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おかしい…なにかがおかしい…

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なにかがおかしい。リナと婚約をして、とても幸せだった。周りにも祝福して欲しくて、友人たちに手紙を出した。

返信がいつまで待っても来ない。

知り合いにも、リナとの結婚を自慢したかった。たまたま会った知り合いに話しかけに行ったが、やんわりと会話を拒否された。

今までこんなことはなかったのに。

僕は仮にも公爵家の息子だ、いずれは公爵家を継ぐ者だ。今まで周りに好かれていた。尊敬されていた。頼られていた。なのに何故、こんな扱いを受ける。

「おかしい…何故…」

こんなはずがない。こんなはずがない。こんなはずがない。おかしい。今までの人生で一番の絶頂にいたはずなのに。リナとの婚約で、幸せになれたはずなのに。何故、何故、何故人が離れていくのか。僕は何を間違えた?

「…まさか。国教に反する行い、それを理由とした王命での婚約破棄。それが理由なのか?そんな、そんなくだらないことで僕から離れていくのか…!?」

僕はただリナを愛していただけなのに!?人を愛することが罪だと言うのか!?何故!?

ありえないありえないありえない…それは責められることじゃないだろう。責めるならアンナだ。アンナを責めるべきだ。

茶髪に茶色の瞳。ありふれた容姿。リナより美しくないアンナが悪いんだ!僕は悪くない!僕に愛されなかったアンナが悪いんだ!

…。

…。

「…本当に?」

…。

…。

…。

…。

…。

「…僕は」

アンナは、冷遇されていた第三王子殿下のお世話係に自ら立候補した。

アンナが第三王子殿下のお世話係になってから、第三王子殿下は健康を手に入れ今では立場も良くなった。

…アンナが、第三王子殿下を支えたんじゃないのか。僕は、なにかとんでもない間違いをしたんじゃないのか。

そんな奇跡を起こすほどの愛の深い女性を、僕は愛さなかった。…見た目が好みじゃないと、婚約者だというのに見てもいなかった。

病弱で、見た目のいい…僕に懐くリナへの感情ばかりに突き動かされた。…それは、愛だろうか。ただの劣情ではないと言えるだろうか。

「…僕が、悪いのか?」

ああ、両親が言っていたのは。

アンナさんほど良い女性はいない、大事にしなさいと口酸っぱく言っていたのは。

僕よりよっぽど、彼女を見ていたからこその言葉だったのか。

「…どう、しよう」

もう、やり直せない。

どうすれば、立て直せる?

…わからない。

「…リナ、リナ」

僕はリナとの婚約を喜んでいたけれど。

リナと結婚して、何になるんだろう。

なにもかも失っただけだ。

得られるのは、美しいだけの女。

…ああ、僕は。

「なんて、愚かなんだ」

けれど、まだ。

お金はそのうち入るだろう。少しずつ貯金すればいいだろう。

人付き合いだって、少しずつ信頼を回復すればまだ。

大丈夫、まだ大丈夫。

僕は震える手を誤魔化すようにワインを流し込んだ。
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