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TS転生したけど俺的にはまあまあ幸せかなと思う
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残業、残業、また残業。泊まり込みでのデスマーチ。世界が黄色に染まって見え、気付いたら気を失っていた。
眼が覚めると、そこは豪華な如何にもお嬢様っぽい部屋だった。いかん。とうとう幻覚まで…。
「アリアお嬢様!目が覚めたのですね!本当に、本当に良かった…!」
知らない女が俺の手を握る。その温かさは幻覚とは思えないほどで。…アリアお嬢様ってなんだ。俺は男だぞ。
「あの…」
「はい、お嬢様!」
「貴女誰ですか?なんで俺はこんなところにいるんですか?これは幻覚ですか?」
「…お嬢、様?」
「…俺は男です。お嬢様なんてやめてください」
俺がそう言うと女は滝のように涙を流した後、無言で走り去った。なんなんだ。
しばらく一人になり、ふと違和感に気付いた。男性器がない。胸と尻がバインバインにある。お腹が細い。
まさか、まさかと部屋にあった鏡を見る。絶望した。俺は金髪碧眼のキツめの顔をしたグラマラスな年若い美女になっていた。
えー。あー。あれだ。学生の頃読んでいたイセカイテンセイって奴だろ?それか幻覚か。でも、ここまで感覚がリアルなら幻覚じゃないんじゃないか。そしてこの見た目、間違いなく悪役令嬢では?
情報を収集しなければ。そして、可能なら夢のニート生活を堪能しよう。そうしよう。なんたって悪役令嬢ってことは金持ちで権力も地位もあるのだから。…女になったのは違和感ありすぎてキツいけど。
その後、さっきの女が俺の新しい父親と母親と兄と医者を連れてきた。ついでに言うと新しい家族に抵抗はない。なんせ前世では天涯孤独だったからな。家族が出来たのは純粋に嬉しかったし、その家族が今の俺にちょっと甘すぎるが優しいこともわかって良かった。
記憶喪失と診断された俺はこれまでの経緯を聞く。なんでも俺はアリアスティアという仰々しい名前で、この国の筆頭公爵家の長女らしい。兄弟はしっかり者の兄が一人だけ。家族からは甘やかされて育つも、幼い頃から王太子と婚約しており厳しい王太子妃教育のために誰もが憧れる貴婦人の中の貴婦人として育ったという。
ところが王太子が男爵令嬢と恋に落ち、その男爵令嬢がマナーがなっていないため度々注意。また王太子にも彼女を愛妾にするのはいいが正妃である自分との間にお世継ぎを作ってからにするよう忠言。それにより王太子から不興を買い、貴族の通う学園の卒業パーティーの場で婚約破棄を宣言され未来の王太子妃…男爵令嬢を侮辱した不敬罪とやらで貴族用の牢に投獄される。
まあただ、すぐにアリアスティアを溺愛する公爵家の全員が総出で国王に抗議し、寝耳に水だった国王によりアリアスティアはすぐ解放されて屋敷の私室で気絶するように眠った。国王はバカな王太子に、この婚約は平民出身の側妃の息子で後ろ盾のない王太子のために公爵家を味方につけるべく結ばれたもの。それを破棄したのだからもう王太子の位は剥奪し、王妃の息子である後ろ盾のしっかりした優秀な第二王子が王太子となると告げた。そして元王太子は中央教会で出家。神に祈りを捧げる生活に。男爵令嬢は元王太子を誘惑した内乱罪で一族諸共処刑。
男爵家の領地と資産と爵位は、ほんのちょっとしかなかったが男爵家からの慰謝料としてアリアスティア本人の財産となった。また、王家からも慰謝料兼迷惑料として公爵家に多大なお金が入った。
ここまで聞いて思う。普通イセカイテンセイってピンチの時に知識チートでそれを回避するものじゃないの?もう解決してるじゃん。
ということで、甘ーい両親と兄に甘えてひきこもり生活をエンジョイすることにした。傷付き記憶を失った美女に、家族はどこまでも優しかった。最初はすごく楽しかった。女の身体になって、ちょっと違和感はあるし月のモノが来た時は正直びびったけど、何もせずぼーっとしてご飯を食べて風呂に入って寝て、しかもその飯が美味くて風呂の入浴剤が気持ち良くてふかふかのベッドが心地良い。たまに好みの小説を読み、シエスタと言う名の惰眠を貪り、こんな生活最高だと思っていた。
だが気付く。ブラック企業の社畜だった俺にとってこの生活は甘い毒だった。『何も仕事がない』というのがストレスになっていた。
だから俺はとりあえず父親に、記憶喪失になってから吹っ飛んだ教養をそろそろ身につけたいとねだった。すぐさまオーケーをもらい教養を身につける日々。といっても、国語は何故か日本語だし、数学と理科はそこまで進んでない世界らしく天才扱いされて家族からもこんな才能があったなんてと驚かれる。帝国語は英語だからまあまあ分かるし、問題はマナーと歴史、地理、世界史、宗教学、刺繍に詩に魔法学だった。いや、思ったより問題が多いな。うん。
