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レーグル男爵領の立て直し
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「リュリュ」
「はい、アンディー様」
「なになに?面白い話?」
「プリュネ、僕も混ぜて」
「アンディー。もし何かあるなら俺も相談に乗ろう」
アンディーヴがプリュネに話しかけると、孤児院への慰問期間も終了し再び暇になったウィスタリアと、小説を書き上げて手持ち無沙汰の薊、弟可愛さにアンディーヴの部屋に入り浸るレルザンまで混ざってくる。
「実は、レーグル男爵領が最近貧困に喘いでいるようなのです。特に税率を上げたわけでもないのにここ数年で急に…。今のサパン男爵が男爵領を継いですぐなのが気になります。少し様子を見てこようと思いますので、留守をお願いします」
「え?アンディー様自ら行かれるのですか?」
「アンディーだけじゃ心配ー。俺も行くよ!」
「可愛い弟を一人では行かせられない。俺も行こう」
「小説のネタになるかもしれないから僕も行く」
「なら私も行きます」
「…危ないかも知れないのに、君たちを連れて行けません」
「危ないかも知れないから、連れて行ってください!」
「そうだそうだー!」
「…はぁ。仕方ありませんね」
そうして五人はレーグル男爵の屋敷に向かった。通り掛かりに見るレーグル男爵領の村は寂れていた。が、畑には意外にも休耕地がある。もし作物が取れないことで貧困に繋がっているなら、休耕地などないはずだ。土地の持ち主に頭を下げてでも作物を作るのに利用する。つまり貧困の理由は作物の不足ではないということだ。
「…」
「アンディー様?」
「やはりおかしい。…まさか」
「アンディー。もしその予想が当たっているのなら、最悪サパン殿は俺たちを消そうとするかもしれないな?」
「はい、兄上」
「んー?ああ、もしかして国に内緒で税率を上げてるかもってこと?」
「は?…そんな度胸のある男爵がいるの?プリエールでは大罪だよね?」
「サパン殿はあまりこう…賢いタイプではないから、あり得ないとは言えないな」
「え?じゃあどうするんですか?」
「もしやらかしたなら、捕まえて裁判にかけてレーグル男爵領は取り上げます。レーグル男爵領は信頼できる貴族に預けることになりますね」
「あらまあ…」
「プリュネ。心配なら占ってみたら?」
「では水晶占いで…。…あ」
「どうしました?リュリュ」
「皆様、絶対に紅茶と茶菓子には手を付けないでください。毒入りです」
「僕だけならともかく、皇家の人…それも皇太子殿下にまで毒を盛るとか…頭悪…」
「頭の良い人は最初から不正しないからねぇ」
レーグル男爵の屋敷に着くと、たかが男爵家とは思えないほどの豪奢な屋敷があった。
「…あらまあ」
「勝手に税率を上げて、贅沢してる可能性大だね!わっかりやすーい!」
「やっぱ貴族ってこういうのが多いの?」
「一部の人だけですよ、薊」
「ふむ。俺から行こう」
レルザンが門番に身分を明かし話をつけた。すぐに屋敷に通され、サパンが五人を出迎える。
「ようこそお越しくださいました、皇太子殿下、第二皇子殿下。是非ごゆるりと過ごしください」
「いえ。今日はこのレーグル男爵領の貧困問題について話をしに来ただけですので」
「とりあえず中へどうぞ」
応接間に通され、紅茶と茶菓子を出される。どれも最高級品だ。皆顔を見合わせて頷く。誰も紅茶や茶菓子に手をつけない。
「…サパン男爵。貴方が男爵領を継いでから急に貧困問題が持ち上がりました。どういうことです」
「すみません。私達も努力しているのですが、作物の不作が続いてしまったもので…」
「ダウト。ここに来るまでに馬車から村の様子を見たけどねー、休耕地見つけちゃった!」
「本当に作物の不作が理由なら、休耕地なんてないはずだよね、男爵様」
「嘘は良くないと思います!」
「サパン男爵。覚悟なさい」
「残念だ、サパン殿。…拘束させてもらう」
「くっ…。こ、こうなったら!」
サパンが応接間に飾ってある剣を持ち出してレルザンを刺そうと走り出す。しかし、ウィスタリアが指パッチンするとその剣が粉々になる。
「な、何故!」
「大人しくしなよ、おっさん」
薊がすかさずサパンを取り押さえる。小柄ながら、孤児院育ちだけあって力は強いらしい。
「この、離せ、異国の汚らわしい獣め!」
「…ふん」
「薊くんを悪く言わないでください!」
「別にいいよ、プリュネ。こんな奴の言うことなんか気にしない。プリュネ達が僕を受け入れてくれたんだから」
「薊くん…!」
プリュネが薊の言葉に目を潤ませる。その間にアンディーヴが使い魔を送り近くの治安部隊に応援を要請。あっという間にご用となった。
「…終わりましたね」
「あー、怪我人出なくて良かったぁ」
「ウィスタリア殿下と薊くんのお陰ですね!」
「まあねー」
「僕は押さえつけただけだから」
「十分な働きでしたよ、薊」
「薊は強いな」
「皇太子殿下に褒められると照れます…」
