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ピザ(マルゲリータ)
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夕飯の時間になり、頼んでおいたピザを食べにリオルと手を繋いでいく。リオルは未だにナポリタンナポリタンと言っているが、気に入ってくれたならまあよかっただろう。
店に入ると小麦の焼けた香ばしい香りが広がっていた。それだけでテンションの下がっていたリオルがパッと表情を明るくする。
「おー!いい匂いなのじゃー!リリア、これがピザの匂いかの?美味しそうなのじゃー!」
「でしょう?ナポリタンももちろんいいけれど、絶対美味しいと思うからピザも食べてみなさい」
「わかったのじゃー!」
「いらっしゃいませ。ちょうど焼き上がりましたよ。果実水をどうぞ、サービスです」
「あら、ありがとう。なんのピザを焼いてくれたの?」
「今回はマルゲリータにしました」
「そう。楽しみね」
「マルゲリータかの?美味しそうな名前じゃのー」
マスターがマルゲリータを持ってくると、リオルがすごくいい表情で食い入るように見つめている。マスターはそれを見て少し笑った。
「ふふ。弟さんは食べ物が本当にお好きですね」
「そうなのよ。チョコレートに絶賛はまっているわ」
「子供はみんな好きですからね」
「リリアー!早く食べるのじゃー!」
「はいはい。いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは一口。うん、美味しい。
「チーズがいい感じに溶けて美味しいのじゃー!」
「噛むたびに小麦の旨みを感じるモチモチ生地と、香ばしくて美味しいカリカリのミミがとても好きだわ」
「トマトソースとチーズとバジルがピザの生地にとっても合うのじゃー!」
「美味しいわね」
「美味しいのじゃー!」
リオルも大満足で、明日の朝この村を発つ前に朝もここで食べていこうということになった。小麦粉を渡して、明日の朝のモーニングセットを予約注文して店を出る。ご機嫌なリオルと手を繋いで宿への帰り道を歩いていると、間が悪く引ったくりの現場に出会ってしまった。
リオルが鞄をひったくられて転んだおばあさんに駆け寄って、光魔法で怪我を治している。その間に私は走って逃げる犯人に拘束魔法を使って無事保護。犯人はリオルの見た目年齢と変わらない子供だった。
とりあえず鞄を取り返して、怪我を全部治したどころか持病の腰痛まで治ったというおばあさんに渡す。お礼として美味しそうなチョコレートのたくさん入った箱をリオルと私にくれた優しいおばあさんは何事もなかったかのように帰っていった。
犯人の少年は事情を聴くと、物心ついた頃からひとりぼっちで生きているのだと言う。生きるために手段を選ばず過ごしてきたらしい。
どうするか迷ったが、治安部隊に連絡して事情を説明した。少年は捕まったがどこかほっとした表情だった。治安部隊の人に聴くと、無償労働をして罪を償いつつ孤児院で生活していけるよう調整するとか。
リオルはそんなこと御構い無しでおばあさんから貰ったチョコレートを大事そうに抱えていたし、少年の処遇も悪くはないようなので私も一安心。明日のモーニングセットを楽しみに、リオルともう一度手を繋いで今度こそ宿に帰った。
店に入ると小麦の焼けた香ばしい香りが広がっていた。それだけでテンションの下がっていたリオルがパッと表情を明るくする。
「おー!いい匂いなのじゃー!リリア、これがピザの匂いかの?美味しそうなのじゃー!」
「でしょう?ナポリタンももちろんいいけれど、絶対美味しいと思うからピザも食べてみなさい」
「わかったのじゃー!」
「いらっしゃいませ。ちょうど焼き上がりましたよ。果実水をどうぞ、サービスです」
「あら、ありがとう。なんのピザを焼いてくれたの?」
「今回はマルゲリータにしました」
「そう。楽しみね」
「マルゲリータかの?美味しそうな名前じゃのー」
マスターがマルゲリータを持ってくると、リオルがすごくいい表情で食い入るように見つめている。マスターはそれを見て少し笑った。
「ふふ。弟さんは食べ物が本当にお好きですね」
「そうなのよ。チョコレートに絶賛はまっているわ」
「子供はみんな好きですからね」
「リリアー!早く食べるのじゃー!」
「はいはい。いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは一口。うん、美味しい。
「チーズがいい感じに溶けて美味しいのじゃー!」
「噛むたびに小麦の旨みを感じるモチモチ生地と、香ばしくて美味しいカリカリのミミがとても好きだわ」
「トマトソースとチーズとバジルがピザの生地にとっても合うのじゃー!」
「美味しいわね」
「美味しいのじゃー!」
リオルも大満足で、明日の朝この村を発つ前に朝もここで食べていこうということになった。小麦粉を渡して、明日の朝のモーニングセットを予約注文して店を出る。ご機嫌なリオルと手を繋いで宿への帰り道を歩いていると、間が悪く引ったくりの現場に出会ってしまった。
リオルが鞄をひったくられて転んだおばあさんに駆け寄って、光魔法で怪我を治している。その間に私は走って逃げる犯人に拘束魔法を使って無事保護。犯人はリオルの見た目年齢と変わらない子供だった。
とりあえず鞄を取り返して、怪我を全部治したどころか持病の腰痛まで治ったというおばあさんに渡す。お礼として美味しそうなチョコレートのたくさん入った箱をリオルと私にくれた優しいおばあさんは何事もなかったかのように帰っていった。
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どうするか迷ったが、治安部隊に連絡して事情を説明した。少年は捕まったがどこかほっとした表情だった。治安部隊の人に聴くと、無償労働をして罪を償いつつ孤児院で生活していけるよう調整するとか。
リオルはそんなこと御構い無しでおばあさんから貰ったチョコレートを大事そうに抱えていたし、少年の処遇も悪くはないようなので私も一安心。明日のモーニングセットを楽しみに、リオルともう一度手を繋いで今度こそ宿に帰った。
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