上 下
45 / 79

お寝坊さん二人

しおりを挟む
「おはよう、ゆめ」

朝、カーテンから日差しが差し込んで起きた。

「おはよう、夏希」

「いい朝だね」

「そうだね」

なんでもないこんな朝がとても幸せだ、なんて。

「夏希っ」

「わっ」

先に起きていた夏希に抱きついた。起きていたとはいえ、ベッドの上で寝転がってこちらを見ていたので抱きつくのは簡単。

「ゆめ、どうしたの?」

「幸せだなぁって」

私がそう言えば、きょとんとしたあと笑う夏希。

「僕も思ってた」

「え?」

「僕の隣であんまりにも無防備なゆめを見てるとさ。幸せを感じるんだ」

「ふふ、なにそれ」

抱きついたままで、夏希の言葉に笑う。

「…朝ごはんにしようと思ってたけど。今日は二人でお寝坊しちゃおうか」

「うん、添い寝しよ」

ぎゅうぎゅう抱きついていれば、そんな話になった。夏希はいつも私に甘い。

「ゆめはさ、なんで」

「うん」

「…いや、ごめん」

歯切れの悪い夏希。なんだなんだと見上げれば困った顔をしていた。

「どうしたの?」

「ゆめを困らせようとしてた」

「いいよ、言ってみて」

多分、夏希がこういうなら本当に困ることなんだろうけど。

「…なんで、酷い男ばかり選ぶの」

「ん?」

…ああ、なるほど。たしかに前の私なら困ってた質問だ。でも、今ではノーダメージ。なぜなら今は夏希という最高のパートナーがいるから。

「なんでだったんだろうねぇ…破滅願望でもあったのかな」

「破滅願望って」

「そうとしか思えないほど男運なかったしねぇ…」

でも、そのおかげで今があると思えば。

「でも。…当時はあの野郎どもを恨んでたけど、今はそうでもないよ」

「なんで」

「今が幸せだからさ」

そう言えば夏希の目がまあるくなった。

「夏希を選ぶための回り道だったと思えば、まあ仕方なかったかなって。おかげで今幸せだし」

「え…」

「最終的に、夏希と一緒になれてよかったよ。ありがとう、夏希。酷い男ばかり選んでたのは否めないけど、最後に最高の人と一緒になれた」

気が早いけど、もう結婚もする気満々なわけだし最後の男認定してしまう。

夏希は何故か呆然としていて、今度は私がきょとんとする番。

「夏希?」

「僕は、ゆめが思うより悪い男かもしれないよ」

そう言った夏希はどこか苦しそうに見えた。

「夏希」

だからもう一回抱きしめた。

「え」

「こんなに私を幸せにしてくれる男が悪い男なの?」

「でも」

「夏希は自己評価低すぎ!…そもそも、もしも悪い男だったとしても酷い男じゃないだけ過去最高だし」

「ゆめ」

私のぼそっと言ったそれを夏希は目敏く拾った。

「…僕は悪い男だけど、ゆめを無理にでも繋ぎ止めちゃうような男だけど、ゆめをその分幸せにするから」

「ふふ、知ってる」

そういうところが、大好きなんだよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛い幼馴染はヤンデレでした

下菊みこと
恋愛
幼馴染モノのかなりがっつりなヤンデレ。 いつもの御都合主義のSS。 ヤンデレ君とそのお兄さんが無駄にハイスペックなせいで気付かないうちに逃げ道を潰される主人公ちゃんが可哀想かもしれません。 一応両思いなのが救いでしょうか。 小説家になろう様でも投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

睡姦しまくって無意識のうちに落とすお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな若旦那様を振ったら、睡姦されて落とされたお話。 安定のヤンデレですがヤンデレ要素は薄いかも。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

気付いたら最悪の方向に転がり落ちていた。

下菊みこと
恋愛
失敗したお話。ヤンデレ。 私の好きな人には好きな人がいる。それでもよかったけれど、結婚すると聞いてこれで全部終わりだと思っていた。けれど相変わらず彼は私を呼び出す。そして、結婚式について相談してくる。一体どうして? 小説家になろう様でも投稿しています。

【R18】いくらチートな魔法騎士様だからって、時間停止中に××するのは反則です!

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 寡黙で無愛想だと思いきや実はヤンデレな幼馴染?帝国魔法騎士団団長オズワルドに、女上司から嫌がらせを受けていた落ちこぼれ魔術師文官エリーが秘書官に抜擢されたかと思いきや、時間停止の魔法をかけられて、タイムストップ中にエッチなことをされたりする話。 ※ムーンライトノベルズで1万字数で完結の作品。 ※ヒーローについて、時間停止中の自慰行為があったり、本人の合意なく暴走するので、無理な人はブラウザバック推奨。

処理中です...