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ざまぁというか当然の流れ
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「私は貴様と婚約を破棄する!そして愛しのリゼットと婚約を…!」
「殿下」
ぴしっと、男爵家のか弱い華が手を挙げた。
「り、リゼット?どうした?」
王太子はキメキメで宣言しようとしたところで止められてちょっと困ったが、愛しの男爵令嬢に甘い笑顔を向けた。
「私、殿下からプロポーズなんてされてません。されてないものはお受けできません。よって婚約宣言などされても困ります」
「あ、ああ。この性悪と婚約を破棄したら…」
「性悪ではありません」
リゼットは王太子を睨みつける。
「え」
「アナスタジア様は天使のようなお優しい方です。いつだって殿下の魔の手から私を守ってくださいましたもの」
リゼットの言葉に、ニヤニヤ見物していた聴衆の目が点になる。
「こら、リゼット。私を褒めてくださるのは嬉しいですけれど、王太子殿下を悪く言ってはダメよ?」
「だって、アナスタジア様」
「高位貴族ばかりの学園では珍しい、男爵家のご令嬢を見つけてしまったのだもの。王太子殿下はちょっと味見をしたかっただけなの。許してあげて」
「…それが迷惑なんですが。まあ、他ならぬアナスタジア様がそう仰るのなら」
王太子はアナスタジアとリゼットの会話についていけない。
「ただ、問題はその高位貴族ばかりの集まる学園に何故男爵令嬢が招かれたか、王太子殿下がわかっていないことね」
「そうですね。うちは国内の鉱山の大半を占める元商家。今は、経済的な功績を挙げたため男爵位を賜り突然貴族になってしまいましたけど」
「だからこそ学園も、貴女を是非入学させて欲しいと頼みこんできたのよね」
「成り上がりの私を快く受け入れてくださって、皆様には頭が上がりません。特に貴族特有のマナーなどを細やかに教えてくださったアナスタジア様には」
アナスタジアは微笑む。
「いいのよ。可愛い貴女を一目見た時から気に入っていたの。そんな貴女がマナーを身に付けたら、もっと素敵だと思ってお節介を焼いただけ」
「殿下は何故かそれをイジメと脳内変換してくれやがりましたけど」
「こら、そんな言い方しちゃいけません」
「はい、アナスタジア様」
どう見てもリゼットはアナスタジアに懐いている。懐きまくっている。そしてどうも王太子を軽蔑しているっぽい。聴衆は逆にワクワクしてきた。
「それと、王太子殿下から守ってくださったのを嫉妬だとか宣ってましたよね。気持ち悪いです」
「もう。注意してもすぐこれなんだから。せっかく可愛いのだから言葉選びは慎重にね?」
「…まだまだ未熟者ですみません。気が立っているのもあって」
「まあ!責めてるわけではないのよ?可愛い貴女を傷つけるつもりはないの。ただ、可愛い貴女には輝いていて欲しいだけよ?」
「アナスタジア様…!」
イチャイチャしつつなんだかんだで王太子をボロカスに吐き捨てる。聴衆は声には出さないが、心の中で最高潮に盛り上がった。
「でも本気で、王太子殿下ってなんで自分が好かれてる前提なんでしょうね」
「ごめんなさい。それは私が悪いの。婚約者として甘やかしすぎたのだわ」
「アナスタジア様のせいじゃないです!…それに、もう婚約破棄は宣言されたのですし〝元〟婚約者でしょう?」
「まあ、それもそうね。よかったわ、私王家に嫁がなくて済むのね。王家とはもう既に濃い親戚関係だし、正直言って旨味も少なかったの。助かるわ」
「そんなアナスタジア様との婚約のお陰で王太子に選ばれたポンコツは、婚約破棄で地位を失いますけどね。第二妃殿下の御子で、第二王子なのになに勘違いしていたのでしょう」
衝撃的な言葉に、王太子は目を見張る。