だが、アリアスティアの身体は地頭が良いのか割と教わったことはするすると身に付いたのでなんだかんだで、この世界に来てから一年で教養は記憶喪失の前までのレベルに達した。まあやることなくてずっと勉強したおかげもあるだろうが、アリアスティア凄い。
さて、お稽古も終わってしまい次は何を仕事と設定しようかと思って思い出す。アリアスティアはお騒がせ男爵家の爵位と領地と資産を貰っている。つまりアリアスティアは女男爵で、領地と資産の管理をしっかり者の兄に丸投げしている状態である。
さりとていきなり領地経営とか無理である。というかそもそも兄はこのアリアスティアに領地経営なんて面倒なことをさせる気はないだろう。
ということで搦め手を使うことにした。
公爵領とは飛び地にある我が男爵領に転移魔法でくる。そして、この男爵領の最大の特徴にして難点。…魔獣の討伐を行うことにした。
男爵領の大半を管理する『管理人』要は市長みたいな人だが、その人に領主として正式に挨拶し、腕の立つ猟師を何人か付けてもらい魔獣の討伐に行く。ちなみに猟師は普通の獣の猟師で魔獣ハンターではないがいないよりマシである。
そして、魔法をバカスカ魔力が切れるまで魔獣の群れに撃ち込みまくる。さすが悪役令嬢?というべきか、魔力が他の貴族と比べて桁違いらしく、なんと一日で推定される男爵領に潜伏する魔獣おおよそ全てを駆除できたはずである。
取った魔獣の解体、そして持ち帰りは猟師に任せて、解体した皮や牙や骨や肉、魔石と呼ばれる魔力が篭った内臓らしき石は全て猟師達の利益にしてもらった。一銭も貰わず領地の安全を確保した俺は英雄扱いされた。それを転移魔法で公爵家に帰り事後報告すると兄は困った顔でそれでも褒めてくれて、領地の安全を確保するなんてアリアは偉いねなんて言って頭を撫でられた。そして、有名になってしまった俺は無事領地経営に携わることになった。
それからさらに一年。我が男爵領は魔獣の脅威が無くなったこともあり、また俺が領内で生産される良質な果物をブランド化して高く売りさばき始めたことで栄えに栄えた。結構な税収が増え、俺の資産も当然増えた。しかも俺、金のかかる趣味がないので貯まる一方である。…が、貯め込みすぎると経済が回らなくなると悟った俺は一気に散財することにした。
絵画を買ったのである。適当に画廊の個展に顔を出して一人の画家の絵を買い漁った。画家の祖父母の何気ない日常を描くシリーズだった。前世で天涯孤独だった俺には、酷く優しい絵に見えたのだ。
あまりにも買い漁ったのでその場にいた画家が話しかけてくれた。アリアスティアと同じ年の青年だった。貴族の次男坊で、本当はどこぞの貴族に婿入りするはずだったが相手により良い婚約が持ちかけられ捨てられたらしい。貴族社会でそんなことして良いのかとか疑問はたくさんあったが、アリアスティアも捨てられ仲間だなと思いそれを告げてお互い慰め合い仲良くなった。
この頃には俺もまあ自分が女ってことも受け入れて、いずれ配偶者が必要とわかっていたので、女男爵の婿って扱いでも良ければと画家…アルベルトに持ちかけた。アルベルトもアリアとならと承諾してくれて、短めの婚約期間を設けて結婚。もちろん、お互いの両親への挨拶とか式とかの準備とか短めに設定した婚約期間にてんやわんやしたが、まあみんな祝福してくれて無事円満な家庭を築いている。
正直アルベルトとは、夫というよりパートナーって感じだ。何を言ってるかわからないかもしれないが、そんな感じだ。ただ、穏やかな家族愛がそこにはあるし、子宝にも恵まれて後継もいるし俺はなんだかんだで幸せである。
「アリア」
「なんだよ、アル」
アルベルト改めアルには、素の俺を見せている。だがアルは受け入れてくれた。さすがに前世の話はしていないが、いずれ告白してみようとも思っている。
「愛してるよ」
「俺も」
そこに家族愛と妻への愛という隔たりはあるし、アルもそれを知っているが、それでも俺達はお互いが一番大切で、大好きだ。これからも領地とともにこの夫を、そして子供達を幸せにしていこうと今日も決意を新たにする。
眼が覚めると、そこは豪華な如何にもお嬢様っぽい部屋だった。いかん。とうとう幻覚まで…。
「アリアお嬢様!目が覚めたのですね!本当に、本当に良かった…!」
知らない女が俺の手を握る。その温かさは幻覚とは思えないほどで。…アリアお嬢様ってなんだ。俺は男だぞ。
「あの…」
「はい、お嬢様!」
「貴女誰ですか?なんで俺はこんなところにいるんですか?これは幻覚ですか?」
「…お嬢、様?」
「…俺は男です。お嬢様なんてやめてください」
俺がそう言うと女は滝のように涙を流した後、無言で走り去った。なんなんだ。
しばらく一人になり、ふと違和感に気付いた。男性器がない。胸と尻がバインバインにある。お腹が細い。
まさか、まさかと部屋にあった鏡を見る。絶望した。俺は金髪碧眼のキツめの顔をしたグラマラスな年若い美女になっていた。
えー。あー。あれだ。学生の頃読んでいたイセカイテンセイって奴だろ?それか幻覚か。でも、ここまで感覚がリアルなら幻覚じゃないんじゃないか。そしてこの見た目、間違いなく悪役令嬢では?