そんなこんなでレーグル男爵領は取り上げられ、信頼のおける侯爵に預けられた。そうするとすぐに貧困から持ち直せたのだった。
「はい、アンディー様」
「なになに?面白い話?」
「プリュネ、僕も混ぜて」
「アンディー。もし何かあるなら俺も相談に乗ろう」
アンディーヴがプリュネに話しかけると、孤児院への慰問期間も終了し再び暇になったウィスタリアと、小説を書き上げて手持ち無沙汰の薊、弟可愛さにアンディーヴの部屋に入り浸るレルザンまで混ざってくる。
「実は、レーグル男爵領が最近貧困に喘いでいるようなのです。特に税率を上げたわけでもないのにここ数年で急に…。今のサパン男爵が男爵領を継いですぐなのが気になります。少し様子を見てこようと思いますので、留守をお願いします」
「え?アンディー様自ら行かれるのですか?」
「アンディーだけじゃ心配ー。俺も行くよ!」
「可愛い弟を一人では行かせられない。俺も行こう」
「小説のネタになるかもしれないから僕も行く」
「なら私も行きます」
「…危ないかも知れないのに、君たちを連れて行けません」
「危ないかも知れないから、連れて行ってください!」
「そうだそうだー!」
「…はぁ。仕方ありませんね」
そうして五人はレーグル男爵の屋敷に向かった。通り掛かりに見るレーグル男爵領の村は寂れていた。が、畑には意外にも休耕地がある。もし作物が取れないことで貧困に繋がっているなら、休耕地などないはずだ。土地の持ち主に頭を下げてでも作物を作るのに利用する。つまり貧困の理由は作物の不足ではないということだ。
「…」
「アンディー様?」
「やはりおかしい。…まさか」
「アンディー。もしその予想が当たっているのなら、最悪サパン殿は俺たちを消そうとするかもしれないな?」
「はい、兄上」
「んー?ああ、もしかして国に内緒で税率を上げてるかもってこと?」
「は?…そんな度胸のある男爵がいるの?プリエールでは大罪だよね?」
「サパン殿はあまりこう…賢いタイプではないから、あり得ないとは言えないな」
「え?じゃあどうするんですか?」
「もしやらかしたなら、捕まえて裁判にかけてレーグル男爵領は取り上げます。レーグル男爵領は信頼できる貴族に預けることになりますね」
「あらまあ…」
「プリュネ。心配なら占ってみたら?」
「では水晶占いで…。…あ」
「どうしました?リュリュ」
「皆様、絶対に紅茶と茶菓子には手を付けないでください。毒入りです」
「僕だけならともかく、皇家の人…それも皇太子殿下にまで毒を盛るとか…頭悪…」
「頭の良い人は最初から不正しないからねぇ」
レーグル男爵の屋敷に着くと、たかが男爵家とは思えないほどの豪奢な屋敷があった。
「…あらまあ」
「勝手に税率を上げて、贅沢してる可能性大だね!わっかりやすーい!」
「やっぱ貴族ってこういうのが多いの?」
「一部の人だけですよ、薊」
「ふむ。俺から行こう」
レルザンが門番に身分を明かし話をつけた。すぐに屋敷に通され、サパンが五人を出迎える。
「ようこそお越しくださいました、皇太子殿下、第二皇子殿下。是非ごゆるりと過ごしください」
「いえ。今日はこのレーグル男爵領の貧困問題について話をしに来ただけですので」
「とりあえず中へどうぞ」
応接間に通され、紅茶と茶菓子を出される。どれも最高級品だ。皆顔を見合わせて頷く。誰も紅茶や茶菓子に手をつけない。
「…サパン男爵。貴方が男爵領を継いでから急に貧困問題が持ち上がりました。どういうことです」
「すみません。私達も努力しているのですが、作物の不作が続いてしまったもので…」
「ダウト。ここに来るまでに馬車から村の様子を見たけどねー、休耕地見つけちゃった!」
「本当に作物の不作が理由なら、休耕地なんてないはずだよね、男爵様」
「嘘は良くないと思います!」
「サパン男爵。覚悟なさい」
「残念だ、サパン殿。…拘束させてもらう」
「くっ…。こ、こうなったら!」
サパンが応接間に飾ってある剣を持ち出してレルザンを刺そうと走り出す。しかし、ウィスタリアが指パッチンするとその剣が粉々になる。
「な、何故!」
「大人しくしなよ、おっさん」
薊がすかさずサパンを取り押さえる。小柄ながら、孤児院育ちだけあって力は強いらしい。
「この、離せ、異国の汚らわしい獣め!」
「…ふん」
「薊くんを悪く言わないでください!」
「別にいいよ、プリュネ。こんな奴の言うことなんか気にしない。プリュネ達が僕を受け入れてくれたんだから」
「薊くん…!」
プリュネが薊の言葉に目を潤ませる。その間にアンディーヴが使い魔を送り近くの治安部隊に応援を要請。あっという間にご用となった。
「…終わりましたね」
「あー、怪我人出なくて良かったぁ」
「ウィスタリア殿下と薊くんのお陰ですね!」
「まあねー」
「僕は押さえつけただけだから」
「十分な働きでしたよ、薊」
「薊は強いな」
「皇太子殿下に褒められると照れます…」
そんなこんなでレーグル男爵領は取り上げられ、信頼のおける侯爵に預けられた。そうするとすぐに貧困から持ち直せたのだった。
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