17 / 21
新たな飲み物との出会い
しおりを挟む「っ!!??」
無意識に呟いてしまった声が静先輩に聞こえたのか、思い切り肩を掴まれてベッドに押し倒された。
「弥桜っ、自分が何言ってるかわかってるのか‼︎ 本気でそんなこと思ってるなら、絶対に許さない」
静先輩の吐き出すような言葉と共に、ぎりぎりと掴まれた肩の力が強くなっていく。
「絶対・・・絶対にだ・・・・・・」
僕を凝視する目が、いつもの優しい静先輩じゃなかった。
何かにすごく怯えたような、今まで見たことない静先輩の気迫に何も言葉を返せない。
「いいか、お前が勝手に死ぬことは俺が許さない」
肩を掴んでいた静先輩の手が、首に移動してきてゆっくり力を込めた。
「・・・ぅぁ、かはっ・・・・・・」
「もう二度と勝手に死ぬなんて言うんじゃないぞ」
番避けの上から首を絞められて、どんどん息が苦しくなってくる。
今、まさに静先輩に僕の生死を握られてる。
もう僕の命は僕のものじゃないんだ。
完全に静先輩の手の中で、今このまま静先輩の気持ち一つで僕を殺せる。
不思議とその感覚に恐怖はなかった。
それくらい今の僕は静先輩に溺れきっていた。
もう息が出来ないくらい苦しくて返事をする余裕なんかない。
何だか意識もぼんやりしてきた。
本当にこのまま殺されるかもしれない。
そう思ったところで、完全に意識は途切れた。
次に気がついた時、部屋に静先輩の姿はなく発情期もまだ全然収まってなかった。
陽の光で明け方だと言うことはわかったけど、あれから何日経ったのかも、発情がどうしてこんな中途半端な状態なのかも、どうして静先輩がいないのかも何もわからない。
自宅だとしてもこんな薄暗い部屋に一人で、何より静先輩がいないことが徐々に意識を乱していく。
「静、先輩・・・・・・?」
発した声も部屋に反響して響くだけで、何の返事もない。
「静先輩・・・ぃやだ・・・・・・」
今度こそ本当に捨てられたかもしれない。
一度思い至るとどんどんその思考に支配されてきて怖くなる。
そんなことはないと思いたくて、震える手で急いで電話をかけた。
「・・・・・・弥桜? おはよう、気がついたか」
ワンコールで出てくれた静先輩の声は最後の記憶より落ち着いてて、いつもの静先輩だった。
その声を聞くだけでうるさいほど鳴っていた心臓の音が少し音無しくなる。
「静先輩、今どこにいるの・・・・・・?」
「今は家にいるよ。流石にあの状態で弥桜を抱くわけにはいかないから、特効薬と抑制剤使った。俺も頭冷やしたかったし、そこにいても二人とも辛いだけだから、それで一回帰ってきたんだ。弥桜が起きる前に戻るつもりだったんだよ」
静先輩の話しにようやく今の状況が理解できた。
発情期の状態も久しぶりの薬で感覚を忘れてたけど、今までは一週間かけてゆっくり落ち着かせていたんだった。
「今から行くから、もう一度薬飲んでおけ」
「早く来て」
静先輩には黙ってるけど、もう既に身体の嫌悪感がじわじわ襲ってきてて、薬を飲みに行ったり静先輩と話したりすることでそれをなんとか紛らわせようとしていた。
1
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる