私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について

自分の無力さがむかつく。けど、絶対ユリアだけは諦めない

ある日。ユリアの家でのお茶会の席で、ユリアに謝った。

「ユリア！ごめん！」

「どうしたの、ノア」

「実は僕…リリー王女殿下から気に入られて、非公式にではあるんだけど求婚されているんだ」

「え…？」

ユリアに心配はかけたくないけど、正直に話した方がいいと思うから、言う。

「ノア…」

ユリアは困惑してるみたい。ごめんね。

「ノア…私…」

「でも、安心して、ユリア！僕はちゃんと断り続けるよ！ユリア以外のお嫁さんなんて要らないんだ！」

だから、ユリアは安心してね！

「ノア…私、私ね。私、もういいの」

「…え？」

「ノアから、たくさんのものを貰ったわ。貴方は、私を愛してくれた。もう、充分」

「ユリア…？なに、言ってるの…？」

嫌な予感がする。聞きたくない。

「婚約破棄しましょう」

僕は思わず立ち上がる。

「なんで！ユリア、どうして？僕…僕、なんかした！？ねえ、言ってよ！僕、僕、ユリアの為ならなんでもできるよ！なんだって！悪いところがあったなら直すから！だから…そんな、こと…言わないでよ…」

「…ごめんなさい。さようなら」

「ユリア！待って！」

ユリアが部屋に戻って鍵をかける。なんで！どうして！

「ねえ！開けて！ユリア！ユリア！」

こうして僕は、一度失恋した。でも、ユリアだけは諦めない。その後もリリー王女殿下から毎日のように迫られていたけれども、断り続けた。もちろん、婚約破棄宣言についてはユリアのお父様以外誰にも言わなかった。ユリアのお父様にも婚約破棄なんて認めないと言っておいた。ここ数日で、僕は大分窶れてしまった。これも全部あのわがまま姫のせいだ。

そして今日も、僕は登城した。リリー王女殿下が言う。

「ノア、私、キスしてくれれば貴方を諦めるわ！ユリアナさんとの婚約や結婚も祝福する！だから、私にキスをして！」

「そうですか。わかりました」

そして、僕はそっとリリー王女殿下に近づいて、そっと耳打ち。

「お断りいたします」

「…！？なんで！？キスしてくれるなら貴方を諦めるのよ！？」

「白々しい。そんな嘘に僕は騙されませんよ。大体、もし本気だとしてもユリアナ以外の誰かにキスするとか地獄でしかない」

「なっ…、なによ！」

ばちんっ！と、音を立てて僕はリリー王女殿下に顔を叩かれる。

「私に…この私にここまでさせておいて！」

「そんなのそちらの勝手でしょう。僕のことは大人しく諦めてください」

「…っ！」

「そこまでだ」

物陰から王太子殿下が現れる。その隣には…ユリア！？

「ユリア！会いたかった！」

「ノア…っ！」

久しぶりに会えた僕達は抱きしめ合う。

「賭けはユリアナ嬢の勝ちだ。リリー、諦めなさい」

「うぅ…」

「賭け？」

「ああ。ノアがユリアナ嬢を諦めないからな。妹が痺れを切らして、ユリアナ嬢と賭けをしたんだ」

「一体どんな？」

ユリアを抱きしめたままで聞く。

「ノアがリリーにキスをするかしないか。ノアは、やっぱり断ったな。ユリアナ嬢。これでもう安心だぞ」

そんな賭けをしてたんだ…。

「ノア…」

「ユリア！これでもう安心だよね！僕と婚約続けてくれるよね！？」

「…っ！うん！勝手なこと言ってごめんね、ノア…！」

「ユリアが戻ってきてくれたなら、それで充分だよ！」

「ノア…っ！」

ユリアの目からは大粒の涙。綺麗だな…。

「…綺麗だ」

王太子殿下、今何か言った？

王太子殿下に睨みをきかせると、王太子殿下はそっと目をそらす。…全く、ユリアは色んな人を魅了するから困っちゃうな。

ふとリリー王女殿下の方を見ると、なぜか青ざめている。

「あの…ユリアナさん。私が悪かったわ、ごめんなさい」

「え？い、いえ、そんな…」

「だからお兄様まで盗らないで…！」

「え？」

ああ、なるほど、そういうこと。

「リリー！」

「だって、お兄様！」

「それじゃあ、僕達はこれで失礼します。いいですよね？」

「はい…」

「妹がすまなかったな」

こうして僕は、ユリアを連れて王城を後にした。