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ハズレだって幸せになりたい
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私はリリアージュ・フラン・ネクスト。公爵家の三番目の子で、末っ子長女。そんな私は日本という国で生きていた前世の記憶を持つ。その代わりに、貴族の生まれでありながら、生まれつき魔力を持たない。この国では高貴な生まれであるほど高い魔力を持つ。しかし、たまに私のような〝ハズレ〟が生まれてくることもある。しかし、優しく厳しい両親も、甘々な兄もハズレの私を差別せず可愛がる。私を家の恥だと言った分家のおじ様を家族総出でぶん殴って私に土下座させるレベルで。
そんな私の婚約者は、完璧な人だ。ルーク・ローランド・ターフェルルンデ。ターフェルルンデ王国の第一王子であらせられる。文武両道で見た目も見目麗しい彼は、しかし後ろ盾のない平民上がりの愛妾の子。王位継承権は王妃陛下の子である第二王子殿下、第三王子殿下、第一王女殿下よりも低い。
私と彼の婚約は、王妃陛下から彼への嫌がらせだ。一応、公爵家の娘との婚約ということで身分は釣り合うが、私はハズレ。彼の足枷にぴったりだ。
けれど、彼はそんなハズレの私にとても真摯に向き合ってくれる。ハズレである私を受け入れて、その分科学の発展に寄与する私を応援してくれる。そう、私は彼の足枷になりたくなくて、知識無双をすることにしたのだ。
この世界では魔法があるため数学や科学は進歩していない。だから、私の〝日本の女子大生〟レベルの数学や科学の知識でも十分に無双出来た。たくさんの拙い論文を発表して、その論文の出来の悪さは笑われたが内容自体は褒め称えられた。これでハズレでなければ英雄レベルだと言われるほどに。
そんな私を誇らしく思うと言ってくれる理解ある彼。まだまだ男尊女卑もあるこの国で、こんなに理解ある婚約者は他にいないんじゃなかろうか。
私は他の貴族の皆様からいくら公爵令嬢だからって、女が、しかもハズレが目立つようなことをして恥ずかしくないのかと言われることも多いが、必ずそういう時には彼が庇ってくれる。いくら蔑ろにされているとはいえ、彼は第一王子。一言だけで、みんな黙る。
でも。彼の足枷になりたくなくて頑張った結果の知識無双だったのに。それで我が国の科学は進歩したのに。それによってより強大な国になったのに。〝ハズレの私は王族の妻に相応しくない〟と王妃陛下に婚約解消させられてしまった。
もちろんそんなの建前だ。私が魔力を持たない割には有能だとわかり、そんな者を彼の側に置きたくないと、そういうことだろう。ちなみに国王陛下は王妃陛下の尻に敷かれており頼りにならない。もう、どうしようもない。
そして、私は彼…ルークと今この瞬間から他人になる。後は、今サインした婚約解消届けを神父様に渡すだけ。そして、私とルークは顔を見合わせ…。
婚約解消届けをびりっと破ってルークの転移魔法で教会から逃げた。
ー…
娘が、第一王子殿下と駆け落ちした。転移魔法まで使って。そう聞いて、心配より先によくやったと思ってしまった私は親失格なのだろう。
転移魔法は、もし失敗すれば見知らぬ土地に飛ばされてしまう恐ろしいものだ。それを承知で、二人で逃げた。なら私は二人を止めるつもりはない。娘が幸せならそれでいい。
妻と二人の息子も同じ考えらしい。いやはや、若いっていいねぇ。だが、たまには手紙が欲しいな。
…それから毎年、この日に限って一通の家族宛の手紙が届くようになり、私達はそれを楽しみにするようになった。
ー…
忌々しい第一王子が駆け落ちした。それを聞いて、私は笑った。平民の苦労を知らない温室育ちの第一王子が、公爵家のご令嬢を養えるわけがない。すぐに野垂れ死ぬだろう。
私はストレスが無くなったことで毎日穏やかに過ごせるようになった。…はずだった。
あれから毎日、私の子である第二王子や第三王子、第一王女が何故兄を追い詰めたのかと抗議してくる。アレを兄などと呼ぶなと何度言えばわかるのか。第一アレに心配など必要ないのに。国王陛下まで、お前が追い詰めた結果だと庇ってくださらない。
その内、第二王子や第三王子、第一王女は私の言うことを素直に聞かなくなった。さらに、それに私が怒ると〝ヒステリーを起こしやすくなった、何かの病かもしれない〟と離宮に押し込めて〝療養〟させられた。まさか実の子から裏切られるとは思わず、さらに国王陛下まで〝しばらく反省していろ〟と助けてくださらない。どうしてこうなったの?
