至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと

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いよいよ本編スタートです!

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ご機嫌よう。マルゲリット・アルカンシエルです。あの水害があってから数年が過ぎました。貧困政策は今のところ上手くいっています。水害が起きた村の復興も出来ました。よかったです。

私は、今のところ相変わらずの扱いを受けています。王妃さまは私を邪魔者扱いし、国王さまは相変わらず塩対応で、時々何か言いたそうな顔をすることがあります。なんなんだろう。

シュテル様とは相変わらず毎日のように使い魔を飛ばして恋文を送りあっています。たまに暇を見つけてはアルカンシエルに遊びに来て、私と一緒に居てくれます。

姉姫さまも相変わらずお優しくて、暇を見つけては一緒にお茶会をしているほど仲良しです。

数年前に生まれた弟、第一王子のノルベール・アルカンシエルとも仲良しです。

さて、今日はいよいよ、姉姫さまの十六歳の誕生日。本編スタートです!明々後日から姉姫さまと私は学園に通います。

え?なんで年下の私も一緒に学園に通えるか?理科と数学と魔法の成績を活かして飛び級で通えることになったのです!これも全て姉姫さまを死亡フラグから守るため、そしてシュテル様を姉姫さまに取られないためなのです!ただまあ、シュテル様とはかなり親密になり、信頼関係もものすごくあるつもりなので、シュテル様に関しては心配ない気もしますが。

ということで今日は姉姫さまの生誕祭。豪華なパーティーが開かれ、特別に平民達も参加を許されています。…でも、私、なにか大事なことを忘れている気がするのです。なんでしょうか?

お姉様がみんなにお祝いのお礼の言葉を告げ、次に国王さまがスピーチをします。…うーん。私はなにを忘れているんだろう。気になる。

…と、突然スピーチをしている国王さまの近くに平民らしき人が寄ってきました。

…あ。まずい。

私は、大事なことを思い出し、急いで国王さまの側に駆け寄ります。

平民らしき人も国王さまに駆け寄ります。

それに気付いた騎士さん達が平民を止めようとしますが、平民さんの方がはやくて。

「お父様!」

私よりも近くにいた姉姫さまがそれに気付いて咄嗟に国王さまの前に立ちはだかります。

「お姉ちゃん!パパ!」

咄嗟のことで、私は何も考えずに国王さまの前に立ちはだかる姉姫さまを抱きしめて背中に来るだろう衝撃を待ちます。

「メグ!」

シュテル様の叫び声が聞こえます。…しかし、いつまで待っても衝撃は来ません。なんで?

後ろを振り返ると、平民さんが私達の前に平伏していました。

「国王陛下!リュディヴィーヌ王女殿下!マルゲリット王女殿下!本当にありがとうございます!」

あれ?お礼?どういうこと?

原作では、このシーンではこの国に不満を持つ平民さんが隙を見て国王さまを刺そうとして、姉姫さまがそれを庇って代わりに刺される。それをシュテル様が取り押さえて、姉姫さまを看病し、より仲が深まるはずなのだけれども。

「陛下方の政策のお陰で、兄ちゃんは治療術師になれました!治療術師になった兄ちゃんの作った新薬のおかげで不治の病にかかっていた母ちゃんが助かりました!本当にありがとうございます!このご恩、一生忘れません!」

…どうやら、私がストーリーを変えたことで助かった命があるらしい。そしてそのおかげで、私も助かったと。…あー、よかった。

騎士さん達は平民さんを取り押さえようとしましたが、しばらくフリーズしていた国王さまが復活してそれを制して平民さんを立たせます。

「そなたの忠誠はよくわかった。俺も嬉しく思う。さあ、もうあちらに戻りなさい」

「はい!ありがとうございます!」

円満解決!素晴らしい!ストーリー改変した甲斐があるというものです!

…一人だけ名前を呼ばれずぶすくれてる王妃さまは知りませんが。

いつの間にか駆け寄ってきてくれていたシュテル様が私を抱きしめてくれます。

「メグ!怪我はないな!?ああ、よかった…」

「シュテル様…ありがとうございます…」

シュテル様はいつの間にか、こんなにも私を愛してくれていたんだなぁ。感動。

嬉しくて、シュテル様を抱きしめ返すと民衆達から囃し立てられます。照れるー。

「メグ!私を庇ってくれたのね、ありがとう。無事でよかったわ!」

「はい、姉姫さま!」

姉姫さまからはお礼を言われる。そんなに気にしなくてもいいのにー。

「メグ姉さま、大丈夫ですか!?」

「大丈夫よ、ありがとう」

小さな弟も精一杯心配してくれます。可愛いものです。

その後は何事も無かったかのようにパーティーが再開され、みんなでワイワイ盛り上がりました。

パーティーが終わって宮に戻ると、王妃さまから突然水をかけられました。

「私の夫と娘をお姉ちゃん、パパなんて、ふざけないでちょうだい!妾腹の癖に!」

「…申し訳ございませんでした」

「次からは気をつけることね!」

…くそぅ。むかつく。あの時は必死だったんだよ仕方ないじゃん。

ともかく、シュテル様が来る前に急いで着替える。今のことを知られるとシュテル様は間違いなく王妃さまに喧嘩を売りに行くから。

着替えが終わると、タイミングよく部屋の扉が叩かれる。どうぞと声をかけると、そこにいたのは。

「マルゲリット…話がある」

国王さまでした。
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