上 下
13 / 49

今日は休日です!

しおりを挟む
ご機嫌よう。マルゲリット・アルカンシエルです。一週間前はちょっと無茶なことをして、パパと姉姫さまとシュテル様に心配をさせてしまいました。でも私は元気です!今日は休日、寮から家に帰る日です!と言ってもたったの二日ですが。

「うふふ。今日は何事もなくてよかったわ」

「心配ばかりおかけして申し訳ありません、姉姫さま」

「私はメグが無事でいてくれればそれで十分よ」

ああ、やっぱり姉姫さまは天使だ…。

ー…

「おかえりなさいませ、リュディヴィーヌ王女殿下、マルゲリット王女殿下」

「みんな、ただいま」

「ただいま帰りました」

「…やっと帰ってきたか」

「お父様!」

「パパ!」

パパが出迎えてくれるなんて!嬉しい!

「おかえり。リュディー、メグ」

「ただいま!お父様!聞いて欲しい話がたくさんありますの!」

「ただいま!パパ。今日明日は一緒にいられる?」

「ああ、もちろんだ。この二日のために昨日仕事は終わらせておいた」

「さすがお父様です!」

「パパすごいね!」

「ああ、ありがとう。それでだな、メグ。今日は一緒に俺の宮内の湖でボートに乗ってみないか?」

「ボート?乗ってみたい!」

「まあ、すごく懐かしい!小さな頃は、よくお父様とお母様と一緒に乗って楽しみましたよね!」

「ああ、懐かしいな」

「メグ、私はもう散々乗ったから、今日はお父様と楽しんでいらっしゃい」

「はい、姉姫さま!ありがとうございます!」

ということで帰ってきて早々にパパの宮に向かい、パパとボートに乗る。

「…わあ、すごく綺麗!湖が透き通ってきらきらしてる!」

「…ふ、気に入ったか?」

「うん!すっごく!お魚さんも見えるね!可愛い!」

「まるで子供みたいな反応だな」

「もう!パパったら!」

「はは、冗談だ。…一番感性の強い子供の頃には、見せてやれなかったな」

ちょっとしょぼんとするパパ。…そんなに気にしなくてもいいのに。

「でも、今はパパと仲直り出来て、こうして連れてきてもらえたよ?」

「…そうだな」

私の頭を軽く撫でるパパ。転生したばかりの頃は、こんなに仲良くなれるなんて思っても見なかったな。

「学園の方はどうだ?」

「お友達がたくさん出来たよ!」

「そうか、よかったな」

「まあ、中には打算で付き合ってくれてる人もいると思うけれど…」

私が王女で寵妃の娘だからと打算で近づいてくる人も多い。でも、もちろん純粋なお友達もいる。私はどちらかといえばやっぱり純粋なお友達とのお付き合いを優先している。お姉様の方は来る者拒ずだが、みんな打算よりも純粋にお姉様を慕って近づいてくるので問題ないようだ。

「そうか…勉強の方はどうだ?」

「うーん。正直知ってることばかりでつまんないかなぁ」

「まあ、学園での勉強なんて所詮そんなものだろうな。学園に通うのなんて、ただの箔付けだ」

「そういう意味では平民クラスはやる気があって学べることも多くて羨ましいかなぁ」

「そうだな。平民クラスは熱量が違う。謂わば将来の為の投資だからな」

そう。平民クラスのみんなが特待生制度や奨学金制度を使ってまで学園に通うのは将来のため。私達王族や貴族のみんなのように道楽で通っているわけじゃない。

「わかってはいるんだけどやっぱり羨ましいなぁ。私ももっと多くの魔法を学びたいなぁ」

「メグは魔法が好きか」

「うん!お勉強の中では一番好き!」

「そうか。…なら、学園なんてやめて帰ってくるか?」

いくらでも勉強出来るぞ、とパパ。

「もう!そんなに簡単にやめられるわけないでしょ!」

「…仕方ないだろう。寂しいんだ、お前がいないと」

「もう、パパったら!」

パパに溺愛して貰えるのはありがたいと思うけれどもね。限度があるでしょう。

「…また今度帰って来るのはいつになる」

「また来週来るよ」

「そうか。…今までの分まで手元に置いておきたいんだがな」

パパは私を愛してくれている以上に私に負い目がある。だから余計にそう思うんだろうけれども。

「パパ。そんなに気にすることないんだよ?」

「?メグ?」

「私はパパを愛してる。パパも私を愛してくれてる。それだけで十分なんだから」

「…メグ」

「だからね、今までの分までとか考えなくても大丈夫」

「…そうか。そうだな」

パパは少しの間目をつぶって、何かを考えたあと私をしばらく見つめます。なに?

「だがやはり、お前は俺の愛娘。お前ともたくさんの思い出が欲しいんだ」

「うん、私も、パパとの思い出いっぱい欲しいよ」

「…休みはなるべく帰ってきてくれ」

「うん!」

「学園にいる間も、毎日通信石を使ってくれ」

「うん!」

「シュトラール殿下のお嫁に行くのは、もっと先にしてくれ」

「パパ、気が早いよ。学園を卒業するまでは大丈夫だよ」

「…お前は、長生きしてくれ」

…。

一瞬だけ、返事に戸惑う。私はマノン妃の本当の死因に関しては知っているけれど、何も言う気はない。そして私は、姉姫さまの死亡フラグ回避の為にこれからも危険と隣り合わせの生活を送るだろう。

「…善処、します」

「…絶対だ」

「…この世に絶対なんてないよ」

私という存在によって、この世界が小説の内容と変わっているように。

「嘘でもいいから、誓ってくれ。安心したいんだ」

「…うん、じゃあ、死なないように頑張るね」

「…ありがとう、メグ。…俺たちの真珠」

その後はお互いに無言で、ただ穏やかな時間だけが過ぎていき、ボートを降りました。パパを安心させてあげたいけれど、死亡フラグはまだまだわんさかあるからなぁ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【完結】惨めな最期は二度と御免です!不遇な転生令嬢は、今度こそ幸せな結末を迎えます。

糸掛 理真
恋愛
倉田香奈、享年19歳。 死因、交通事故。 異世界に転生した彼女は、異世界でエマ・ヘスティア・ユリシーズ伯爵令嬢として暮らしていたが、前世と同じ平凡さと運の悪さによって不遇をかこっていた。 「今世こそは誰かにとって特別な存在となって幸せに暮らす」 という目標を達成するために、エマは空回りしまくりながらも自分なりに試行錯誤し続ける。 果たして不遇な転生令嬢の未来に幸せはあるのか。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈 
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...