私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について

わがまま王女殿下のせいで僕の婚約者との時間が取られてむかつく

放課後になった。ユリアを教室まで迎えに行く。

「ユリア！迎えに来たよ！一緒に帰ろう！」

ユリアがこっちに向かおうとした時、ハリーがユリアの手を掴んで一緒にこっちに来る。なにを話しているのか知らないけど、ハリーが期待に満ちた目でユリアを見つめている。なんだ？

「…？なんでハリーも一緒にいるの？」

「ノア、今日はハリー様と一緒に帰るわ」

「え！？なんで！？せっかくのユリアとの二人っきりの時間が…！」

「ふふ。ユーナと放課後デートを楽しもうと思ってね」

「ちょっと！婚約者である僕を無視して何勝手な約束してるの！大体僕だってユリアと放課後デートしたい！」

「すまないが今日は譲ってくれないか？フェアにいくんだろう？」

「もー！あんなこと言うんじゃなかった！」

僕は荒れに荒れる。わがまま王女殿下に呼び出されてさえいなければ断るのに！

「ノア、今日だけなのだし特別に許してくれてもいいじゃない。ね？」

「……………………ユリアがそういうなら。でも、明日は僕と放課後デートしてね？」

「もちろんよ」

「わーい！ユリアありがとう！」

感激してユリアに抱きつく。

「…見せつけてくれるね。さ、ユーナ。僕と放課後デートに行こう」

「はい、ハリー。でも放課後デートってなんですか？」

「ふふ。平民の間では放課後に友達や恋人と一緒に家に帰りつつ、寄り道をするのが流行っているんだよ」

「まあ！お友達と寄り道…！」

ほぼ恋人同士ばかりだろうに。しかし、わがまま王女殿下に今日こそお断りを突きつけるためにも早めに登城した方がいい。ここはハリーに任せるしかない。

「じゃあユリア、ハリーがいれば大丈夫だと思うけど気をつけてね」

「わかってるわ。ノアったら心配性なんだから」

「ふふ。僕が大切にエスコートさせてもらうから大丈夫だよ」

「それはそれでむかつく」

「もう、ノアったら！」

「じゃあ早速行こうか、お姫様？」

ハリーはそういうとユリアに手を差し伸べる。これはこれでむかつくんだよな。とにかく早くわがまま王女殿下の下へ行こう。

ー…

「ノア・オルティス、ただいま登城しました」

「ノア！来てくれたのね！」

リリー王女殿下が嬉しそうに駆け寄ってくるがさらりとかわす。

「うふふ。そんな一途な所も素敵よ！」

「一途だとわかっているなら諦めてください」

思ったよりも低い声が出た。正直王族に対する態度ではないが…。

「そうだぞリリー。ノアはユリアナ嬢にぞっこんなんだ、諦めて他を当たりなさい」

ジャック王太子殿下が援護してくださった。

「だから、そこがいいんじゃない」

「お兄ちゃんはお前の基準がわからないよ…」

「あら、今に始まったことじゃないでしょう？」

「リリー」

やっぱり今日もわがまま王女殿下は聞く耳を持たない。

「王女殿下。お願いですから本当にもうやめてください」

「…あら、酷い。せっかくこの私が直々に口説いているのに」

王女殿下はそういうと、僕の耳に口を寄せて小さな声で言う。

「今なら色々サービスするわよ」

冗談。

「絶対嫌です」

「愛人を囲ってもいいのよ」

「愛する婚約者を愛人にする馬鹿がどこにいます」

「…手強いなぁ」

「そもそも可能性がありません」

「あら、意地悪ね」

「なんとでも。とにかくこれ以上僕を振り回さないでください」

「嫌よ」

結局今日も説得出来なかった。困った。かなり困った。立場が逆なら即地獄に叩き込んでやるのに…！もう！