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冷蔵庫の発明
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お披露目パーティーの次の日から、フルスはメーアエングさんに連れられて毎日私の元へ来ている。紅茶とお菓子を楽しみながら帝王学と哲学の勉強を教えてくれることになったのだ。先生が、その方が興味が持てるかもしれないとお兄ちゃんに奏上してくれてそうなった。フルスの説明は分かりやすいし、面白い。そもそも年上とはいえお友達との勉強会というのは楽しい。あれだけ苦手だった帝王学と哲学の勉強がスルスル入る。それに、よく出来た時にフルスが頭を撫でてくれるのも好き。
「…つまりはここの意味はこういうことですよ。姫様」
「へー!面白いね、フルス!」
「ええ、意味がわかると楽しいものですね。姫様」
「じゃあここは?」
「これはですね…」
「ふふ。先生も形無しですね」
「私ではあのような教え方は出来ませんからなあ…姫様にはつまらない授業で申し訳無かった…」
「でも、先生のおかげで姫様はすぐに天才だと認められたのですもの。いいじゃないですか」
「そうでしょうかね…」
「そうですよ」
「姫様、次はこちらの哲学書はいかがでしょう?」
「!読みたい!」
「では、早速…皇帝陛下!ご機嫌麗しく」
これからというところでお兄ちゃんが来た。もうそんな時間か。
「メーア。メーアエングの息子との勉強は捗っているか?」
「うん、すごく楽しい!」
「そうか。ご苦労」
「とんでもございません」
「これから兄妹水入らずでお茶会をするから、お前は下がれ」
「失礼致します、姫様」
「うん、またねー。明日も待ってるよ!」
キュステに抱き上げられて、お兄ちゃんと一緒に中庭に行く。フルスには手を振っておいた。フルスも控え目に振りかえしてくれた。フルスはやっぱり優しい。
「…」
お兄ちゃんはいつも通り私を椅子に座らせると、いつもとは違って書類とにらめっこする。珍しいな。
「お兄ちゃん、その書類なあに?」
「最近国内で病死の報告が増えてな」
「…病死?」
なんだろう?流行病じゃないといいけど。
「ああ。毎年この時期になると病死が相次ぐらしい。しかも決まって食後。食当たりが悪化してのことだそうだ」
あ、食中毒か!この世界には冷蔵庫がないから、食べ物が傷むのが早いんだ!
「じゃあ、食料が腐らないようにすればいいの?お兄ちゃん」
「そうだな。だがその方法がない。さすがに平民達に氷室を各家庭で用意しろとは言えん」
…前世の記憶の使い所だろうか?でも、そんな異世界チートみたいなことしていいのかな?なんか、後々面倒なことにならないかな。…でも、無意味に死んじゃう人が減るのは、いいこと…だよね?助けられるのに見捨てるのも後味悪いし…。
「…お兄ちゃん。あのね?」
「どうした?」
「簡易的な箱型氷室、とかどう?」
「…なんだそれは?」
「ちょっと作ってみるね、えいっ!」
魔法で簡易型冷蔵庫を作る。電力の代わりに氷魔法を貯蓄させる。十年は保つように設計した。これならみんなを助けられると思う。お兄ちゃんも一瞬目を丸くしたものの、使えると判断してくれた。
「…ほう、これはなかなかいいな。食材が傷むのを抑えることは出来そうだ」
「うん!」
「だが、一回作ってどのくらい持つ?作るコストと一日の生産量は?」
「一回で十年保つように作ってみたよ!魔法で作るからコストは魔法石がたくさん必要だけど、魔術師さんに頼めばいくらでも生産できると思うよ」
「無料で国民達に提供するのか、ある程度の値段で売るのかはどうする?使えなくなった氷室はとっておいてまた氷魔法で再利用するのか、使い捨てるのかは考えているか?」
「まずは貴族や裕福な商人、教会辺りに高値で売ってあげて、普及し始めたら安価な値段で平民にも売ろう?もちろん見た目とかのクオリティーの差はつけて。使用期限は長めに設定してあるから、代わりに使い捨てにしよっか」
「…ちゃんと考えているんだな。わかった。量産させてみよう。試作品は預かる。これを解析させて魔術師達に作らせよう。名前は?」
「冷蔵庫!」
「わかりやすくていいな。よし、ちょっと待っていろ」
お兄ちゃんが私の頭をそっと撫でてくれた。気持ちいい。そしてお兄ちゃんは出かけていった。お兄ちゃんが帰ってきたら、早速冷蔵庫の生産、販売を始めたと報告された。行動するのが早い。さすがお兄ちゃん。結果として、貴族や裕福な商人、教会にはかなりの高額にもかかわらず飛ぶように売れ、その後見た目のクオリティーは落ちるものの性能は変わらない安価な冷蔵庫も平民向けに発売。こちらも飛ぶように売れ、食中毒での死亡は減少。国内だけでなく外国への輸出もすぐに始まって、国庫も潤った。結果お兄ちゃんにたくさん褒められた。嬉しい。あと、ヴィアベルとキュステが私を尊敬の目で見てくれた。思わず鼻が高くなる。お兄ちゃんが私の発明だと大々的に公表してくれたらしく、フルスにも褒められた。貴族のみんなの私を見る目もちょっと変わった気がする。ちょっと迷ったけど、やっぱり冷蔵庫を作ってよかった。
