5 / 14
花見
しおりを挟む
藤原兄妹が張り切って式神たちに準備を命じて、トントン拍子で花見の席は整った。
弁当も準備して、いざみんなでお花見!
となったわけだが。
「それで、そなたらの母はそんなにも美しかったのか」
「それはもう」
「独り占めを望んだ父の気持ちもわかると言うものです」
「それはもったいない。連れてくればよかったろうに」
「もう、奪われるのは御免ですから」
橘は己の主人に、どうして花見の席でそんな話題を選ぶのかと問いただしたくなった。
が、双子は特に嫌がる様子もなくそれに応じている。
「だが、そもそも何故逃げ出そうとした?母は奪われても片割れは一緒だったのだろう?」
「はい、僕もそう思ってましたよ?」
けれど、と若葉は続ける。
「僕も紅葉も母そっくりでしたから。父と趣味の似通った外道に危うく手篭めにされるところだったので」
「あー…」
「まあ、全部返り討ちにしてやりましたけど」
「だからあんなところ、早く出て行ってやろうと思ったんです」
双子のあまりの過去に言葉も出ない橘。
お館様に至ってははやくあいつ…双子の父である天下人をその地位から引きずり下ろさねばならぬと改めて決意する。
「次は僕たちも質問していいですかー!」
「よい、許す」
「お館様は宝物を集めてどうするのー?」
それは橘も気になっていたことだった。
「ふむ…いやなに、月の民と契約をしたのだ。この国の中でも珍しいと言われる宝物を集めて渡せば、我らに味方してくれると」
「月の民の技術はすごいからねー」
「武器提供してもらえるだけでも優位に立てるよねー」
「そもそも月の民が味方についたというだけで多くの人間が我らに寝返るでしょうね」
うんうん、と頷く双子と橘。
「月の民は我らと違い嘘はつかない。むやみに罪を重ねれば月を追い出されるからだ。だからこの約束も違えることはないだろう」
「そうだね」
「月の民なら大丈夫だと思う」
「では、我らはより努力して宝物を一刻も早く集めます」
「ああ、頼んだぞ」
お館様は双子の頭を撫でながら、橘に目線を寄越す。
「はい、お任せあれ」
「僕らもがんばりまーす!」
「お館様のお役に立てるよう努めまーす!」
お館様は穏やかに笑い、期待しているぞと三人を鼓舞した。
弁当も準備して、いざみんなでお花見!
となったわけだが。
「それで、そなたらの母はそんなにも美しかったのか」
「それはもう」
「独り占めを望んだ父の気持ちもわかると言うものです」
「それはもったいない。連れてくればよかったろうに」
「もう、奪われるのは御免ですから」
橘は己の主人に、どうして花見の席でそんな話題を選ぶのかと問いただしたくなった。
が、双子は特に嫌がる様子もなくそれに応じている。
「だが、そもそも何故逃げ出そうとした?母は奪われても片割れは一緒だったのだろう?」
「はい、僕もそう思ってましたよ?」
けれど、と若葉は続ける。
「僕も紅葉も母そっくりでしたから。父と趣味の似通った外道に危うく手篭めにされるところだったので」
「あー…」
「まあ、全部返り討ちにしてやりましたけど」
「だからあんなところ、早く出て行ってやろうと思ったんです」
双子のあまりの過去に言葉も出ない橘。
お館様に至ってははやくあいつ…双子の父である天下人をその地位から引きずり下ろさねばならぬと改めて決意する。
「次は僕たちも質問していいですかー!」
「よい、許す」
「お館様は宝物を集めてどうするのー?」
それは橘も気になっていたことだった。
「ふむ…いやなに、月の民と契約をしたのだ。この国の中でも珍しいと言われる宝物を集めて渡せば、我らに味方してくれると」
「月の民の技術はすごいからねー」
「武器提供してもらえるだけでも優位に立てるよねー」
「そもそも月の民が味方についたというだけで多くの人間が我らに寝返るでしょうね」
うんうん、と頷く双子と橘。
「月の民は我らと違い嘘はつかない。むやみに罪を重ねれば月を追い出されるからだ。だからこの約束も違えることはないだろう」
「そうだね」
「月の民なら大丈夫だと思う」
「では、我らはより努力して宝物を一刻も早く集めます」
「ああ、頼んだぞ」
お館様は双子の頭を撫でながら、橘に目線を寄越す。
「はい、お任せあれ」
「僕らもがんばりまーす!」
「お館様のお役に立てるよう努めまーす!」
お館様は穏やかに笑い、期待しているぞと三人を鼓舞した。
39
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
冷徹だと噂の公爵様は、妹君を溺愛してる
下菊みこと
ファンタジー
シスコンな兄様に愛されている公爵家の姫君のお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
恋愛方面には行かない。
ざまぁは添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
女公爵となってなんとか上手くやれるようになった矢先に弟が出来たんですが…可愛いからオールオッケー!!!
下菊みこと
ファンタジー
かなり年の差のある血の繋がった美少年な弟に、無事ブラコンになった姉のお話。
ブラコンですが恋愛感情には発展しません。姉の恋人は別にいます。
弟の方も無事シスコンになります。
ご都合主義のハッピーエンド、短いお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
【旧版】パーティーメンバーは『チワワ』です☆ミ
こげ丸
ファンタジー
===================
◆重要なお知らせ◆
本作はこげ丸の処女作なのですが、本作の主人公たちをベースに、全く新しい作品を連載開始しております。
設定は一部被っておりますが全く別の作品となりますので、ご注意下さい。
また、もし混同されてご迷惑をおかけするようなら、本作を取り下げる場合がございますので、何卒ご了承お願い致します。
===================
※第三章までで一旦作品としては完結となります。
【旧題:異世界おさんぽ放浪記 ~パーティーメンバーはチワワです~】
一人と一匹の友情と、笑いあり、涙あり、もう一回笑いあり、ちょこっと恋あり の異世界冒険譚です☆
過酷な異世界ではありますが、一人と一匹は逞しく楽しく過ごしているようですよ♪
そんなユウト(主人公)とパズ(チワワ)と一緒に『異世界レムリアス』を楽しんでみませんか?(*'▽')
今、一人と一匹のちょっと変わった冒険の旅が始まる!
※王道バトルファンタジーものです
※全体的に「ほのぼの」としているので楽しく読んで頂けるかと思っています
※でも、時々シリアスモードになりますのでご了承を…
=== こげ丸 ===
とりあえずこのアホをぶちのめすのが私の役割だと思った
下菊みこと
恋愛
王子のせいで傷ついた尊いお方は、私の大切な人だった。
ご都合主義のハッピーエンド、最終的にはハッピーな百合に着地するSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
幽霊が見える私、婚約者の祖父母(鬼籍)に土下座される
下菊みこと
恋愛
幽霊が見えちゃうお嬢様が、思わぬところから婚約者の浮気未遂を知るお話。
御都合主義のハッピーエンド。
短いお話ですが、軽いノリで読んでいただければ幸いです。
ざまぁは添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる