田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと

文字の大きさ
上 下
44 / 67

黒の少年に変な虫がつかないようにそばで守る

しおりを挟む
隣国の皇室から秘密の迎えが来て、リュックとアリス、シエルと共に転移魔法で皇居に招かれた。リュックと共に謁見室に入る。そこにはすでに皇帝陛下がいて、私達は礼を取る。

「面をあげよ。…ふむ、そなたが我が息子か?」

「…本当にそうかはわからないけど、多分」

リュックがそう答えれば、皇帝陛下はリュックを手招きする。

「もっと近くに寄るがいい。魔術で血の繋がりを調べる」

「わかった」

リュックが皇帝陛下のもとへ寄れば、魔術が発動した。キラキラした光にリュックが包まれて、その姿が輝く。

「…うむ。我が息子であることが証明された。…我が息子よ、これからは皇子としてここで過ごすのだ」

「うん。…俺、あんまり頭良くないけど頑張る」

「良い良い。すぐに慣れるだろう」

「…そうかな」

「そなた達も、良く我が息子を保護してくれた。おかげで大事な我が後継者を無事呼び寄せられた。礼を言う」

皇帝陛下はそう言うと、アリスを見て微笑んだ。

「聖者の色を持つ者に助けられたとは、有り難い。よければ我が息子のお披露目のパレードとパーティーに、そなたも参加してくれないか」

「え、あ、は、はい!僕でよろしければ!」

「よしよし。そこの二人も、頼むぞ」

「はい!」

「承知致しました」

ということで、私達はリュックのためのパレードとパーティーに参加することになった。















「わあ。御神輿の上ってこんな感じなんだね」

「さすがに僕も初めて乗ったよー!アリスティアお兄ちゃんもお兄様も初めてだよね?リュックは?」

「俺も初めてだ」

「私もさすがに神輿に担がれたことは今までなかったな」

神輿に担がれて、リュックのお披露目のパレードが始まる。

「パーティーも楽しみだね、アリスティアお兄ちゃん」

「そうだね、シエル様」

「リュック殿下も幸い歓迎されているようで、本当に良かったですね」

「ありがとう、ご当主様」

「今はもう、リュック殿下は皇子なのです。私のことはクロヴィスでいいのですよ」

リュックは私の言葉にちょっと困ったように笑う。

「…なんだか、やっぱり皇子様扱いには慣れそうにないな」

「リュック、大丈夫?」

「うん。…ただ、パーティーが終わって帰るまではずっと一緒にいて欲しい」

「うん、もちろんだよ」

話しながら、パレードを見る人々に手を振る私達。

「聖者様ー!皇子様ー!万歳ー!」

どうやらリュックもアリスも、相当に歓迎されているようだ。












パレードが終わると、今度はパーティー。リュックと、私とアリスとシエルも皇帝陛下と一緒に待機。この国の貴族の人々が全員集まったところで、皇帝陛下の後ろに続いて入場した。

「皆、ご苦労。今日は知っての通り、我が息子が帰還したので皆に挨拶のために集まってもらった。すでに魔術で血の証明も済んでいる。さらに、その息子を保護したのはこちらの聖者とその婚約者である」

みんな、アリスとリュックに視線を向ける。

「私は我が息子を後継者として育てる故、皆もそのつもりでいるように。」

そして私達は皇帝陛下に、あとは好きにパーティーを楽しめと言われて一緒に軽く食事を摂りながらお別れを惜しんでいた。けれど周りは当然放っておいてはくれなかった。

「第一皇子殿下、おかえりおめでとうございます!」

「聖者様、もしよろしければ俺と少しお話しませんか」

「あの、聖者様の婚約者の方ですよね?もしよろしければ是非あちらでお話などしませんか?」

「君は聖者様の婚約者の方の弟さんかな?料理は美味しいかな?」

貴族女性に言い寄られて少し嫌な気分になる。何故だか、そんな姿をアリスに見られたくはなかった。その間にも、アリスとリュックの周りの人だかりは大きくなる。これはアリスに女性に言い寄られている姿を見られるどころの騒ぎじゃなくなってきた。

「聖者様、もしよければ一緒にバルコニーで休憩でも…」

「聖者様、それよりもこれ美味しいですよ!よかったら食べませんか?」

「あ、ありがとう。でも、好きな食べ物は自分で取ります。お話も、楽しそうだけど今は大丈夫…」

リュックもアリスもガンガン迫ってくる貴族達にタジタジだ。アリスが他の男性に言い寄られているのを見て、何故だか不快になって割って入る。

「私の婚約者を口説かないでいただきたい。私は婚約者を大事にしていますから、貴方方がいくらアプローチしても無駄ですよ」

「な、そんなつもりでは…」

「あと、アリスは見た目は男装した美少女ですが普通に男ですから」

「え」

「ほら、皆様。アリスもリュック殿下も困っていらっしゃるので離していただけますか?」

さらっとリュックのことも攫って人の少ないエリアに逃げる。さすがにしつこく追ってくる人はおらず、また四人でゆっくり落ち着いて別れの挨拶をする。

「リュック…殿下。またお会い出来たら嬉しいです」

「俺も、いつになるかわからないけど立派な皇子様になったら連絡するね。多分、見てくれだけでもそれっぽくなったら連絡くらいいいよね?」

「そうですね!でも見てくれだけじゃ怒られちゃうかも」

「リュック殿下なら必ず素敵な皇太子になれますよ。ね、クロヴィス様」

「私もそう思いますよ、リュック殿下」

リュックとお別れの前にたくさん話して、パーティーが解散になると転移魔法で公爵邸に帰ることになった。

「リュック殿下、またいつか」

「必ずまたお会いしましょうね!」

「僕、連絡待ってます!」

「うん…またね、クロヴィス様、アリスティア様、シエル様。本当に楽しい時間をありがとう。必ずいつか連絡するからね」

手を軽く振って別れる。転移魔法が発動すると、次の瞬間には公爵邸でもう目の前にリュックはいない。…少し寂しいと思ったのは秘密だ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

処理中です...