3 / 3
蛇足かもしれないその後の話
しおりを挟む
兄様に、旦那様と話し合うと宣言した。
そして今、旦那様に時間を作ってもらって話し合いの席を設けた。
「旦那様、私…」
「本当にすまなかった」
旦那様は私に謝る。
それはなんの謝罪だろうか。
「君に我慢を強いて、人助けもなにもあったものじゃない。証明のしようはないが、本当に俺は従妹に…オーギュスティナに下心はなかった。でも、君に嫌な思いをさせたこともようやく身に染みてわかった」
「そうですか…」
結婚してから、二年。
たった二年だが、されども二年。
私もこれまで意地を張っていたのだが、旦那様が毎日死んだような顔をして私に謝ってきたり愛人をあてがおうとしても拒否したりするのでそろそろ気持ちが落ち着いてきた。
仕返しとしては、もう十分だと思えた。
「…ええ、認めましょう。たしかに旦那様はティナ様を愛人にする気はなくて、それに新しい愛人も欲していない」
「…!」
「それでも、壊れた愛情は元には戻らない。昔のような純粋な思いで貴方を愛することは私にはできない」
「レナ…そんなことを君に言わせたのは俺だ、本当にすまない…」
「…もう、いいです。いいんです。だから…夫婦関係を、やり直しましょう」
私の言葉に旦那様は驚く。
離縁を迫られるとでも思っていたらしい。
「え、離縁したい…のではなく?」
「まあ正直それも考えましたが、家同士の利益ある結婚に水を差すのもあれですし…私もこの二年でだいぶ病んでいた心も回復しましたし」
「そうか…君を追い詰めてしまって本当に申し訳なかった」
「この二年で十分謝罪は受けました。もうこれ以上は謝らないでよろしい。…私も、たくさん意地を張って意地悪をしたのですから。これでトントンです」
「レナ…!」
彼に重要な提案をするのはここから。
受け入れてくれるなら、もう一度真剣に彼と向き合おう。
「なので、夫婦として…その前に人としてもう一度お互いにきちんと向き合いましょう」
「ありがとう、レナ…!」
「けれど…夜の方は、私が完全に貴方を許し受け止められるようになるまで絶対強要しないでください。夫婦としてやり直しますが、きちんとやり直せるまで夫婦の触れ合いは禁止です。…よろしい?」
「!!!…もちろんだ。いくらでも待つ」
覚悟の決まった顔で頷く彼。
私たちはこの日を機に夫婦関係をやり直し始めた。
それからさらに三年。
朗報が届いた。
義兄に捕まっていたらしいティナ様だが、義兄が急逝したらしい。
ティナ様がなにかしたとかでもなく、ただただ偶然に偶然が重なっての避けようのない事後だったらしい。
可哀想なことだが、天罰だと思ってしまう。その義兄が全ての元凶なのだから。
「ティナ様は自由になったのですね」
「ああ。今は遺産を使ってお一人様を満喫している。君にも改めての謝罪の手紙が来ているが、読むか?」
「はい」
受け取ったのは長い手紙。そこには本当に当時下心はなかったこと、傷つけてしまったことへの心からの謝罪。そして近況が書いてあった。
旦那様と夫婦関係をやり直してだいぶ経ち、今では下心はなかったことも受け止められるし謝罪も心にスッと入ってきた。
そして未亡人となった彼女は、生活に困ることもなく今では一応ちゃんと自立して幸せだと知って…正直ほっとする自分がいた。
私が意地を張って愛人呼ばわりしたことで彼女は家を出て、結果全ての元凶たる義兄に捕まってしまったとどこか罪悪感を感じていたから。
ちなみに彼女たちは白い結婚だったらしく、新しい結婚相手も今探しているらしい。良い人が見つかることを祈る。
「ティナ様とも…いつかきちんと和解したいですね」
「!…そうか」
「もう少し心の整理がついてからになりますけど、いつかは…きっと」
旦那様ともだいぶ和解できてきたが、まだ夜の方は許してはない。
けれど子供も欲しいことだし、そろそろいいかなと思う自分もいる。
旦那様の子供が欲しいと思えるようになった時点で、だいぶ許せているとも思うし。
「旦那様」
「うん?」
「夜の方もチャレンジしてみますか?」
彼は私の言葉に目を見開いて、そして頷いた。
「優しく、大切にする」
「もう優先順位は間違えないでくださいね」
「もちろんだ」
まあ、雨降って地固まるということにしておいて欲しい。
そして今、旦那様に時間を作ってもらって話し合いの席を設けた。
「旦那様、私…」
「本当にすまなかった」
旦那様は私に謝る。
それはなんの謝罪だろうか。
「君に我慢を強いて、人助けもなにもあったものじゃない。証明のしようはないが、本当に俺は従妹に…オーギュスティナに下心はなかった。でも、君に嫌な思いをさせたこともようやく身に染みてわかった」
「そうですか…」
結婚してから、二年。
たった二年だが、されども二年。
私もこれまで意地を張っていたのだが、旦那様が毎日死んだような顔をして私に謝ってきたり愛人をあてがおうとしても拒否したりするのでそろそろ気持ちが落ち着いてきた。
仕返しとしては、もう十分だと思えた。
「…ええ、認めましょう。たしかに旦那様はティナ様を愛人にする気はなくて、それに新しい愛人も欲していない」
「…!」
「それでも、壊れた愛情は元には戻らない。昔のような純粋な思いで貴方を愛することは私にはできない」
「レナ…そんなことを君に言わせたのは俺だ、本当にすまない…」
「…もう、いいです。いいんです。だから…夫婦関係を、やり直しましょう」
私の言葉に旦那様は驚く。
離縁を迫られるとでも思っていたらしい。
「え、離縁したい…のではなく?」
「まあ正直それも考えましたが、家同士の利益ある結婚に水を差すのもあれですし…私もこの二年でだいぶ病んでいた心も回復しましたし」
「そうか…君を追い詰めてしまって本当に申し訳なかった」
