上 下
1 / 1

千文字作文

しおりを挟む
紙飛行機にして、駄文を飛ばした。

過去に書いた誰かのための詩。

『嫌いでもいいのです

憎くてもいいのです

許せなくてもいいのです

きっと、その気持ちは誰にも肩代わりできないものなのでしょう

陳腐な慰めなど耳に入らないほど、鋭く痛いものなのでしょう

ならば私が、そんなあなたごと全てを愛しましょう

あなたが自分を嫌いな分だけ、私があなたを愛しましょう

あなたが自分を憎む分だけ、私があなたを愛しましょう

あなたが自分を許せない分だけ、私があなたを愛しましょう

あなたはありのままでいればそれでいいのです

負の感情は肩代わりしてあげられなくても、惜しみない愛と祝福をあなたに捧げることは出来るのですから

もう、無理をして自分を好きになろうとしなくてもいいのです

もう、無理をして自分を愛そうとしなくてもいいのです

もう、無理をして自分を許そうとしなくていいのです

ありのままの自分を、どうか許してあげてください

それはあなたにしかできない許しなのですから

そうしていつか、こんな詩を忘れるほどに幸せになってください

そうしていつか、こんな詩もあったなとふと思い返してみてください

どうか、あなたに惜しみない希望と慈しみが溢れますように』

甘い甘い理想の言葉。

私が、欲しかった言葉。

それはよりにもよって。

好きな人の後頭部に突き刺さった。

窓を見る彼。

目が合う私たち。

彼は嬉しそうにこちらに手を振る。

私はワタワタと慌てる。

彼はあろうことか紙飛行機を広げた。

その内容を見た彼は、こちらに走ってくる。

彼は大声で叫んだ。

「俺には上手く言えないけど、いいと思う!」

私は恥ずかしさで撃沈した。










しばらくして、彼と並んでいつものように帰る。

彼はまだ言う。

「俺さ、あの紙飛行機好きだよ」

「まだ言う…」

「だって、俺は救われた」

「え」

彼は言う。

「好きだよ」

それはどの意味だろう。

答えずにいたら、真剣な目で見つめられた。

「お前のこと、だよ」

「…!」

「あんな照れ臭くて、でも優しいの、書くことが出来るお前が好き」

「…ありがとう」

そっと息を吸って、吐いた。

そして言った。

「私も、好き」

この恋が成就するなんて思ってなかったのに、思わぬところで成就した。

詩を書くのを諦めていた私を助けてくれたのは、他でもない詩だった。

その日は初めて、手を繋いで帰った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私のところの執事がスキンシップ過多なんですがどうすればいい?

下菊みこと
恋愛
異世界にもネット掲示板的なのがあったら? 小説家になろう様でも投稿しております。

どうしようもない幼馴染が可愛いお話

下菊みこと
恋愛
可愛いけどどうしようもない幼馴染に嫉妬され、誤解を解いたと思ったらなんだかんだでそのまま捕まるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

休むことを知らない兄にワインを渡すだけ

下菊みこと
恋愛
ワインを渡して何故か色々好転するお話。 ほのぼのしてるだけ。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

ずっと温めてきた恋心が一瞬で砕け散った話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレのリハビリ。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...