「でも、第一王子殿下と婚約者のシルヴィア様なら相思相愛でいらっしゃるから、お二人の力で素敵な国に導いてくださるわ。私、なんだか安心」
「ポンコツより王太子向いてますからね。アナスタジア様はフリーになるから、たくさんの縁談がくるでしょうね。ポンコツは王命の婚約を勝手に破棄したから勘当されるでしょうね。大変ですね」
「ふふ。さすがに国王陛下も伯爵位と領地くらいは差し上げると思うわ。彼に上手く領地の経営ができるといいけど」
「ですねですね。ところでアナスタジア様、うちの兄のお嫁さんになるつもりはございませんか。贅沢な生活をお約束します」
「まあ!リゼットが義妹になるの?素敵!リゼットのお家と親戚になれるのも、我が家にとっても美味しいし…良いわね!」
トントン拍子に話が進む。聴衆は王太子を心の中でぷーくすくすと嘲笑う。
王太子は最早、ショックでなにも言えない。
「ただ、問題は爵位よね」
「そうですね。男爵家に公爵家のお嬢様が嫁入りなんてなかなかないですね。でも近いうちにきっと、伯爵位と領地を早々に手放すポンコツが現れるでしょうからすぐに買い上げます。そうしたら済む話です」
「そうね。それまでは準備だけして待ちましょうね」
「楽しみですね」
なんだかんだでオーバーキル。王太子はとうとう、その場で卒倒した。
結果的に、二人の読みは当たった。王太子は伯爵位と領地を与えられ早々に追い出されて、兄に王太子位を譲ることに。しかしそんな彼、ギャンブルに溺れて現実逃避して、借金の返済のために伯爵位と領地を売ることに。
それをリゼットの兄が買い上げて、伯爵となった彼はアナスタジアと正式に結婚。
晴れてアナスタジアとリゼットは義理の姉妹となった。
「ふふ、次はリゼットの結婚ね」
「お義姉様ともう少しイチャイチャしてからお嫁さんに行きます」
「うふふ、それが良いわ。ずっと仲良くしてね?」
「はい、お義姉様!」
むしろこの二人が夫婦かと思うくらい、いつまでもイチャイチャする二人であった。
「殿下」
ぴしっと、男爵家のか弱い華が手を挙げた。
「り、リゼット?どうした?」
王太子はキメキメで宣言しようとしたところで止められてちょっと困ったが、愛しの男爵令嬢に甘い笑顔を向けた。
「私、殿下からプロポーズなんてされてません。されてないものはお受けできません。よって婚約宣言などされても困ります」
「あ、ああ。この性悪と婚約を破棄したら…」
「性悪ではありません」
リゼットは王太子を睨みつける。
「え」
「アナスタジア様は天使のようなお優しい方です。いつだって殿下の魔の手から私を守ってくださいましたもの」
リゼットの言葉に、ニヤニヤ見物していた聴衆の目が点になる。
「こら、リゼット。私を褒めてくださるのは嬉しいですけれど、王太子殿下を悪く言ってはダメよ?」
「だって、アナスタジア様」
「高位貴族ばかりの学園では珍しい、男爵家のご令嬢を見つけてしまったのだもの。王太子殿下はちょっと味見をしたかっただけなの。許してあげて」
「…それが迷惑なんですが。まあ、他ならぬアナスタジア様がそう仰るのなら」
王太子はアナスタジアとリゼットの会話についていけない。
「ただ、問題はその高位貴族ばかりの集まる学園に何故男爵令嬢が招かれたか、王太子殿下がわかっていないことね」
「そうですね。うちは国内の鉱山の大半を占める元商家。今は、経済的な功績を挙げたため男爵位を賜り突然貴族になってしまいましたけど」
「だからこそ学園も、貴女を是非入学させて欲しいと頼みこんできたのよね」
「成り上がりの私を快く受け入れてくださって、皆様には頭が上がりません。特に貴族特有のマナーなどを細やかに教えてくださったアナスタジア様には」
アナスタジアは微笑む。
