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レルザン皇太子の星獣
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アンディーヴがプリュネに嫌がらせをした侍女達を解任してから更に数日。ルレザンが慌てた様子でプリュネを訪ねてアンディーヴの部屋に来た。
「兄上。急にどうしました?…兄上?」
「アンディー、プリュネ嬢!頼む、ティグロンを助けてくれ!」
「…はい?」
「星獣様に何かあったのですか?」
「何者かがティグロンの餌に瘴気を封じ込めたカプセルを混ぜたらしい!」
「え…!?」
「なっ…なんて罰当たりな!兄上、犯人は!」
「わからない…今はティグロンの治癒が先だ!とりあえず宮廷魔術師達に治癒して貰っているが、星獣に瘴気は命取り。頼む、プリュネ嬢。礼なら弾む。ティグロンを回復させる方法を占ってくれないか…頼む…」
「分かりました!鏡占いをしましょう!」
「鏡占い…?」
「こちら、東洋より取り寄せた特別な鏡です!こちらをよく見てください!」
「これが鏡…?顔が映らないが…」
「いいから!それを見続けて浮かんだイメージが答えです!」
「浮かんだイメージが?…。…銀に近い金?糸…か何かか?」
「…!レルザン皇太子殿下!私を星獣様の元へ!」
「え?」
「早く!」
「兄上。ティグロンの居場所は?」
「中庭だ」
「兄上、リュリュ。テレポートします。僕の手を掴んで」
「はい!」
「テレポートってお前…魔力の消費量が…!」
「兄上!いいから早く!」
「…っ、すまない!」
魔法でテレポートした三人。近くで宮廷魔術師達がティグロンを治癒している。…が、効果は今ひとつのようで、ティグロンが衰弱してきているのがわかる。それでもティグロンは、レルザンを見つけると嬉しそうに甘えに行く。が、足取りがフラフラとして覚束ない。
「ティグロン…!」
レルザンはすぐにティグロンに駆け寄る。そしてプリュネは…女性の命とも呼べる、自分の銀に近い金色の髪を戸惑いなく切って、アンディーヴに差し出した。アンディーヴはプリュネに頷いてみせて、ティグロンに駆け寄る。そしてプリュネの髪を…ティグロンの口に思い切り突っ込んだ。
「な!アンディー!?」
「大丈夫です。兄上。僕とリュリュを信じて」
「…わかった」
誰もが怪訝そうにしながらも見守る中、プリュネは一生懸命に自らの髪に魔力を込める呪文を唱えていた。そして、ティグロンは…。
「かはっ…!」
髪の毛の塊を吐き出した。そしてその髪には…瘴気が絡みついていた。
「これは…」
「がーう!」
急激に元気を取り戻すティグロンに、宮廷魔術師達は治癒魔法を止める。するとティグロンはレルザンにいつものようにじゃれついた。
「…よかった。アンディーヴ、プリュネ嬢。ありがとう…!?」
アンディーヴ以外の誰もがプリュネが髪を切っていたのに気付いていなかった。それどころではなかったからだ。しかし気付いて見れば一大事。女性の命とも呼べる髪を短く切ってしまったのだ。もちろん何においても星獣の命の方が優先される。されるのだが…。
「リュリュ!?その髪どうした!?」
「ああ…僕らのお姫様の美しい髪が…」
「リュリュ、まさかあの髪リュリュの!?」
兄達は絶望感に溢れる顔をしていた。他の宮廷魔術師達もさすがに気まずそうである。レルザンに至っては顔面蒼白だ。
「す、すまない…、必要なこと、だったのだろうか…すまない…」
「いえ、星獣様が助かってよかったです!瘴気が魔力の溢れる女性の身体に吸い寄せられやすくてよかった!」
「な、なるほど、その性質を利用して助けてくれたのだな…ありがとう…すまない…」
「いえいえ。アンディー様、すぐに理解してくれて助かりました!」
「君がそこまでの覚悟を決めてくれたのです。当然です」