情報を収集しなければ。そして、可能なら夢のニート生活を堪能しよう。そうしよう。なんたって悪役令嬢ってことは金持ちで権力も地位もあるのだから。…女になったのは違和感ありすぎてキツいけど。
その後、さっきの女が俺の新しい父親と母親と兄と医者を連れてきた。ついでに言うと新しい家族に抵抗はない。なんせ前世では天涯孤独だったからな。家族が出来たのは純粋に嬉しかったし、その家族が今の俺にちょっと甘すぎるが優しいこともわかって良かった。
記憶喪失と診断された俺はこれまでの経緯を聞く。なんでも俺はアリアスティアという仰々しい名前で、この国の筆頭公爵家の長女らしい。兄弟はしっかり者の兄が一人だけ。家族からは甘やかされて育つも、幼い頃から王太子と婚約しており厳しい王太子妃教育のために誰もが憧れる貴婦人の中の貴婦人として育ったという。
ところが王太子が男爵令嬢と恋に落ち、その男爵令嬢がマナーがなっていないため度々注意。また王太子にも彼女を愛妾にするのはいいが正妃である自分との間にお世継ぎを作ってからにするよう忠言。それにより王太子から不興を買い、貴族の通う学園の卒業パーティーの場で婚約破棄を宣言され未来の王太子妃…男爵令嬢を侮辱した不敬罪とやらで貴族用の牢に投獄される。
まあただ、すぐにアリアスティアを溺愛する公爵家の全員が総出で国王に抗議し、寝耳に水だった国王によりアリアスティアはすぐ解放されて屋敷の私室で気絶するように眠った。国王はバカな王太子に、この婚約は平民出身の側妃の息子で後ろ盾のない王太子のために公爵家を味方につけるべく結ばれたもの。それを破棄したのだからもう王太子の位は剥奪し、王妃の息子である後ろ盾のしっかりした優秀な第二王子が王太子となると告げた。そして元王太子は中央教会で出家。神に祈りを捧げる生活に。男爵令嬢は元王太子を誘惑した内乱罪で一族諸共処刑。
男爵家の領地と資産と爵位は、ほんのちょっとしかなかったが男爵家からの慰謝料としてアリアスティア本人の財産となった。また、王家からも慰謝料兼迷惑料として公爵家に多大なお金が入った。
ここまで聞いて思う。普通イセカイテンセイってピンチの時に知識チートでそれを回避するものじゃないの?もう解決してるじゃん。
ということで、甘ーい両親と兄に甘えてひきこもり生活をエンジョイすることにした。傷付き記憶を失った美女に、家族はどこまでも優しかった。最初はすごく楽しかった。女の身体になって、ちょっと違和感はあるし月のモノが来た時は正直びびったけど、何もせずぼーっとしてご飯を食べて風呂に入って寝て、しかもその飯が美味くて風呂の入浴剤が気持ち良くてふかふかのベッドが心地良い。たまに好みの小説を読み、シエスタと言う名の惰眠を貪り、こんな生活最高だと思っていた。
だが気付く。ブラック企業の社畜だった俺にとってこの生活は甘い毒だった。『何も仕事がない』というのがストレスになっていた。
だから俺はとりあえず父親に、記憶喪失になってから吹っ飛んだ教養をそろそろ身につけたいとねだった。すぐさまオーケーをもらい教養を身につける日々。といっても、国語は何故か日本語だし、数学と理科はそこまで進んでない世界らしく天才扱いされて家族からもこんな才能があったなんてと驚かれる。帝国語は英語だからまあまあ分かるし、問題はマナーと歴史、地理、世界史、宗教学、刺繍に詩に魔法学だった。いや、思ったより問題が多いな。うん。
だが、アリアスティアの身体は地頭が良いのか割と教わったことはするすると身に付いたのでなんだかんだで、この世界に来てから一年で教養は記憶喪失の前までのレベルに達した。まあやることなくてずっと勉強したおかげもあるだろうが、アリアスティア凄い。
