ちょっと歪んだ性格の公爵様が子供を拾った結果

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
4 / 59

変な人は、変な趣味を持つものなのね

しおりを挟む
私はアルビノとして生まれた。

名前すら与えられず、要らない子を扱いされた。

魔術師に売られなかったのだけは、幸いだったと思う。

けれど家族から虐待されたのは、正直を言えば辛かった。

そしてある日、『お人好し公爵様』として有名な人の元に捨てられた。

『おいで、今日から君はオレのモノだ』

その人は本当に私を拾った。

お風呂に入れられて、痛んだ髪を切りそろえられ、服を着せられた。

診察と治療を受けて、食事を与えられた。

そして、一番欲しかったものを与えられた。

『フォルトゥーナ』

一度拒絶したのに、名前を与えられた。

一番欲しかったものだった。

貴方に幸運を、なんてなんて優しい名前だろう。

けれどだからこそわからない。

私を拾ってなんのメリットがあるというのだろうか。

『メリットなんて一つもないよ』

『オレは君を売る気はないよ』

『君を助けてあげたかったから』

なんて傲慢な人だろう。

それを口に出せば、叱責を受けるどころか頷かれてしまった。

思わぬ反応に驚く。

『オレはたくさんのモノを持っている。地位、権力、お金、才能、そして人脈。特に人脈には自信がある。優れた使用人、慕ってくれる平民たち、助けた結果忠誠を尽くしてくれる元棄民たち、よく取引する信用のできる商人や腕のいい医者。オレをよく思わない貴族もいるが、尊敬して慕ってくれているらしい貴族もいる。これで傲慢にならないわけがない』

『ここまで恵まれていて自信家にならない理由があるかい?』

なんてナルシストだろう。

でも、そうなるのもわかる。

彼の言うことは恐らく本当なのだろうし、それであれば思い上がりではなく本当に恵まれた人なのだろう。

『それだから、恵まれたオレは恵まれない人たちが可哀想で仕方がないんだ。オレはみんなを助けてあげたい。この世の中には可哀想な人たちで溢れている。だからできる限りのことをしたい』

なんて人だろう。

すごく変わっている。

お人好し呼ばわりされるわけね。

今までよく悪い人に食い物にされなかったものね。

呆れた目を向ければ、不思議そうな顔をされた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

処理中です...