ー…
「ルーク!おかえりなさい!」
「ただいま、リリ。お土産のプリンだよ」
「わあ!ありがとう!さっそくご飯の後一緒に食べましょう?」
「そうしようか」
私達は今、隣国の田舎で生活している。如何にも今駆け落ちしてきました、みたいな私達を村の人達は親切半分面白さ半分で保護してくれて、家と服と仕事をくれた。お陰で今は自立して、村の人達にお金を少しずつ返せているところ。
「大好きよ、ルーク」
「僕は愛してるよ、リリ」
こうして穏やかな幸せを手に入れた私達。互い以外の全てを捨てた、この恋の結末はハッピーエンド。互いがいれば、私達はそれだけで幸せなのだ。
そんな私の婚約者は、完璧な人だ。ルーク・ローランド・ターフェルルンデ。ターフェルルンデ王国の第一王子であらせられる。文武両道で見た目も見目麗しい彼は、しかし後ろ盾のない平民上がりの愛妾の子。王位継承権は王妃陛下の子である第二王子殿下、第三王子殿下、第一王女殿下よりも低い。
私と彼の婚約は、王妃陛下から彼への嫌がらせだ。一応、公爵家の娘との婚約ということで身分は釣り合うが、私はハズレ。彼の足枷にぴったりだ。
けれど、彼はそんなハズレの私にとても真摯に向き合ってくれる。ハズレである私を受け入れて、その分科学の発展に寄与する私を応援してくれる。そう、私は彼の足枷になりたくなくて、知識無双をすることにしたのだ。
この世界では魔法があるため数学や科学は進歩していない。だから、私の〝日本の女子大生〟レベルの数学や科学の知識でも十分に無双出来た。たくさんの拙い論文を発表して、その論文の出来の悪さは笑われたが内容自体は褒め称えられた。これでハズレでなければ英雄レベルだと言われるほどに。
そんな私を誇らしく思うと言ってくれる理解ある彼。まだまだ男尊女卑もあるこの国で、こんなに理解ある婚約者は他にいないんじゃなかろうか。
私は他の貴族の皆様からいくら公爵令嬢だからって、女が、しかもハズレが目立つようなことをして恥ずかしくないのかと言われることも多いが、必ずそういう時には彼が庇ってくれる。いくら蔑ろにされているとはいえ、彼は第一王子。一言だけで、みんな黙る。
でも。彼の足枷になりたくなくて頑張った結果の知識無双だったのに。それで我が国の科学は進歩したのに。それによってより強大な国になったのに。〝ハズレの私は王族の妻に相応しくない〟と王妃陛下に婚約解消させられてしまった。
もちろんそんなの建前だ。私が魔力を持たない割には有能だとわかり、そんな者を彼の側に置きたくないと、そういうことだろう。ちなみに国王陛下は王妃陛下の尻に敷かれており頼りにならない。もう、どうしようもない。
そして、私は彼…ルークと今この瞬間から他人になる。後は、今サインした婚約解消届けを神父様に渡すだけ。そして、私とルークは顔を見合わせ…。
婚約解消届けをびりっと破ってルークの転移魔法で教会から逃げた。
ー…
娘が、第一王子殿下と駆け落ちした。転移魔法まで使って。そう聞いて、心配より先によくやったと思ってしまった私は親失格なのだろう。
転移魔法は、もし失敗すれば見知らぬ土地に飛ばされてしまう恐ろしいものだ。それを承知で、二人で逃げた。なら私は二人を止めるつもりはない。娘が幸せならそれでいい。
妻と二人の息子も同じ考えらしい。いやはや、若いっていいねぇ。だが、たまには手紙が欲しいな。
…それから毎年、この日に限って一通の家族宛の手紙が届くようになり、私達はそれを楽しみにするようになった。
ー…
忌々しい第一王子が駆け落ちした。それを聞いて、私は笑った。平民の苦労を知らない温室育ちの第一王子が、公爵家のご令嬢を養えるわけがない。すぐに野垂れ死ぬだろう。
私はストレスが無くなったことで毎日穏やかに過ごせるようになった。…はずだった。
あれから毎日、私の子である第二王子や第三王子、第一王女が何故兄を追い詰めたのかと抗議してくる。アレを兄などと呼ぶなと何度言えばわかるのか。第一アレに心配など必要ないのに。国王陛下まで、お前が追い詰めた結果だと庇ってくださらない。
その内、第二王子や第三王子、第一王女は私の言うことを素直に聞かなくなった。さらに、それに私が怒ると〝ヒステリーを起こしやすくなった、何かの病かもしれない〟と離宮に押し込めて〝療養〟させられた。まさか実の子から裏切られるとは思わず、さらに国王陛下まで〝しばらく反省していろ〟と助けてくださらない。どうしてこうなったの?
ー…
「ルーク!おかえりなさい!」
「ただいま、リリ。お土産のプリンだよ」
「わあ!ありがとう!さっそくご飯の後一緒に食べましょう?」
「そうしようか」
私達は今、隣国の田舎で生活している。如何にも今駆け落ちしてきました、みたいな私達を村の人達は親切半分面白さ半分で保護してくれて、家と服と仕事をくれた。お陰で今は自立して、村の人達にお金を少しずつ返せているところ。
「大好きよ、ルーク」
「僕は愛してるよ、リリ」
こうして穏やかな幸せを手に入れた私達。互い以外の全てを捨てた、この恋の結末はハッピーエンド。互いがいれば、私達はそれだけで幸せなのだ。
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