さて、お稽古も終わってしまい次は何を仕事と設定しようかと思って思い出す。アリアスティアはお騒がせ男爵家の爵位と領地と資産を貰っている。つまりアリアスティアは女男爵で、領地と資産の管理をしっかり者の兄に丸投げしている状態である。
さりとていきなり領地経営とか無理である。というかそもそも兄はこのアリアスティアに領地経営なんて面倒なことをさせる気はないだろう。
ということで搦め手を使うことにした。
公爵領とは飛び地にある我が男爵領に転移魔法でくる。そして、この男爵領の最大の特徴にして難点。…魔獣の討伐を行うことにした。
男爵領の大半を管理する『管理人』要は市長みたいな人だが、その人に領主として正式に挨拶し、腕の立つ猟師を何人か付けてもらい魔獣の討伐に行く。ちなみに猟師は普通の獣の猟師で魔獣ハンターではないがいないよりマシである。
そして、魔法をバカスカ魔力が切れるまで魔獣の群れに撃ち込みまくる。さすが悪役令嬢?というべきか、魔力が他の貴族と比べて桁違いらしく、なんと一日で推定される男爵領に潜伏する魔獣おおよそ全てを駆除できたはずである。
取った魔獣の解体、そして持ち帰りは猟師に任せて、解体した皮や牙や骨や肉、魔石と呼ばれる魔力が篭った内臓らしき石は全て猟師達の利益にしてもらった。一銭も貰わず領地の安全を確保した俺は英雄扱いされた。それを転移魔法で公爵家に帰り事後報告すると兄は困った顔でそれでも褒めてくれて、領地の安全を確保するなんてアリアは偉いねなんて言って頭を撫でられた。そして、有名になってしまった俺は無事領地経営に携わることになった。
それからさらに一年。我が男爵領は魔獣の脅威が無くなったこともあり、また俺が領内で生産される良質な果物をブランド化して高く売りさばき始めたことで栄えに栄えた。結構な税収が増え、俺の資産も当然増えた。しかも俺、金のかかる趣味がないので貯まる一方である。…が、貯め込みすぎると経済が回らなくなると悟った俺は一気に散財することにした。
絵画を買ったのである。適当に画廊の個展に顔を出して一人の画家の絵を買い漁った。画家の祖父母の何気ない日常を描くシリーズだった。前世で天涯孤独だった俺には、酷く優しい絵に見えたのだ。
あまりにも買い漁ったのでその場にいた画家が話しかけてくれた。アリアスティアと同じ年の青年だった。貴族の次男坊で、本当はどこぞの貴族に婿入りするはずだったが相手により良い婚約が持ちかけられ捨てられたらしい。貴族社会でそんなことして良いのかとか疑問はたくさんあったが、アリアスティアも捨てられ仲間だなと思いそれを告げてお互い慰め合い仲良くなった。
この頃には俺もまあ自分が女ってことも受け入れて、いずれ配偶者が必要とわかっていたので、女男爵の婿って扱いでも良ければと画家…アルベルトに持ちかけた。アルベルトもアリアとならと承諾してくれて、短めの婚約期間を設けて結婚。もちろん、お互いの両親への挨拶とか式とかの準備とか短めに設定した婚約期間にてんやわんやしたが、まあみんな祝福してくれて無事円満な家庭を築いている。
正直アルベルトとは、夫というよりパートナーって感じだ。何を言ってるかわからないかもしれないが、そんな感じだ。ただ、穏やかな家族愛がそこにはあるし、子宝にも恵まれて後継もいるし俺はなんだかんだで幸せである。
「アリア」
「なんだよ、アル」
アルベルト改めアルには、素の俺を見せている。だがアルは受け入れてくれた。さすがに前世の話はしていないが、いずれ告白してみようとも思っている。
「愛してるよ」
「俺も」
そこに家族愛と妻への愛という隔たりはあるし、アルもそれを知っているが、それでも俺達はお互いが一番大切で、大好きだ。これからも領地とともにこの夫を、そして子供達を幸せにしていこうと今日も決意を新たにする。
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