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わがまま王女殿下がむかつく

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やってしまった。

心の中でそう思った。どうも先のアリアとルークの事件の時、ユリアを守るようにアリアとルークの前に立って二人を断罪したのがあのわがまま王女殿下のセンサーに引っかかってしまったらしい。気に入られてしまった。

いつも頼りになるジャック・フィンリー・アレクサンダー・ウインザー王太子殿下の妹姫、リリー・イザベラ・ソフィー・ウインザー王女殿下はわがまま姫で有名だ。気に入ったものは常に側におかないと気が済まないお方で、なにかと気難しい。

そんな彼女に気に入られて、僕は今非公式ではあるが求婚されている。

マ ジ で や め て !

僕にはユリアという大切な女性がいるんですと固辞しても全く聞く耳を持たない。兄である王太子殿下や母である王妃陛下が止めても全く気にも留めない。なんなんだこのわがまま姫は!挙げ句の果てには国王陛下までノアにならリリーを任せてもいいなんてほざいて…げふんげふん。おっしゃっているらしい。

ふ ざ け ん な !

大体現婚約者より地位の高い女性から求婚されたからって鞍替えするような男嫌だろう普通に考えて!やめて!本当にやめて!

ということでここ数日僕は屋敷と城を行ったり来たりしている。噂になるのも時間の問題だ。なんとかしてユリアが傷つかないようにしないと。

そんなことを考えていた日の昼休みの時間。ユリアを迎えに行った時のことだった。

「ユリアー!迎えに来たよー!お昼に行こう!」

ユリアがハリーと一緒にこっちに来た。外野のご令嬢達から黄色い声が聞こえる。なんなの。

「ノア、久しぶり」

ハリーが僕に話しかけてくる。

「ん。ハリー、久しぶり。なんでユリアと一緒にいるの?」

「僕たち友達になったんだ。今日から昼食をご一緒していいかい?」

ハリーの言葉に僕は一瞬固まる。嘘だろう、まさか!いやでも一応は女の子同士なんだしないよね?ないよね?

「…ユリアと友達に?あのご令嬢にはみんな平等に接する君が?」

「ふふ。おかげさまで休み時間はユーナを独り占め出来ているよ」

うそ、まさか本当にそうなの?ユリアに惚れたの?なんなの?なんでそんな急に?僕は自分でも訝しげな表情をしていると思いつつ、ハリーに言葉を返した。

「もしかして何か企んでない?」

「まさか」

「本当に?」

「本当に」

「僕とユリアの邪魔しない?」

「それはどうだろうね?」

「…まさかユリアに惚れたとか言わないよね?」

「ノーコメントで」

ああもう、これ本気でユリアのこと好きじゃない!

「あとなんでユーナ呼び?」

「ノアもルークもユーナを愛称で呼んでいたから僕もと思って」

「…ユリア、本当に大丈夫?ハリーの友達とか大変じゃない?」

「失礼だな君は。それで言えば君の婚約者だって大変だろうに」

「私はノアとハリーと仲良く出来て嬉しいわ」

ユリアの言葉に思わず顔を顰める。

「…ユリア、ハリーと仲良くするのはやめておかない?」

「ノア、そんなこと言わないで」

「…ユリアがそういうなら」

僕はハリーに手を差し伸べる。その手をハリーが掴む。

「お互いフェアにいこう」

「ノーコメントって言ったのに」

「いや流石にわかるよ。他のご令嬢を見る目と全然違うもん」

獲物を見つけた猛禽類みたいなぎらぎらした目をしてるよ、君。

「ていうか婚約者な時点で君優位じゃないの?」

「ユリアにとったら友達だって十分大事な存在だよ」

「そっか、じゃあ僕にもチャンスがあるかな」

「…?二人とも何の話をしているの?」

「なんでもないよ、ユーナ」

「気にしないで、ユリア」

それでなくてもあのわがまま姫に振り回されているのにユリアを他の人に取られるとか冗談じゃない。

「じゃあアベルのところに行こうか」

「あー、アベル君。もう中庭にいるの?」

「多分行ってる」

「じゃあ中庭に行こうか」

「あ、ちょっと!ユリアをエスコートするのは僕!」

「じゃあ明日は僕にエスコートさせてね。フェアにいくんだろう?」

「む」

ハリーは僕と真っ直ぐに勝負をするらしい。負けてあげないからな!
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