「…つまりはここの意味はこういうことですよ。姫様」
「へー!面白いね、フルス!」
「ええ、意味がわかると楽しいものですね。姫様」
「じゃあここは?」
「これはですね…」
「ふふ。先生も形無しですね」
「私ではあのような教え方は出来ませんからなあ…姫様にはつまらない授業で申し訳無かった…」
「でも、先生のおかげで姫様はすぐに天才だと認められたのですもの。いいじゃないですか」
「そうでしょうかね…」
「そうですよ」
「姫様、次はこちらの哲学書はいかがでしょう?」
「!読みたい!」
「では、早速…皇帝陛下!ご機嫌麗しく」
これからというところでお兄ちゃんが来た。もうそんな時間か。
「メーア。メーアエングの息子との勉強は捗っているか?」
「うん、すごく楽しい!」
「そうか。ご苦労」
「とんでもございません」
「これから兄妹水入らずでお茶会をするから、お前は下がれ」
「失礼致します、姫様」
「うん、またねー。明日も待ってるよ!」
キュステに抱き上げられて、お兄ちゃんと一緒に中庭に行く。フルスには手を振っておいた。フルスも控え目に振りかえしてくれた。フルスはやっぱり優しい。
「…」
お兄ちゃんはいつも通り私を椅子に座らせると、いつもとは違って書類とにらめっこする。珍しいな。
「お兄ちゃん、その書類なあに?」
「最近国内で病死の報告が増えてな」
「…病死?」
なんだろう?流行病じゃないといいけど。
「ああ。毎年この時期になると病死が相次ぐらしい。しかも決まって食後。食当たりが悪化してのことだそうだ」
あ、食中毒か!この世界には冷蔵庫がないから、食べ物が傷むのが早いんだ!
「じゃあ、食料が腐らないようにすればいいの?お兄ちゃん」
「そうだな。だがその方法がない。さすがに平民達に氷室を各家庭で用意しろとは言えん」
…前世の記憶の使い所だろうか?でも、そんな異世界チートみたいなことしていいのかな?なんか、後々面倒なことにならないかな。…でも、無意味に死んじゃう人が減るのは、いいこと…だよね?助けられるのに見捨てるのも後味悪いし…。
「…お兄ちゃん。あのね?」
「どうした?」
「簡易的な箱型氷室、とかどう?」
「…なんだそれは?」
「ちょっと作ってみるね、えいっ!」
魔法で簡易型冷蔵庫を作る。電力の代わりに氷魔法を貯蓄させる。十年は保つように設計した。これならみんなを助けられると思う。お兄ちゃんも一瞬目を丸くしたものの、使えると判断してくれた。
「…ほう、これはなかなかいいな。食材が傷むのを抑えることは出来そうだ」
「うん!」
「だが、一回作ってどのくらい持つ?作るコストと一日の生産量は?」
「一回で十年保つように作ってみたよ!魔法で作るからコストは魔法石がたくさん必要だけど、魔術師さんに頼めばいくらでも生産できると思うよ」
「無料で国民達に提供するのか、ある程度の値段で売るのかはどうする?使えなくなった氷室はとっておいてまた氷魔法で再利用するのか、使い捨てるのかは考えているか?」
「まずは貴族や裕福な商人、教会辺りに高値で売ってあげて、普及し始めたら安価な値段で平民にも売ろう?もちろん見た目とかのクオリティーの差はつけて。使用期限は長めに設定してあるから、代わりに使い捨てにしよっか」
「…ちゃんと考えているんだな。わかった。量産させてみよう。試作品は預かる。これを解析させて魔術師達に作らせよう。名前は?」
「冷蔵庫!」
「わかりやすくていいな。よし、ちょっと待っていろ」
お兄ちゃんが私の頭をそっと撫でてくれた。気持ちいい。そしてお兄ちゃんは出かけていった。お兄ちゃんが帰ってきたら、早速冷蔵庫の生産、販売を始めたと報告された。行動するのが早い。さすがお兄ちゃん。結果として、貴族や裕福な商人、教会にはかなりの高額にもかかわらず飛ぶように売れ、その後見た目のクオリティーは落ちるものの性能は変わらない安価な冷蔵庫も平民向けに発売。こちらも飛ぶように売れ、食中毒での死亡は減少。国内だけでなく外国への輸出もすぐに始まって、国庫も潤った。結果お兄ちゃんにたくさん褒められた。嬉しい。あと、ヴィアベルとキュステが私を尊敬の目で見てくれた。思わず鼻が高くなる。お兄ちゃんが私の発明だと大々的に公表してくれたらしく、フルスにも褒められた。貴族のみんなの私を見る目もちょっと変わった気がする。ちょっと迷ったけど、やっぱり冷蔵庫を作ってよかった。
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