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第三王子殿下と今日もお散歩

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「じゃあ、今日もお散歩に行きましょうか」

「あ、うん。あのね、アンナ」

「はい」

「疲れるまででいいから、自分の足で歩きたいな」

第三王子殿下の言葉にハッとする。たしかにずっとお姫様抱っこでは、第三王子殿下のプライドに関わるかもしれない!実はずっと不満だったのだろうか?

あわあわする私を見て、第三王子殿下は笑った。

「昨日までのお散歩に不満はないよ。むしろ、お外に出られただけで楽しかった!ただその…体力を、少しでもつけたくって」

「第三王子殿下…!」

なんて努力家なんだろう!偉い!

「では、転ぶと危ないので手を繋いでいきましょう!」

「うん!」

こうして私は、第三王子殿下と手を繋いでお散歩をしにお庭に出た。

部屋を出て庭に行くまで結構な距離があるが、それまでにすれ違ったメイドの何人かは「お散歩ですか?」「お気をつけて」「いってらっしゃいませ」と第三王子殿下にお声掛けしていた。

その度に第三王子殿下の表情がぱっと明るくなっていたので、メイドたちには感謝だ。

「今日は薔薇の咲いていたところのさらに向こうまで行ってみましょうか」

「うん!」

色とりどりのお花を鑑賞しながらゆっくりと歩いて、日の光を浴びて散歩をする。

第三王子殿下は上手く歩けている。それでも時々動きが危なっかしいが、手を繋いでいるので問題はない。

ただ、やっぱり体力はそこまで持たず薔薇の咲いていたところの先まで来たら息が上がってしまったのでお姫様抱っこをする。

「第三王子殿下、失礼致します」

「うん、ありがとう」

その後は綺麗に咲いていた白百合を二人で鑑賞しながら、のんびりと日光浴をする。

すると後ろから声をかけられた。

「やあ」

「だ、第一王子殿下!」

「ラジエルお兄様」

「ふふ、サミュエル。良い朝だね」

「うん。あのね、ラジエルお兄様。僕、今日自分で歩いてみたんだ」

第一王子殿下はその言葉に優しく微笑む。

「そうか。疲れただろう」

「うん、でも心地よい疲れだよ」

「それは良かった。でも、いきなりあれもこれもと運動しては負担がかかるから、少しずつね」

「うん!」

仲の良い二人の様子を見ていると、昨日が初対面とは思えない。

「…アンナと言ったかな?」

「は、はい!」

「君との出会いは、サミュエルにとってとても良いもののようだね。ありがとう、心から感謝しているよ」

「こ、光栄です!」

「ごめんね、サミュエル。あまり長居できないから、本当ならもう少しお話したいんだが…また今度、機会があれば」

第一王子殿下は、第三王子殿下の頭を撫でるとその場を離れようとした。

「待って、ラジエルお兄様!」

「うん?」

振り返った第一王子殿下に、第三王子殿下はとびっきりの笑顔を向けて手を振った。

「いってらっしゃい!」

「…いってきます!」

第一王子殿下もとても良い笑顔で手を振り返して、今度こそ帰っていった。

どうやら、先程のメイドの声掛けが第三王子殿下に良い影響を与えたらしい。

「ふふ、第三王子殿下」

「なに?」

「素敵でした!」

「えへへ」

そしてお部屋に戻る。メイドたちの何人かはやはり、「おかえりなさいませ」「楽しかったですか?」「お散歩お疲れ様でした」と第三王子殿下にお声掛けしてくれた。

第三王子殿下の嬉しそうな表情に、私もさらに嬉しくなった。
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