り合い馬車に乗る。リオルはしばらくテンションが低かったけれど、乗り合い馬車の中で私に膝枕を要求してきたりたっぷり甘えん坊を発揮するとお昼までには気分も回復していた。リオル、私と出会う前に何があったんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました

下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。 そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。 自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。 そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

神様の力で異世界転生してチートでハーレムなスローライフを

おもちさん
ファンタジー
おもち流異世界コメディ!  ※グロ表現あります。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

処理中です...