その日、運命の出会いを果たした

下菊みこと

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ご都合主義のハッピーエンド

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私は双子の姉といつも比べられていた。

「アリスはとっても良い子ねー、私たちの自慢の娘よ」

「あの穀潰しと違って将来も有望だな」

「ふふ、やめてよお父様。あんな子と比較しないで?」

「ああ、すまなかった」

「うそうそ、お父様だぁいすき!お母様もね!」

姉は光魔法の使い手でしかも優秀なのに、私には闇魔法しか使えないので人目に出せないと言われた。

せめて闇魔法を極めようと頑張ったら、引っ叩かれた。

「あんたは余計なことはしなくていいのよ!!!」

「お前のことは大人になったら教会に被験体として売り払うんだ!お前は貴重な闇の魔力を溜め込んでおくだけでいい!」

「お父様…お母様…」

「お前には何も期待していないんだ!努力なんて無駄なことをするな!」

「本当に恐ろしい子!」

姉は毎年誕生日を祝われるが、私はいつも蚊帳の外。

悲しかった。

「ぐすっ、ぐすっ」

今日は私たちの十七歳の誕生日。

姉は盛大に祝ってもらっている。

私は一人で泣いていた。

姉の婚約者の王子様も、姉も幸せそう。

ずるい、ずるい、みんな持っているからって私を見下して、追い詰めて、ひどい。

優しくされたい。せめて憐れみが欲しい。利用されてもいいから誰かに認められたい。

「ほぉーう?それは随分と欲深いことだなぁ?」

その言葉に顔を上げる。

見ればそれは、姉の婚約者の王子様。

けれど彼は姉のそばにいるはず。

じゃあこの人は…

「そう!余はこの国の第一王子、あの不快な双子の弟の兄にして将来この国を治めるディオン様だ!」

その言葉は虚偽だ。

この国を治めることになるのは、この人の双子の弟であるデュドネ様。

光魔法の使い手であるあの王子様だ。

というか、さっきさらっと心を読まれた。

ディオン様は相当な闇魔法の使い手なのだろう。

「それで貴様、人に優しくされたいのだろう?人に認められたいのだろう?であれば余と手を組め」

「え」

「余や貴様を見下してきた連中に、一泡吹かせてやろうではないか!!!」

私は、どうしようか迷って。

…差し出されたその手を、そっと掴んだ。












「ぎゃぁああああ!?」

「ぎぇえええええ!?」

ディオン様と私は二人で力を合わせて、私たちを虐げた人を全て呪った。

ディオン様もまた闇魔法の使い手だから、二人で力を合わせれば簡単だった。

父も母も姉も呪った。

王も王妃も第二王子も呪った。

姉や第二王子も光魔法の使い手だが、私とディオン様の呪いの前には手も足も出ない。

だからこそ、闇魔法使いは疎まれるのだから。

「さて、命は奪わないまでも再起不能にしましたし…これからどうします?」

「もちろん余が即位を宣言する!他の貴族どもには裏で交渉してすでに味方に引き込んでいるからな」

「そうですか」

「それよりもカロル。お前は偉いなぁ、余のためによくぞ働いてくれた。余は自慢の腹心の部下を持つことが出来て、幸せだぞ」

「え、えへへ。ほ、褒められた…」

「これからも働けば働くだけ、褒めてやるからなぁ」

「えへへへへへ…」

その後ディオン様は本当に即位して、王様になった。

ディオン様は本当に貴族への根回しが完璧だったらしく、みんなから即位を祝福された。

「国王陛下、おめでとうございまーす!」

「国王陛下、即位おめでとうございますー!」

「うむうむ、皆の者ご苦労。これからは余が国を良い方向に導く故、安心するがよい!」

「国王陛下万歳ー!」

「国王陛下万歳ー!」

私はなんと、そんなディオン様から戴冠式でプロポーズを受けてその日のうちに王妃となってしまった。

「カロルもご苦労だったな」

「いえ、陛下のためですから」

「そんなお前だからこそ、余の妻に相応しい」

「え?」

「我が妃となれ!」

「!?」

「王妃殿下おめでとうございますー!」

「王妃殿下万歳ー!」

私とディオン様が国民たちに受け入れられたのちに、王妃となった私を虐げてきた父、母、姉はボロボロの体でなんとか生きているものの牢で牢番たちから虐げられている。

「助けて…だれか助けて…」

「やはり生まれた時に殺しておくべきだった…」

「どうして私たちがこんな目に…」

「無駄口を叩くな!」

ドゴッ!

「ぎゃっ!?」

国王となったディオン様を虐げてきた元国王、元王妃、元第二王子はその地位も失って、ボロボロの体で、なんとか生きているものの我が国と因縁のあった国に引き渡された。

因縁のあった国に引き渡された彼らは、それはそれはひどい扱いを受けているそうだ。

グサッ、ザシュッ、ボトッ。

「ぎゃぁああ!?」

「ひぎぃいいい!?」

「あぁぁぁぁぁ…」

きっと今頃だいぶグロいことになっていることだろう。

そしてその国と我が国は、ディオン様の外交手腕により和解。

「前国王が迷惑をかけてすまなかった…これからはもう侵略など起こさないと誓おう」

「侵略戦争を起こしたことは許さないが、賠償金と謝罪はしっかり受け取った。これからはお互いに、平和な世界のために協力していこう」

ディオン様は長らく続いた戦争を終わらせた賢王と讃えられることになった。

私は私で、賢王を即位させるのに貢献した賢妃と褒められることとなった。

「カロル、賢王を讃える賢妃として有名だぞぉ?本当によくやったなぁ!さすが我が妃、自慢の妻だー!」

「ディオン様…えへへ、ディオン様のおかげです」

「カロルが褒められるのは、余に尽くすカロルの姿を見て国民たちが感動したからよ!謙虚なカロルもまた可愛いがな!」

「えへへ…」

ディオン様は因縁のある国だけでなく、ほかに元国王が侵略しようとしていた国とも和解を申し出て、我が国に、世界に、平和をもたらした。

ディオン様の統治後は、侵略戦争をやめても豊かになることはできると国民たちも知り、もう戦争などしなくていいのだと穏やかな空気が広がった。

ディオン様の手腕で、農業も漁業も工業も少しずつ発展して戦争をしなくてもみんなが生きていけるようになった。

そして、そんな平和になった国でディオン様と私は子宝にも恵まれることとなり…幸せな家庭というものを知ることになった。

「お父様、お母様、今日もお勉強頑張ったよー!」

「さすが我が息子だ。余は鼻が高い」

「偉い偉い」

「えへへー」

「私も勉強頑張ったよー!」

「さすがは我が娘、余の自慢だ!」

「よく頑張りました!」

「えへへー」

肉親を葬っておいて、幸せになるのは都合が良すぎるだろうか。

そうは思っても、それでも私は今、とても幸せだ。
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