上 下
38 / 97

第三王子殿下にメロメロ

しおりを挟む
この半年で、私はすっかりと第三王子殿下にメロメロになっていた。気付けば婚約者のことなどもう悩まなくなっていた。

「アンナ!早く早く!」

「はい、第三王子殿下!」

体力と免疫力と筋力がついてきた第三王子は、走り回ることも出来るようになった。庭に出て走って薔薇園の方に向かう第三王子殿下。走るとかなり足が速い。追いかけるのもなかなか大変だ。

「アンナ、見て見て!蝶々だよ!」

第三王子殿下はそう言って、やっと追いついた私に見て欲しいと薔薇園を指差した。

「おー、綺麗な光景ですね」

「可愛いね!」

にこにこの第三王子殿下に、すっかりと元気になったなぁと安心した。

ちなみに、夜に起こる咳の頻度は大分減った。悲しいことに咳はまだ出てしまう時はあるけど、それでも随分と楽になったと聞いている。

「ねえ、アンナ」

「はい、第三王子殿下」

「今日は、あそこのベンチで膝枕して欲しいな」

薔薇園の近くのベンチを指差す第三王子殿下。

「膝枕ですか?構いませんよ」

そう言ってベンチに座り、第三王子殿下に膝を貸す。

「ああ、アンナの膝枕は安心するね」

「それは良かったです!」

第三王子殿下がリラックス出来るように、頭を撫でる。

「第三王子殿下、今日はこのまま少しお昼寝しちゃいますか?」

「いいの!?うん、そうする!」

嬉しそうな第三王子殿下。頭を撫でつつ、子守唄を歌う。

そうすると、うとうととし始める第三王子殿下。頭を撫でたまま、子守唄を歌っているまま、第三王子殿下の手持ち無沙汰な様子の手をそっと握る。

「アンナ…」

「はい、第三王子殿下」

「おやすみ…」

「はい、おやすみなさい」

「…大好き」

可愛いことを言って寝始める第三王子殿下に内心ノックアウトされつつ、その眠りを妨げないように気をつける。

「第三王子殿下、よく頑張りましたね」

この半年、第三王子殿下は本当によく頑張った。苦手なものもたくさん食べて好き嫌いを克服したし、体力と免疫力と筋力も付けた。

お勉強も、私の拙い教え方でもしっかりと覚えてくださる。今では読み書きは完璧で、書く字も年相応の上手さ。計算も足し算引き算は覚えてくれた。でも、そんな第三王子殿下だからこそ教育係がいないのはもったいないと思う。

「…いつか、第三王子殿下を冷遇する今の流れが変わるといいな」

第三王子殿下は、ちゃんと教育を受けたらすごく優秀になるはず。だからこそ、国王陛下にはきちんと第三王子殿下と向き合って欲しい。そして、冷遇するのをやめてたくさんのものを第三王子殿下に与えてあげてほしい。

「第三王子殿下、私は味方ですからね」

第三王子殿下にこれからたくさんの幸せが訪れるように、お世話係の私が頑張るんだ。

ぎゅっと手を握る。第三王子殿下は、幸せそうに笑って寝ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛をしらない番を愛したい竜〜竜は番を自分色に染めたい〜

kimagure ya
恋愛
神獣 竜のアッシュと 番であるリリーラとの恋物語です 初投稿です 誤字脱字多めです 優しくスルーしてください 長編になる予定です。 発投稿です

次期宰相様はご執心です

綾織 茅
ファンタジー
高校二年の時、突然異世界へ飛ばされ、あれよあれよという間に宰相の息子達の教育係兼お世話係となった少女、桐生美夜。次期宰相達がすくすくと成長し、明日は成人を迎える日。 その日が絶好の帰還日和だったこともあり、美夜はお世話になった人達に挨拶をし、元の世界へと帰ってきた。元の世界では時間は美夜が飛ばされてから一日しか経っておらず、美夜の外見もその時の年齢相応に戻っていた。 美夜は無事大学入試に合格し、順風満帆なキャンパスライフを過ごすはずだったのだ。 ……世話をしていた異世界の王太子からの、常軌を逸した数のヘルプ要請の手紙を見るまでは。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

私の婚約者に、私のハイスペックな後輩が絡みまくるお話

下菊みこと
恋愛
自分のことは棚にあげる婚約者vs先輩が大好きすぎる後輩。 婚約者から先輩をもぎ取る略奪愛。 御都合主義のハッピーエンド。 ざまぁは特になし。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界転移したら、女の子にとって天国みたいな世界だったんですが…どうしましょう?

下菊みこと
恋愛
異世界転移してしまい、女性が少ないため女性ばかりを優遇する世界に降り立ってしまった梨花。 なんだかんだで生活に困ることはなく、自分を慕ってくれる男子に囲まれた生活を送ることになる。 そこで因縁のある女の子と再会してしまい…? 小説家になろう様でも投稿しています。 ちなみに超御都合主義のお話です。

あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。 ※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。  元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。  破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。  だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。  初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――? 「私は彼女の代わりなの――? それとも――」  昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。 ※全13話(1話を2〜4分割して投稿)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

ようこそ、緋色の小鳥亭へ!~転生令嬢は美味しいご飯が食べたい~

望月雪乃
恋愛
マイア・シモンズは幼い時に高熱に魘される中、前世の記憶を取り戻した。 前世では彼女は定食屋の娘として生きていて、ある日交通事故に遭い若くして亡くなっていたのだ。 「せっかく生まれ変わったんだから、一生懸命この世界を生きよう」 家族との不仲を感じつつ孤独ながらも何とか生きるが、どうしても一つだけ彼女には我慢できないことがあった。 「ご飯が、おいしくない!」 前世でおいしい食事ばかり食べて舌が肥えていたマイアにとって今の食事は地獄だった。 ある日王子との婚約が決まり、マイアは懸命に王家に嫁ぐ為に勉強に励む。 それなのに婚約中の王子様が私の妹と恋に落ちて、婚約破棄を言い渡されてしまう! 両親も最愛の妹の結婚に大喜び。 そして我慢の限界を感じたマイアは思ったのだった。 「家を出よう」と。 彷徨った森の中で出会った二人の男性に助けられて、働くことになった『緋色の小鳥亭』 マイアはそこで様々な出会いをする。 これからはおいしいご飯を食べるために生きていこう! そんな異世界転生グルメ恋愛小説です! ※この作品は小説家になろうにも掲載しております。 ※R15は念のためでございます。

処理中です...