「この二年で十分謝罪は受けました。もうこれ以上は謝らないでよろしい。…私も、たくさん意地を張って意地悪をしたのですから。これでトントンです」
「レナ…!」
彼に重要な提案をするのはここから。
受け入れてくれるなら、もう一度真剣に彼と向き合おう。
「なので、夫婦として…その前に人としてもう一度お互いにきちんと向き合いましょう」
「ありがとう、レナ…!」
「けれど…夜の方は、私が完全に貴方を許し受け止められるようになるまで絶対強要しないでください。夫婦としてやり直しますが、きちんとやり直せるまで夫婦の触れ合いは禁止です。…よろしい?」
「!!!…もちろんだ。いくらでも待つ」
覚悟の決まった顔で頷く彼。
私たちはこの日を機に夫婦関係をやり直し始めた。
それからさらに三年。
朗報が届いた。
義兄に捕まっていたらしいティナ様だが、義兄が急逝したらしい。
ティナ様がなにかしたとかでもなく、ただただ偶然に偶然が重なっての避けようのない事後だったらしい。
可哀想なことだが、天罰だと思ってしまう。その義兄が全ての元凶なのだから。
「ティナ様は自由になったのですね」
「ああ。今は遺産を使ってお一人様を満喫している。君にも改めての謝罪の手紙が来ているが、読むか?」
「はい」
受け取ったのは長い手紙。そこには本当に当時下心はなかったこと、傷つけてしまったことへの心からの謝罪。そして近況が書いてあった。
旦那様と夫婦関係をやり直してだいぶ経ち、今では下心はなかったことも受け止められるし謝罪も心にスッと入ってきた。
そして未亡人となった彼女は、生活に困ることもなく今では一応ちゃんと自立して幸せだと知って…正直ほっとする自分がいた。
私が意地を張って愛人呼ばわりしたことで彼女は家を出て、結果全ての元凶たる義兄に捕まってしまったとどこか罪悪感を感じていたから。
ちなみに彼女たちは白い結婚だったらしく、新しい結婚相手も今探しているらしい。良い人が見つかることを祈る。
「ティナ様とも…いつかきちんと和解したいですね」
「!…そうか」
「もう少し心の整理がついてからになりますけど、いつかは…きっと」
旦那様ともだいぶ和解できてきたが、まだ夜の方は許してはない。
けれど子供も欲しいことだし、そろそろいいかなと思う自分もいる。
旦那様の子供が欲しいと思えるようになった時点で、だいぶ許せているとも思うし。
「旦那様」
「うん?」
「夜の方もチャレンジしてみますか?」
彼は私の言葉に目を見開いて、そして頷いた。
「優しく、大切にする」
「もう優先順位は間違えないでくださいね」
「もちろんだ」
まあ、雨降って地固まるということにしておいて欲しい。
321
お気に入りに追加
133
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。
藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」
憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。
彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。
すごく幸せでした……あの日までは。
結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。
それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。
そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった……
もう耐える事は出来ません。
旦那様、私はあなたのせいで死にます。
だから、後悔しながら生きてください。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。
感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。
たくさんの感想ありがとうございます。
次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。
このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。
良かったら読んでください。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
信じてくれてありがとうと感謝されたが、ただ信じていたわけではない
しがついつか
恋愛
「これからしばらくの間、私はあなたに不誠実な行いをせねばなりません」
茶会で婚約者にそう言われた翌月、とある女性が見目麗しい男性を数名を侍らしているという噂話を耳にした
。
男性達の中には、婚約者もいるのだとか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
三人でデートとか気持ち悪・・・第三者にお前たち気持ち悪い!ぐらい言われたら良いのに。
バッドエンドならマヌケ夫を一生受け入れず後継は養子で別居か離婚、アホ女はストーカー夫と事故死(心中の噂アリ)して主人公の実家は主人公と没交渉のままぐらいやっても良かったような。
再構築ENDならもう少し夫にお灸を据えるところが見たかったな。
感想ありがとうございます。三人でデートはないですよねぇ…。
雨降って地固まったのなら少なくとも『バットエンド』ではないのでTagと説明を再考された方が宜しいかと。
感想ありがとうございます。そうですね、バッドエンドで終わらせるはずだったので…すみませんでした。
主人公の元家族視点と主人公のその後は有りますか?
感想ありがとうございます。ちょっと書けるように頑張ってみますね。