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黒の少年のおかげで農民たちのやる気も上がった

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「アリス。ちょっと相談なんだが」

「なんですか?クロヴィス様」

「我が領地の農家に、より良い耕作の方法をレクチャーしてくれないだろうか?」

農民たちがアリスの意見を聞きたいと直談判までしにきたので、請け負ってもらえると助かるのだが。

「うーん…僕は農家のみんなと違って、魔法は使えないからあくまでも口頭での説明になっちゃいますけど…」

「いいんだ。農業国出身のアリスの意見を取り入れたいだけだから」

引き受けてもらえそうでホッとする。

「じゃあ、お役に立てるなら頑張りますね」

「ああ、頼む。君が農業国から来た美食の神として崇められるようになってから、ついでに農業に関する知識全部授けて欲しいと頼み込まれていてな。図々しくてすまない」

「そんな!図々しいだなんて!…頼って貰えて嬉しいです、ありがとうございます!」

「そう言ってもらえて助かる」

ということで、アリスと日付を決めて農民たちのところに訪問することにした。









「わあー!広くて素敵な畑ですねー!」

「そうか。君にそう言ってもらえると嬉しい」

アリスと馬車を降りると、そこは一面畑が広がっていた。

「領主様、アリスティア様。お越しいただきましてありがとうございます」

「出迎えご苦労」

「早速ですけど、本題に入りましょうか!」

農民たちに出迎えてもらって、さっそく本題に入る。

「えーっと、とりあえず農薬とかって使ってます?」

「はい、虫や獣除けの農薬を」

「じゃあ、無農薬野菜の栽培方法とかに興味ありますか?」

「無農薬…ですが、手間がかかるでしょう?」

「虫除けと獣除けの結界を張れば、あとは放置してても農薬以上の効果が出ますよ。無農薬野菜として高値で売れますし」

アリスはさらっととんでもないことを言い出す。結界?軍事転用したらすごいことになりそうなんだが。

「虫除けと獣除けの結界!?」

「そんな便利なものが!?」

「あるある。僕は色々あって実践してはあげられないけど、説明するから今ここで練習してみてください」

「わかりました!」

そして虫除けと獣除けの結界…闇魔法での遮断の方法を口頭で説明するアリス。魔法を使えるわけではないのに、完全に使い方を理解していた。アリスにそんな才能があったなんて知らなかった。

「アリスティア様!なんとか闇魔法を使える者は全員結界を習得できました!」

「よかったぁ。他にも闇魔法が使える人が増えたらどんどん教えていってくださいね。自分たちの畑だけじゃなく他の人の畑のためにも結界を使うこと。約束ですよ?」

「はい!」

アリスはその後も農民たちのために真摯に向き合う。

「そうだなぁ…土の状態の回復とかどうしてますか?」

「土の状態の回復?」

土の状態を回復なんて出来るのか?

「連作障害で痩せてしまった土壌を回復したり、したことありません?」

「土が痩せたらまた別の場所を耕していました」

「うーん…もったいないことするなぁ。国土が広いから出来ることなんだろうけど。皆さん、腐葉土の作り方はご存知?」

「知りません、そもそも腐葉土がわかりません」

「腐葉土とは土壌を良くしてくれるものです。落ち葉などをミミズなどの虫が長時間かけて分解することで、土のように変化した堆肥の一種です。土に混ぜることで微生物が増え、植物の成長に良い土にしてくれます」

なんということだ。それがあれば、無駄に開墾する必要が無くなる。もっと早くアリスに相談するべきだった。

「それがあればもう新しく土地を開墾する必要はないのですね!」

「ええ、さっそくですが腐葉土の作り方をレクチャーしましょう!」

「ありがとうございます!」

農民たちは真剣に聞き入る。

「穴を掘って、雨水を防ぐ為に木枠で囲ってフタができるようにします。落ち葉を入れて、生ごみやおが屑なども入れます。落ち葉、生ごみなどと水を、木枠いっぱいになるまで積み重ねていきます。積み重ねる際、落ち葉に水を少しかけながら積み重ねていきます。最後に落ち葉が隠れるまで土をかぶせたらフタをします」

「ほうほう」

農民たちからは絶対に、一言一句間違えないで覚えるという気概を感じる。

「たまに腐葉土全体に空気が行きわたるようかき混ぜてください。腐葉土が乾燥してしまっているようなら、水を少しずつ足しながらかき混ぜてください。二ヶ月から三ヶ月程で完成です!」

「ふむふむ」

「出来上がったら、土と腐葉土を二対一の割合で混ぜて使います。出来そうですか?」

「出来ます!頑張りますね!」

こうして一日かけて、アリスは色々とレクチャーしてくれた。帰りの馬車で、アリスを労わる。

「よくやってくれた。全てが一度に変わることはないだろうが、少しずつでも良くなっていくだろう」

「お役に立てれば幸いです!」

「ありがとう、アリス。君には感謝している」

「えへへ」

アリスはこんなにも一生懸命に我が領に尽くしてくれる。その姿が可愛く見えて、アリスの頭を撫でれば気持ちがいいのか笑顔になる。その姿がまた可愛くて…だが、私に男色の趣味はないのだと私自身に言い聞かせる。そう、これはシエルに対する庇護欲と同じものに違いないのだ。

そして僕たちは屋敷に帰ってきた。シエルに出迎えてもらって、今日どんなことをして過ごしたかなど色々聞いた。楽しい一日を過ごせたと思う。

まさかそう遠くない未来に、農業国からきた美食の神が農業の神としても崇められるようになるとはアリスも私も知る由もなかった。
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