アンディーヴがプリュネの頭を撫でる。プリュネは気持ち良さそうに目を細める。プリュネの兄達がアンディーヴを敵意のこもった目で睨みつけ、レルザンがその鋭い視線から弟をそっと守った。
「兄上。急にどうしました?…兄上?」
「アンディー、プリュネ嬢!頼む、ティグロンを助けてくれ!」
「…はい?」
「星獣様に何かあったのですか?」
「何者かがティグロンの餌に瘴気を封じ込めたカプセルを混ぜたらしい!」
「え…!?」
「なっ…なんて罰当たりな!兄上、犯人は!」
「わからない…今はティグロンの治癒が先だ!とりあえず宮廷魔術師達に治癒して貰っているが、星獣に瘴気は命取り。頼む、プリュネ嬢。礼なら弾む。ティグロンを回復させる方法を占ってくれないか…頼む…」
「分かりました!鏡占いをしましょう!」
「鏡占い…?」
「こちら、東洋より取り寄せた特別な鏡です!こちらをよく見てください!」
「これが鏡…?顔が映らないが…」
「いいから!それを見続けて浮かんだイメージが答えです!」
「浮かんだイメージが?…。…銀に近い金?糸…か何かか?」
「…!レルザン皇太子殿下!私を星獣様の元へ!」
「え?」
「早く!」
「兄上。ティグロンの居場所は?」
「中庭だ」
「兄上、リュリュ。テレポートします。僕の手を掴んで」
「はい!」
「テレポートってお前…魔力の消費量が…!」
「兄上!いいから早く!」
「…っ、すまない!」
魔法でテレポートした三人。近くで宮廷魔術師達がティグロンを治癒している。…が、効果は今ひとつのようで、ティグロンが衰弱してきているのがわかる。それでもティグロンは、レルザンを見つけると嬉しそうに甘えに行く。が、足取りがフラフラとして覚束ない。
「ティグロン…!」
レルザンはすぐにティグロンに駆け寄る。そしてプリュネは…女性の命とも呼べる、自分の銀に近い金色の髪を戸惑いなく切って、アンディーヴに差し出した。アンディーヴはプリュネに頷いてみせて、ティグロンに駆け寄る。そしてプリュネの髪を…ティグロンの口に思い切り突っ込んだ。
「な!アンディー!?」
「大丈夫です。兄上。僕とリュリュを信じて」
「…わかった」
誰もが怪訝そうにしながらも見守る中、プリュネは一生懸命に自らの髪に魔力を込める呪文を唱えていた。そして、ティグロンは…。
「かはっ…!」
髪の毛の塊を吐き出した。そしてその髪には…瘴気が絡みついていた。
「これは…」
「がーう!」
急激に元気を取り戻すティグロンに、宮廷魔術師達は治癒魔法を止める。するとティグロンはレルザンにいつものようにじゃれついた。
「…よかった。アンディーヴ、プリュネ嬢。ありがとう…!?」
アンディーヴ以外の誰もがプリュネが髪を切っていたのに気付いていなかった。それどころではなかったからだ。しかし気付いて見れば一大事。女性の命とも呼べる髪を短く切ってしまったのだ。もちろん何においても星獣の命の方が優先される。されるのだが…。
「リュリュ!?その髪どうした!?」
「ああ…僕らのお姫様の美しい髪が…」
「リュリュ、まさかあの髪リュリュの!?」
兄達は絶望感に溢れる顔をしていた。他の宮廷魔術師達もさすがに気まずそうである。レルザンに至っては顔面蒼白だ。
「す、すまない…、必要なこと、だったのだろうか…すまない…」
「いえ、星獣様が助かってよかったです!瘴気が魔力の溢れる女性の身体に吸い寄せられやすくてよかった!」
「な、なるほど、その性質を利用して助けてくれたのだな…ありがとう…すまない…」
「いえいえ。アンディー様、すぐに理解してくれて助かりました!」
「君がそこまでの覚悟を決めてくれたのです。当然です」
アンディーヴがプリュネの頭を撫でる。プリュネは気持ち良さそうに目を細める。プリュネの兄達がアンディーヴを敵意のこもった目で睨みつけ、レルザンがその鋭い視線から弟をそっと守った。
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