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ウィスタリア王子の目標
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「ウィスタリア殿下は、教皇になったら何をなさりたいのですか?」
「え?」
教皇になったら何をしたいか。考えたこともなかった。
「好きで教皇になるわけじゃないから…今のところは特になにもないかな」
そもそも教皇になると自由に動くことは難しいだろう。色々制限ばかりが掛かる。
「え?でも、教皇って誰でもなれるわけじゃないですよね?せっかく教皇になれるんですから何か目標がある方がいいですよ!」
…。まあ、確かにそれも一理ある。自分は『ウィスタリア』という名前も、何れ教皇になるという立場も、煩わしく思う。神祖という亡霊が自分に引っ付いて離れない感覚が、堪らなく嫌だった。しかも、自分は所謂先祖返り。藍色の髪も、赤い瞳も、神祖ウィスタリアの生まれ変わりではないかと言われる。そんなことを言われて喜ぶはずがないのに。…でも、一方で一つ上の兄は教皇になる自分を羨む。人から嫉妬されるほど恵まれているのも確か。ならば、教皇になる以上なにか目標はあった方が楽しいかもしれない。
「目標かぁ…うーん…プリュネちゃんはなにがいいと思う?」
「もし思いつかないなら、言霊タロットで占ってみますか?」
「言霊タロット?」
「はい。普通のタロットとは違って、言葉が書いてあって、それで占うんです」
「なるほど。いいね、面白そう!」
ウィスタリアはあくまでもエンターテイメントとして占いを楽しむつもりだが、プリュネは真剣そのものなのでちょっとだけ他の人に占ってもらう時よりわくわくする。
「…では、ここから一枚選んでください」
「じゃあ、これ」
「自己実現のカードが出ました」
「自己実現?…へー」
神祖ウィスタリアにぴったりと張り付かれた自分の、今後の目標には確かに良いかもしれない。教皇という立場がそれを許してくれるとは思えないが。
「あはは。ありがとう、プリュネちゃん。それなりに頑張ってみるよ」
「はい!ウィスタリア様らしい教皇像を是非打ち立ててくださいませ!」
「?俺らしい教皇像?」
「はい。教皇になったら自己実現されるのでしょう?」
「へー、なるほど。プライベートではなく教皇として自己実現。あはは、なんだそれ!…でも、面白そう」
今後の自分の人生は教皇の枠に押し込められるモノだと思っていたけど、怒られない範囲で好き勝手するくらいは出来るかも知れない。例えば、今の趣味は孤児院の子供達の遊び相手だが、それを教皇になった後も続けるのはどうだろう。そのくらいならいいんじゃないだろうか?他にも前例はなくとも、許されることはいくつもあるかもしれない。まだ、人生を諦めなくてもいいかもしれない。
「…ありがとう、プリュネちゃん。俺、本当に頑張るよ」
「はい!応援してます!」
ああ、なるほど。アンディーが気に入るわけだ。素直で純粋で、こんなに可愛らしい。アンディーのお気に入りじゃなければちょっかいをかけているところだ。
「それにしてもお菓子美味しいですね」
「本当だね」
二人きりで会話する機会なんてこれから先そうそうないわけだし、今のうちに楽しんでおこう。
「え?」
教皇になったら何をしたいか。考えたこともなかった。
「好きで教皇になるわけじゃないから…今のところは特になにもないかな」
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「え?でも、教皇って誰でもなれるわけじゃないですよね?せっかく教皇になれるんですから何か目標がある方がいいですよ!」
…。まあ、確かにそれも一理ある。自分は『ウィスタリア』という名前も、何れ教皇になるという立場も、煩わしく思う。神祖という亡霊が自分に引っ付いて離れない感覚が、堪らなく嫌だった。しかも、自分は所謂先祖返り。藍色の髪も、赤い瞳も、神祖ウィスタリアの生まれ変わりではないかと言われる。そんなことを言われて喜ぶはずがないのに。…でも、一方で一つ上の兄は教皇になる自分を羨む。人から嫉妬されるほど恵まれているのも確か。ならば、教皇になる以上なにか目標はあった方が楽しいかもしれない。
「目標かぁ…うーん…プリュネちゃんはなにがいいと思う?」
「もし思いつかないなら、言霊タロットで占ってみますか?」
「言霊タロット?」
「はい。普通のタロットとは違って、言葉が書いてあって、それで占うんです」
「なるほど。いいね、面白そう!」
ウィスタリアはあくまでもエンターテイメントとして占いを楽しむつもりだが、プリュネは真剣そのものなのでちょっとだけ他の人に占ってもらう時よりわくわくする。
「…では、ここから一枚選んでください」
「じゃあ、これ」
「自己実現のカードが出ました」
「自己実現?…へー」
神祖ウィスタリアにぴったりと張り付かれた自分の、今後の目標には確かに良いかもしれない。教皇という立場がそれを許してくれるとは思えないが。
「あはは。ありがとう、プリュネちゃん。それなりに頑張ってみるよ」
「はい!ウィスタリア様らしい教皇像を是非打ち立ててくださいませ!」
「?俺らしい教皇像?」
「はい。教皇になったら自己実現されるのでしょう?」
「へー、なるほど。プライベートではなく教皇として自己実現。あはは、なんだそれ!…でも、面白そう」
今後の自分の人生は教皇の枠に押し込められるモノだと思っていたけど、怒られない範囲で好き勝手するくらいは出来るかも知れない。例えば、今の趣味は孤児院の子供達の遊び相手だが、それを教皇になった後も続けるのはどうだろう。そのくらいならいいんじゃないだろうか?他にも前例はなくとも、許されることはいくつもあるかもしれない。まだ、人生を諦めなくてもいいかもしれない。
「…ありがとう、プリュネちゃん。俺、本当に頑張るよ」
「はい!応援してます!」
ああ、なるほど。アンディーが気に入るわけだ。素直で純粋で、こんなに可愛らしい。アンディーのお気に入りじゃなければちょっかいをかけているところだ。
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「本当だね」
二人きりで会話する機会なんてこれから先そうそうないわけだし、今のうちに楽しんでおこう。
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