41 / 67
黒の少年のおかげで農民たちのやる気も上がった
しおりを挟む
「アリス。ちょっと相談なんだが」
「なんですか?クロヴィス様」
「我が領地の農家に、より良い耕作の方法をレクチャーしてくれないだろうか?」
農民たちがアリスの意見を聞きたいと直談判までしにきたので、請け負ってもらえると助かるのだが。
「うーん…僕は農家のみんなと違って、魔法は使えないからあくまでも口頭での説明になっちゃいますけど…」
「いいんだ。農業国出身のアリスの意見を取り入れたいだけだから」
引き受けてもらえそうでホッとする。
「じゃあ、お役に立てるなら頑張りますね」
「ああ、頼む。君が農業国から来た美食の神として崇められるようになってから、ついでに農業に関する知識全部授けて欲しいと頼み込まれていてな。図々しくてすまない」
「そんな!図々しいだなんて!…頼って貰えて嬉しいです、ありがとうございます!」
「そう言ってもらえて助かる」
ということで、アリスと日付を決めて農民たちのところに訪問することにした。
「わあー!広くて素敵な畑ですねー!」
「そうか。君にそう言ってもらえると嬉しい」
アリスと馬車を降りると、そこは一面畑が広がっていた。
「領主様、アリスティア様。お越しいただきましてありがとうございます」
「出迎えご苦労」
「早速ですけど、本題に入りましょうか!」
農民たちに出迎えてもらって、さっそく本題に入る。
「えーっと、とりあえず農薬とかって使ってます?」
「はい、虫や獣除けの農薬を」
「じゃあ、無農薬野菜の栽培方法とかに興味ありますか?」
「無農薬…ですが、手間がかかるでしょう?」
「虫除けと獣除けの結界を張れば、あとは放置してても農薬以上の効果が出ますよ。無農薬野菜として高値で売れますし」
アリスはさらっととんでもないことを言い出す。結界?軍事転用したらすごいことになりそうなんだが。
「虫除けと獣除けの結界!?」
「そんな便利なものが!?」
「あるある。僕は色々あって実践してはあげられないけど、説明するから今ここで練習してみてください」
「わかりました!」
そして虫除けと獣除けの結界…闇魔法での遮断の方法を口頭で説明するアリス。魔法を使えるわけではないのに、完全に使い方を理解していた。アリスにそんな才能があったなんて知らなかった。
「アリスティア様!なんとか闇魔法を使える者は全員結界を習得できました!」
「よかったぁ。他にも闇魔法が使える人が増えたらどんどん教えていってくださいね。自分たちの畑だけじゃなく他の人の畑のためにも結界を使うこと。約束ですよ?」
「はい!」
アリスはその後も農民たちのために真摯に向き合う。
「そうだなぁ…土の状態の回復とかどうしてますか?」
「土の状態の回復?」
土の状態を回復なんて出来るのか?
「連作障害で痩せてしまった土壌を回復したり、したことありません?」
「土が痩せたらまた別の場所を耕していました」
「うーん…もったいないことするなぁ。国土が広いから出来ることなんだろうけど。皆さん、腐葉土の作り方はご存知?」
「知りません、そもそも腐葉土がわかりません」
「腐葉土とは土壌を良くしてくれるものです。落ち葉などをミミズなどの虫が長時間かけて分解することで、土のように変化した堆肥の一種です。土に混ぜることで微生物が増え、植物の成長に良い土にしてくれます」
なんということだ。それがあれば、無駄に開墾する必要が無くなる。もっと早くアリスに相談するべきだった。
「それがあればもう新しく土地を開墾する必要はないのですね!」
「ええ、さっそくですが腐葉土の作り方をレクチャーしましょう!」
「ありがとうございます!」
農民たちは真剣に聞き入る。
「穴を掘って、雨水を防ぐ為に木枠で囲ってフタができるようにします。落ち葉を入れて、生ごみやおが屑なども入れます。落ち葉、生ごみなどと水を、木枠いっぱいになるまで積み重ねていきます。積み重ねる際、落ち葉に水を少しかけながら積み重ねていきます。最後に落ち葉が隠れるまで土をかぶせたらフタをします」
「ほうほう」
農民たちからは絶対に、一言一句間違えないで覚えるという気概を感じる。
「たまに腐葉土全体に空気が行きわたるようかき混ぜてください。腐葉土が乾燥してしまっているようなら、水を少しずつ足しながらかき混ぜてください。二ヶ月から三ヶ月程で完成です!」
「ふむふむ」
「出来上がったら、土と腐葉土を二対一の割合で混ぜて使います。出来そうですか?」
「出来ます!頑張りますね!」
こうして一日かけて、アリスは色々とレクチャーしてくれた。帰りの馬車で、アリスを労わる。
「よくやってくれた。全てが一度に変わることはないだろうが、少しずつでも良くなっていくだろう」
「お役に立てれば幸いです!」
「ありがとう、アリス。君には感謝している」
「えへへ」
アリスはこんなにも一生懸命に我が領に尽くしてくれる。その姿が可愛く見えて、アリスの頭を撫でれば気持ちがいいのか笑顔になる。その姿がまた可愛くて…だが、私に男色の趣味はないのだと私自身に言い聞かせる。そう、これはシエルに対する庇護欲と同じものに違いないのだ。
そして僕たちは屋敷に帰ってきた。シエルに出迎えてもらって、今日どんなことをして過ごしたかなど色々聞いた。楽しい一日を過ごせたと思う。
まさかそう遠くない未来に、農業国からきた美食の神が農業の神としても崇められるようになるとはアリスも私も知る由もなかった。
「なんですか?クロヴィス様」
