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アンディーヴ第二皇子
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アンディーヴ・プリエール。プリエール皇国が第二皇子にして、神童と称えられた人。輝く金色の髪と、深い青の瞳、恐ろしさすら感じる程の整った顔立ちを持つ。人の感情を読むのが得意で、誰に対しても丁寧な敬語を使う。やや美しすぎるものの、その優しげな表情にときめく女性は数知れず。神童と称えられただけあって、知識の量は誰にも負けない。魔術や芸術、運動への適性もある。一時期は兄であるレルザン第一皇子を退けて皇太子になるのではないかと噂されたほどである。では何故その話が無くなったのか。
レルザンが、星獣ティグロンと契約した為である。星獣とは、聖獣の中でも特に力の強い獣であり、瑞兆として姿を現わす。そのため、優れた能力を持つアンディーヴを抑えてレルザンが皇太子に選ばれた。
レルザンは残念ながら凡人である。見た目こそアンディーヴと並ぶほど美しいが、それ以外では何も勝てるところがない、とは誰の言葉だっただろうか。そんな兄に初めて負けたアンディーヴは、しかし絶対負けてはならないところで負けを突きつけられて…グレた。それが捻くれ王子と揶揄される理由である。グレたと言っても別に皇族としての務めを放棄したり、手を出してはいけない分野に手を出したりした訳ではない。ただ、公務以外では引きこもって、周りに毒を吐くようになっただけである。あと、偶に危なくない物を投げたりする。クッションとか。年齢の割に可愛い反抗である。
「アンディー」
「なんですか、兄上。僕に構わないでください。皇太子としての務めを果たすことの方が大切でしょう」
「だが、アンディー。日の光を浴びないと…」
「うるさい!」
アンディーヴが部屋のドアの前で話しかけてくるレルザンに向けて枕を投げつける。もちろんドアに当たる。レルザンはその気配を感じて黙り込む。
「…公務がある時には、日の光も浴びています」
「…アンディー、俺は」
「兄上、もう僕に構わないでください」
アンディーヴはドアの前の兄を帰すことに一生懸命だ。だから、そんな格好の悪いところを一人の少女に見られていることなど知らない。
「大体、何で今日はそんなにしつこいのです。いつもなら一言二言話してすぐに帰るのに」
「それは…」
「私のせいです…すみません、レルザン皇太子殿下、アンディーヴ第二皇子殿下」
「!?誰ですか!」
「ご挨拶が遅れてすみません。プリュネ・ディヴィナシオンと申します。本日より宮廷占い師としてアンディーヴ第二皇子殿下をお支えすることとなりました。よろしくお願いします」
「ああ…母上が何か言ってましたね…占い師など僕には結構。帰りなさい」
「アンディー。プリュネ嬢はお前を支えるために皇宮に呼ばれたんだ。彼女の仕事を奪ってやるな」
「知りませんよそんな娘の都合。兄上の専属にすれば良い。兄上は皇太子なんですから、宮廷占い師も必要でしょう?所詮僕はただの第二皇子。僕には必要ないのです」
「アンディー…」
「いえ、そんなことはありません!」
「…王子たる僕の言葉を否定するのですか?」
「はい!」
プリュネはアンディーヴに真摯に話しかける。
「はい…って…君…」
「占いというのはどんな方にも必ず温かく寄り添うモノです。その方の人生を側で支えるモノなのです!どうか、一度でもいいので占わせてくださいませ。アンディーヴ第二王子殿下の支えになりたいのです!」
「…」
アンディーヴが部屋のドアを開く。
「アンディー!」
「君だけなら入ってもいい。兄上はこっちを見ないで、さっさと帰ってください」
アンディーヴはレルザンを適当にあしらいプリュネだけを部屋に招く。
「さて…占いでしたね」
「はい、何を占いましょうか?」
「では…」
レルザンが、星獣ティグロンと契約した為である。星獣とは、聖獣の中でも特に力の強い獣であり、瑞兆として姿を現わす。そのため、優れた能力を持つアンディーヴを抑えてレルザンが皇太子に選ばれた。
レルザンは残念ながら凡人である。見た目こそアンディーヴと並ぶほど美しいが、それ以外では何も勝てるところがない、とは誰の言葉だっただろうか。そんな兄に初めて負けたアンディーヴは、しかし絶対負けてはならないところで負けを突きつけられて…グレた。それが捻くれ王子と揶揄される理由である。グレたと言っても別に皇族としての務めを放棄したり、手を出してはいけない分野に手を出したりした訳ではない。ただ、公務以外では引きこもって、周りに毒を吐くようになっただけである。あと、偶に危なくない物を投げたりする。クッションとか。年齢の割に可愛い反抗である。
「アンディー」
「なんですか、兄上。僕に構わないでください。皇太子としての務めを果たすことの方が大切でしょう」
「だが、アンディー。日の光を浴びないと…」
「うるさい!」
アンディーヴが部屋のドアの前で話しかけてくるレルザンに向けて枕を投げつける。もちろんドアに当たる。レルザンはその気配を感じて黙り込む。
「…公務がある時には、日の光も浴びています」
「…アンディー、俺は」
「兄上、もう僕に構わないでください」
アンディーヴはドアの前の兄を帰すことに一生懸命だ。だから、そんな格好の悪いところを一人の少女に見られていることなど知らない。
「大体、何で今日はそんなにしつこいのです。いつもなら一言二言話してすぐに帰るのに」
「それは…」
「私のせいです…すみません、レルザン皇太子殿下、アンディーヴ第二皇子殿下」
「!?誰ですか!」
「ご挨拶が遅れてすみません。プリュネ・ディヴィナシオンと申します。本日より宮廷占い師としてアンディーヴ第二皇子殿下をお支えすることとなりました。よろしくお願いします」
「ああ…母上が何か言ってましたね…占い師など僕には結構。帰りなさい」
「アンディー。プリュネ嬢はお前を支えるために皇宮に呼ばれたんだ。彼女の仕事を奪ってやるな」
「知りませんよそんな娘の都合。兄上の専属にすれば良い。兄上は皇太子なんですから、宮廷占い師も必要でしょう?所詮僕はただの第二皇子。僕には必要ないのです」
「アンディー…」
「いえ、そんなことはありません!」
「…王子たる僕の言葉を否定するのですか?」
「はい!」
プリュネはアンディーヴに真摯に話しかける。
「はい…って…君…」
「占いというのはどんな方にも必ず温かく寄り添うモノです。その方の人生を側で支えるモノなのです!どうか、一度でもいいので占わせてくださいませ。アンディーヴ第二王子殿下の支えになりたいのです!」
「…」
アンディーヴが部屋のドアを開く。
「アンディー!」
「君だけなら入ってもいい。兄上はこっちを見ないで、さっさと帰ってください」
アンディーヴはレルザンを適当にあしらいプリュネだけを部屋に招く。
「さて…占いでしたね」
「はい、何を占いましょうか?」
「では…」
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