「いいのよ。可愛い貴女を一目見た時から気に入っていたの。そんな貴女がマナーを身に付けたら、もっと素敵だと思ってお節介を焼いただけ」
「殿下は何故かそれをイジメと脳内変換してくれやがりましたけど」
「こら、そんな言い方しちゃいけません」
「はい、アナスタジア様」
どう見てもリゼットはアナスタジアに懐いている。懐きまくっている。そしてどうも王太子を軽蔑しているっぽい。聴衆は逆にワクワクしてきた。
「それと、王太子殿下から守ってくださったのを嫉妬だとか宣ってましたよね。気持ち悪いです」
「もう。注意してもすぐこれなんだから。せっかく可愛いのだから言葉選びは慎重にね?」
「…まだまだ未熟者ですみません。気が立っているのもあって」
「まあ!責めてるわけではないのよ?可愛い貴女を傷つけるつもりはないの。ただ、可愛い貴女には輝いていて欲しいだけよ?」
「アナスタジア様…!」
イチャイチャしつつなんだかんだで王太子をボロカスに吐き捨てる。聴衆は声には出さないが、心の中で最高潮に盛り上がった。
「でも本気で、王太子殿下ってなんで自分が好かれてる前提なんでしょうね」
「ごめんなさい。それは私が悪いの。婚約者として甘やかしすぎたのだわ」
「アナスタジア様のせいじゃないです!…それに、もう婚約破棄は宣言されたのですし〝元〟婚約者でしょう?」
「まあ、それもそうね。よかったわ、私王家に嫁がなくて済むのね。王家とはもう既に濃い親戚関係だし、正直言って旨味も少なかったの。助かるわ」
「そんなアナスタジア様との婚約のお陰で王太子に選ばれたポンコツは、婚約破棄で地位を失いますけどね。第二妃殿下の御子で、第二王子なのになに勘違いしていたのでしょう」
衝撃的な言葉に、王太子は目を見張る。
「でも、第一王子殿下と婚約者のシルヴィア様なら相思相愛でいらっしゃるから、お二人の力で素敵な国に導いてくださるわ。私、なんだか安心」
「ポンコツより王太子向いてますからね。アナスタジア様はフリーになるから、たくさんの縁談がくるでしょうね。ポンコツは王命の婚約を勝手に破棄したから勘当されるでしょうね。大変ですね」
「ふふ。さすがに国王陛下も伯爵位と領地くらいは差し上げると思うわ。彼に上手く領地の経営ができるといいけど」
「ですねですね。ところでアナスタジア様、うちの兄のお嫁さんになるつもりはございませんか。贅沢な生活をお約束します」
「まあ!リゼットが義妹になるの?素敵!リゼットのお家と親戚になれるのも、我が家にとっても美味しいし…良いわね!」
トントン拍子に話が進む。聴衆は王太子を心の中でぷーくすくすと嘲笑う。
王太子は最早、ショックでなにも言えない。
「ただ、問題は爵位よね」
「そうですね。男爵家に公爵家のお嬢様が嫁入りなんてなかなかないですね。でも近いうちにきっと、伯爵位と領地を早々に手放すポンコツが現れるでしょうからすぐに買い上げます。そうしたら済む話です」
「そうね。それまでは準備だけして待ちましょうね」
「楽しみですね」
なんだかんだでオーバーキル。王太子はとうとう、その場で卒倒した。
結果的に、二人の読みは当たった。王太子は伯爵位と領地を与えられ早々に追い出されて、兄に王太子位を譲ることに。しかしそんな彼、ギャンブルに溺れて現実逃避して、借金の返済のために伯爵位と領地を売ることに。
それをリゼットの兄が買い上げて、伯爵となった彼はアナスタジアと正式に結婚。
晴れてアナスタジアとリゼットは義理の姉妹となった。
「ふふ、次はリゼットの結婚ね」
「お義姉様ともう少しイチャイチャしてからお嫁さんに行きます」
「うふふ、それが良いわ。ずっと仲良くしてね?」
「はい、お義姉様!」
むしろこの二人が夫婦かと思うくらい、いつまでもイチャイチャする二人であった。
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