「我が領地の農家に、より良い耕作の方法をレクチャーしてくれないだろうか?」
農民たちがアリスの意見を聞きたいと直談判までしにきたので、請け負ってもらえると助かるのだが。
「うーん…僕は農家のみんなと違って、魔法は使えないからあくまでも口頭での説明になっちゃいますけど…」
「いいんだ。農業国出身のアリスの意見を取り入れたいだけだから」
引き受けてもらえそうでホッとする。
「じゃあ、お役に立てるなら頑張りますね」
「ああ、頼む。君が農業国から来た美食の神として崇められるようになってから、ついでに農業に関する知識全部授けて欲しいと頼み込まれていてな。図々しくてすまない」
「そんな!図々しいだなんて!…頼って貰えて嬉しいです、ありがとうございます!」
「そう言ってもらえて助かる」
ということで、アリスと日付を決めて農民たちのところに訪問することにした。
「わあー!広くて素敵な畑ですねー!」
「そうか。君にそう言ってもらえると嬉しい」
アリスと馬車を降りると、そこは一面畑が広がっていた。
「領主様、アリスティア様。お越しいただきましてありがとうございます」
「出迎えご苦労」
「早速ですけど、本題に入りましょうか!」
農民たちに出迎えてもらって、さっそく本題に入る。
「えーっと、とりあえず農薬とかって使ってます?」
「はい、虫や獣除けの農薬を」
「じゃあ、無農薬野菜の栽培方法とかに興味ありますか?」
「無農薬…ですが、手間がかかるでしょう?」
「虫除けと獣除けの結界を張れば、あとは放置してても農薬以上の効果が出ますよ。無農薬野菜として高値で売れますし」
アリスはさらっととんでもないことを言い出す。結界?軍事転用したらすごいことになりそうなんだが。
「虫除けと獣除けの結界!?」
「そんな便利なものが!?」
「あるある。僕は色々あって実践してはあげられないけど、説明するから今ここで練習してみてください」
「わかりました!」
そして虫除けと獣除けの結界…闇魔法での遮断の方法を口頭で説明するアリス。魔法を使えるわけではないのに、完全に使い方を理解していた。アリスにそんな才能があったなんて知らなかった。
「アリスティア様!なんとか闇魔法を使える者は全員結界を習得できました!」
「よかったぁ。他にも闇魔法が使える人が増えたらどんどん教えていってくださいね。自分たちの畑だけじゃなく他の人の畑のためにも結界を使うこと。約束ですよ?」
「はい!」
アリスはその後も農民たちのために真摯に向き合う。
「そうだなぁ…土の状態の回復とかどうしてますか?」
「土の状態の回復?」
土の状態を回復なんて出来るのか?
「連作障害で痩せてしまった土壌を回復したり、したことありません?」
「土が痩せたらまた別の場所を耕していました」
「うーん…もったいないことするなぁ。国土が広いから出来ることなんだろうけど。皆さん、腐葉土の作り方はご存知?」
「知りません、そもそも腐葉土がわかりません」
「腐葉土とは土壌を良くしてくれるものです。落ち葉などをミミズなどの虫が長時間かけて分解することで、土のように変化した堆肥の一種です。土に混ぜることで微生物が増え、植物の成長に良い土にしてくれます」
なんということだ。それがあれば、無駄に開墾する必要が無くなる。もっと早くアリスに相談するべきだった。
「それがあればもう新しく土地を開墾する必要はないのですね!」
「ええ、さっそくですが腐葉土の作り方をレクチャーしましょう!」
「ありがとうございます!」
農民たちは真剣に聞き入る。
「穴を掘って、雨水を防ぐ為に木枠で囲ってフタができるようにします。落ち葉を入れて、生ごみやおが屑なども入れます。落ち葉、生ごみなどと水を、木枠いっぱいになるまで積み重ねていきます。積み重ねる際、落ち葉に水を少しかけながら積み重ねていきます。最後に落ち葉が隠れるまで土をかぶせたらフタをします」
「ほうほう」
農民たちからは絶対に、一言一句間違えないで覚えるという気概を感じる。
「たまに腐葉土全体に空気が行きわたるようかき混ぜてください。腐葉土が乾燥してしまっているようなら、水を少しずつ足しながらかき混ぜてください。二ヶ月から三ヶ月程で完成です!」
「ふむふむ」
「出来上がったら、土と腐葉土を二対一の割合で混ぜて使います。出来そうですか?」
「出来ます!頑張りますね!」
こうして一日かけて、アリスは色々とレクチャーしてくれた。帰りの馬車で、アリスを労わる。
「よくやってくれた。全てが一度に変わることはないだろうが、少しずつでも良くなっていくだろう」
「お役に立てれば幸いです!」
「ありがとう、アリス。君には感謝している」
「えへへ」
アリスはこんなにも一生懸命に我が領に尽くしてくれる。その姿が可愛く見えて、アリスの頭を撫でれば気持ちがいいのか笑顔になる。その姿がまた可愛くて…だが、私に男色の趣味はないのだと私自身に言い聞かせる。そう、これはシエルに対する庇護欲と同じものに違いないのだ。
そして僕たちは屋敷に帰ってきた。シエルに出迎えてもらって、今日どんなことをして過ごしたかなど色々聞いた。楽しい一日を過ごせたと思う。
まさかそう遠くない未来に、農業国からきた美食の神が農業の神としても崇められるようになるとはアリスも私も知る由もなかった。
157
お気に入りに追加
1,294
あなたにおすすめの小説
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる