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小さな頃の冗談に縛り付けられるお話
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「ねえ、マリー。お願いだから俺と付き合って」
「えー、グレイと付き合ったら女の子からのやっかみ酷そうだからやだー」
「…じゃあどうしたら受け入れてくれる?」
「じゃあ、グレイが将来お金持ちになったらいいよ」
「………わかった」
幼馴染との幼い頃のそんな戯れ。
まさか、それがこんなことになるだなんて誰が想像するだろう。
「マリー、その男誰?」
「え、あの…恋人、ですけど」
「は?なに、浮気?」
「いやあの、あなた誰ですか?」
「…え?俺だよ、わからないの?グレイだよ」
え、グレイくん?
あの美少年はこんなイケメンに進化していたのか。
「なぁ、マリー。その人誰?」
「え、あ、幼馴染」
「なんか浮気とか言ってたけど?」
「いや本当になんのことかよく…ごめんねピーターくん」
「ふーん…あの、幼馴染さん。悪いけど俺たちデートの途中なんで失礼します」
彼氏がそう言って立ち去ろうとしたが、幼馴染は立ちふさがった。
「マリー、覚えてないの?俺と約束したじゃん」
「なにを…?」
「お金持ちになったらお付き合いしてくれるって…その約束を信じて俺、頑張ったんだよ。今では良い商会の会長さんだよ。疑うなら名刺も、通帳だって見せてあげる。ね、約束思い出してよ」
「え、それって小さい頃の口約束で…」
「約束は約束でしょ?」
言い募る幼馴染に、彼氏が言った。
「子供の頃の約束で相手を縛り付けるのはどうかと思いますけど」
「は?」
「今は俺がマリーの恋人なんで、悪いんですけど諦めてもらえます?マリー、もう行こう」
「うん…」
思わぬ再会だったのに、最悪な形になってしまったのをちょっと残念に思う。
幼い私が調子に乗ってあんなこと言わなければと悔やまれるが、こうなってしまっては仕方がない。
またいつか遠い未来に再会して、今度はこれをちょっと苦い思い出くらいにお互いに語れたらいいな。
なんて、呑気に考えていたのだけど。
「えーっと、グレイくん」
「なに?マリー」
「なんでうちにいるの?」
「いやぁ、変な虫が近寄ってきてるみたいだからマリーを守ってあげないとと思って。とりあえず同棲しない?俺良い家に買ってあるから、荷物そっちに運ぼうよ」
いやいやいやいや、私の幼馴染はどうしてしまったのだろう。
困った、恋人とは同棲していないから助けも呼べないし。
「…なに?もしかしてあの男のこと考えてたの?」
「えっと…」
「無駄だよ。あの男はもうマリーから手を引いたから」
「え?」
「あ、先に言っちゃった」
慌てて口に手を当てるグレイだがちょっと待って欲しい。
「どういうこと?」
「あいつの両親に大金を積んで、手切れ金として受け取ってもらったんだよね。だからあいつは、お金を受け取った以上もう手を引くしかない」
「え」
「知ってた?あいつの両親とんだギャンブラーで、借金まみれなの。それを補填するどころか家計が黒字になるほどの金を積んだんだから、そりゃあいつも手を引くよね」
「…聞いてない」
借金の話なんて聞いてなかった。
結婚の話も出ていたのに。
「可哀想に、マリーったらあの男に危うく騙されかけてたんだよ。あのまま結婚してたら、義理の両親の借金を返すためにマリーが働かされてたんだよ」
「そんな…」
「ね、マリー」
グレイくんが私を抱きしめる。
「俺なら君をもっと大事にできる。優しくするし、贅沢だってさせてあげられる。それにこうやって守ってあげるよ。だから俺と付き合って」
「えっと…」
「ちなみに、君の両親にはもう結納金は支払ってあるから安心してね」
「え」
「はい、婚約指輪。結婚指輪もすぐに出来るから楽しみにしていてね」
とんでもないヤンデレに捕まってしまったかもしれない。
そう自覚しても逃げ道はとうに塞がれているらしい。
甘い甘い、蕩けるような…けれどとても綺麗な笑顔でこちらに求婚してくるグレイくんに、これからどうしようかと頭を抱えた。
「えー、グレイと付き合ったら女の子からのやっかみ酷そうだからやだー」
「…じゃあどうしたら受け入れてくれる?」
「じゃあ、グレイが将来お金持ちになったらいいよ」
「………わかった」
幼馴染との幼い頃のそんな戯れ。
まさか、それがこんなことになるだなんて誰が想像するだろう。
「マリー、その男誰?」
「え、あの…恋人、ですけど」
「は?なに、浮気?」
「いやあの、あなた誰ですか?」
「…え?俺だよ、わからないの?グレイだよ」
え、グレイくん?
