上 下
11 / 21

ウィスタリア王子の暇つぶし

しおりを挟む
今日はプリュネの休日である。しかしながらプリュネにとって休みはつまらない。暇である。誰かを占える仕事がある日の方が楽しい。暇を持て余しているプリュネの部屋に、誰かが訪ねてきた。

「はい…ウィスタリア殿下?」

「やあ!プリュネちゃん。今日はレンもアンディーも公務で忙しくてさぁ。暇なんだよね。一緒にお茶でもどう?中庭で」

「よろしいのですか?是非!」

同じく暇を持て余していたウィスタリアからの誘いはとてもありがたい。プリュネは二つ返事で了承した。

中庭に移動すると薔薇が咲き誇っている。椅子とテーブルが用意されていて、その上には高価な紅茶とお菓子ばかり。すぐにプリュネは上機嫌になり、それを見てウィスタリアは少し笑った。歳下なのもあるだろうけれど、少しばかり子供っぽいプリュネが可愛らしい。

「なんの話をしようかな…うーん」

あまりに刺激的な話をこの娘と二人きりの時にすると友達二人に怒られそうな気もする。さてどうしたものか。

「そういえば、プローディギウム聖国の神話はとても面白いと聞きました!」

「…。プローディギウムに興味があるの?嬉しいな」

ウィスタリアは少し悩んだが話に乗ることにした。

「はい!どんなお話なのでしょうか?」

「じゃあ、お話しようか。そうだ!宗教画もあるんだよね。見ながら説明しようか」

「はい!ありがとうございます!」

ウィスタリアがプリュネに宗教画を見せながら説明したプローディギウム教の神話はこの様なものだ。

プローディギウムの神祖、『ウィスタリア』は神と人の合いの子。彼は他の神々との争いの末にプローディギウムの土地を手に入れ、プローディギウム聖国を興す。すると主神が『ウィスタリア』に奇跡を起こす力を祝福として与えた。そのため『ウィスタリア』の子孫は奇跡を起こす力を持つ神の子とされる。

『ウィスタリア』の子孫であるプローディギウム聖国には、他の神々との軋轢のため様々な天災が降り注ぐが、必ず王家から出家したプローディギウム教の教皇が全ての民を奇跡の力で救うのだ。教皇となるのは必ずその代で五番目に生まれる王家の男子。名前は必ず『ウィスタリア』と付けられる。

「カッコいい神話ですね!ウィスタリア殿下!」

「そう?」

「はい!特に教皇様のご活躍とか!」

「…実際にはそんないいもんじゃないけど、そう言われて嫌な気持ちにはならないね」

ウィスタリアは目をキラキラさせて喜ぶプリュネに少しだけ救われる気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

処理中です...