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皇帝陛下の愛娘は砂漠の国に招待される

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砂漠の国、ウジェーヌ王国。プロスペール皇国と何代も前から付き合いのある同盟国である。距離は遠いが、妖精を神格化し信仰しているという共通点からお互い助け合って来た。ウジェーヌ王国は妖精を信仰しているが、プロスペール皇国と違い妖精王の加護や祝福を受けたりするわけではない。ただ、悪戯好きな妖精たちが時折悪戯と称しては人間の仕事や家事育児を手伝ってくれたりするので感謝を込めて崇めていた。

そんなウジェーヌ王国は砂漠の国なので、水が非常に大事になる。水が枯れかけた時には妖精たちが助けてくれることもあるが、基本的に妖精は気まぐれなのであまり頼れない。そのためウジェーヌ王国が水不足になれば、その代のプロスペール皇国の皇族の中で、水魔法の適性があり一番魔力の高い者が救援に向かう。代わりにプロスペール皇国が戦になればウジェーヌ王国の最も優れた戦士たちが味方として駆けつける。

ウジェーヌ王国とプロスペール皇国はそういう持ちつ持たれつの関係だった。今は魔法の天才であるナタナエルが皇帝で、後継者のリリアージュも妖精王の加護を受けているのであまりウジェーヌ王国の戦士の出番はなさそうだが。

…というのが、リリアージュの知るウジェーヌ王国とプロスペール皇国の関係の全てだ。

「…それで、なんで私がウジェーヌ王国に招待されてるの?」

「招待とは名ばかりで、ようは水魔法で助けて欲しいってことだろう。リリアージュが妖精王の加護を受けた事は、あちこちに広まっているからな。ウジェーヌ王国ももう知っているはずだ」

「パパは近寄り難くて頼り辛かったけど、私ならお願いしやすいとかかな」

「…俺の愛娘に頭を下げに来るならともかく、呼びつけてわざわざ出向かせるとは良い度胸だな」

ナタナエルの機嫌が急降下する。リリアージュは困ったように笑った。

「私もそろそろ皇族の一員として、未来の皇太子として働かないといけないから。パパ、ウジェーヌ王国に行かせて?」

「お前がそんなことを気にする必要はない」

「もう。私もいつかは女帝になるんだよ。ちょっとずつ公務をこなしていかなきゃ。パパは過保護過ぎるってまたルイスに怒られるよ?」

ナタナエルの後ろに控えていたルイスがこくこくと頷く。ナタナエルは長いため息を吐き出して、リリアージュを見る。

「お前の気持ちはわかった。許可しよう。ただし、無理はするな」

「うん!パパ、ありがとう!」

「このくらいなんてことはない。…心配で、たまらないがな」

リリアージュはそう言って自分の頭を撫でるナタナエルに抱きついて頬にキスをした。ナタナエルはリリアージュを軽々と抱えると、瞼に優しくキスを落とす。リリアージュはくすぐったさに無邪気に笑った。ナタナエルは、リリアージュが段々と自分から離れて行く気がして寂しくなった。
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