あの美少年はこんなイケメンに進化していたのか。
「なぁ、マリー。その人誰?」
「え、あ、幼馴染」
「なんか浮気とか言ってたけど?」
「いや本当になんのことかよく…ごめんねピーターくん」
「ふーん…あの、幼馴染さん。悪いけど俺たちデートの途中なんで失礼します」
彼氏がそう言って立ち去ろうとしたが、幼馴染は立ちふさがった。
「マリー、覚えてないの?俺と約束したじゃん」
「なにを…?」
「お金持ちになったらお付き合いしてくれるって…その約束を信じて俺、頑張ったんだよ。今では良い商会の会長さんだよ。疑うなら名刺も、通帳だって見せてあげる。ね、約束思い出してよ」
「え、それって小さい頃の口約束で…」
「約束は約束でしょ?」
言い募る幼馴染に、彼氏が言った。
「子供の頃の約束で相手を縛り付けるのはどうかと思いますけど」
「は?」
「今は俺がマリーの恋人なんで、悪いんですけど諦めてもらえます?マリー、もう行こう」
「うん…」
思わぬ再会だったのに、最悪な形になってしまったのをちょっと残念に思う。
幼い私が調子に乗ってあんなこと言わなければと悔やまれるが、こうなってしまっては仕方がない。
またいつか遠い未来に再会して、今度はこれをちょっと苦い思い出くらいにお互いに語れたらいいな。
なんて、呑気に考えていたのだけど。
「えーっと、グレイくん」
「なに?マリー」
「なんでうちにいるの?」
「いやぁ、変な虫が近寄ってきてるみたいだからマリーを守ってあげないとと思って。とりあえず同棲しない?俺良い家に買ってあるから、荷物そっちに運ぼうよ」
いやいやいやいや、私の幼馴染はどうしてしまったのだろう。
困った、恋人とは同棲していないから助けも呼べないし。
「…なに?もしかしてあの男のこと考えてたの?」
「えっと…」
「無駄だよ。あの男はもうマリーから手を引いたから」
「え?」
「あ、先に言っちゃった」
慌てて口に手を当てるグレイだがちょっと待って欲しい。
「どういうこと?」
「あいつの両親に大金を積んで、手切れ金として受け取ってもらったんだよね。だからあいつは、お金を受け取った以上もう手を引くしかない」
「え」
「知ってた?あいつの両親とんだギャンブラーで、借金まみれなの。それを補填するどころか家計が黒字になるほどの金を積んだんだから、そりゃあいつも手を引くよね」
「…聞いてない」
借金の話なんて聞いてなかった。
結婚の話も出ていたのに。
「可哀想に、マリーったらあの男に危うく騙されかけてたんだよ。あのまま結婚してたら、義理の両親の借金を返すためにマリーが働かされてたんだよ」
「そんな…」
「ね、マリー」
グレイくんが私を抱きしめる。
「俺なら君をもっと大事にできる。優しくするし、贅沢だってさせてあげられる。それにこうやって守ってあげるよ。だから俺と付き合って」
「えっと…」
「ちなみに、君の両親にはもう結納金は支払ってあるから安心してね」
「え」
「はい、婚約指輪。結婚指輪もすぐに出来るから楽しみにしていてね」
とんでもないヤンデレに捕まってしまったかもしれない。
そう自覚しても逃げ道はとうに塞がれているらしい。
甘い甘い、蕩けるような…けれどとても綺麗な笑顔でこちらに求婚してくるグレイくんに、これからどうしようかと頭を抱えた。
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